ブックレビューの最近のブログ記事

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
橘 玲

幻冬舎 2010-09-28
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一生懸命努力すれば自分の能力は向上できるか?→ 残念ながら無理。
コミュニケーションをうまくやるために、自分を変えられるか? → 自分は変えられない。

勝間和代氏やデール・カーネギー氏が書いているような、世の中にある多くの自己啓発本に対して反証を示した一冊。

ゲーム理論から導かれた、合理的に勝つために必要となる「しっぺ返し戦略」や、なにかしてもらったらお返しをしなくてはいけないと考える、とても強力な「お返しのちから」。
そんな、人間が本来もちえる心理を示しながら、残念ながら人間とは、そんなに器用で優れた生き物ではないのだよ、ということ読者に突きつけてくれる一冊。

そんな不器用な私たちが、この残酷な世界で幸せに生きていくには、現在の評判社会を受け入れ、そこに幸せを見出し、「恐竜の頭の中に尻尾を見出す」しかないと。つまり、ロングテールの中から、フラクタルのように存在する、より小規模なショートヘッドをいかにして発見するか。
今のグローバルな市場は、地球の生態系に匹敵するほど複雑なのだから、そこにそれぞれのニッチを見出すべきだと。

途中、中だるみはあったものの、人間の行動と思考についての分析は十分に深くて納得させられるもの。世の中はきれいごとだけで動いているわけではなく、頑張っても越えられないものはある。下手な自己啓発本よりは、よっぽど真実をとらえているなぁと思わせる良書でした。

私にとってのショートヘッドはなんだろうかと考えるよいきっかけになりました。

サムスン式 仕事の流儀サムスン式 仕事の流儀
ムン・ヒョンジン 吉原育子

サンマーク出版 2012-01-09
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ぐんぐん業績を伸ばしている韓国の代表企業サムソンの仕事術についてのレポート。そこにはどんな秘密があるのかと、手にしてみたが・・・。

情報をどうまとめるか、上司とどのように付き合うか、ネットワークlの築き方、視点の高め方、部下とのコミュニケーション、そして昇進のポイント。
サムソンでの実際の業務エピソードを、汎用的な仕事術へとブレークダウンして伝えてようとしているが、うーん、目新しいものは見つけられなかった。

レポートは簡潔に書くこと、出張報告書は帰りの飛行機で書くこと、机は整理整頓、スタッフを大切にすること、手土産の選び方・・・。

読者のターゲットが若手社員向けだからか、それとも、そもそも従来の日本企業のビジネスノウハウをただなぞっているだけだからか・・・。

厳しいサムスン組織環境の中で、トップダウンの意思決定が浸透し、現場では互いに高めあう風土・流儀が築かれているということはよくわかりますが、どれも想定範囲のものばかりで、自分にプラスになりそうな仕事術は学べませんでした、残念。

地球について、まだわかっていないこと (BERET SCIENCE)地球について、まだわかっていないこと (BERET SCIENCE)
山賀 進

ベレ出版 2011-11-21
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昨年の震災をはじめとして、地球上では、私たち人類の手には追えないような規模の事象がたくさん起きている。そして、そのスケールの大きな事象の絶妙なバランスで私たちは生かされている。

いろんな研究は進んでいるけれども、まだまだ地球についてわかっていないことが多い。世の中にはわかっていることを整理している本は多いけれど、わかっていないことを明文化するというアプローチも面白い。

何より、私たちが学生のころ(15年前?)に学んだ内容から比べると、多くのアップデートがあることにきちんと驚きながら、自分の中に根付く科学の常識をしっかりと更新していくことも、とても重要。

地球と月の関係、そもそも月はどうやってできたのか。生命の誕生と進化、生命の大量絶滅はなぜ起こったのか。海水はどこから生まれてきたのか。地球内部はどうなっているのか。プレートテクトニクス、プレートはどのように動いていくのか。温暖化の真実は。エネルギー源として適切なものは何か、石油はいつまで利用可能なのか・・・・。

などなど、ややスケールの大きな話を眺めて、ふむふむ、と言ってみる時間もなかなか心地よいものです。

なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門
岡田 斗司夫 福井 健策

阪急コミュニケーションズ 2011-12-01
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岡田斗志夫と弁護士の福井氏による対談。
対談ベースなので、全体としてメッセージがまとまっているわけではないですが、岡田氏のぶっとんだ発想と、冷静に議論を整理する福井氏のやり取りの中で、いくつか次世代のヒントになりそうなキーワードが見つかった気がします。

電子書籍の自炊による著作権の議論に始まり、これからのクリエイターという職業の在り方、著作権は味方なの敵なのかという議論、そして最後は著作物保護をしくみとして組み込んだ大規模なプラットフォームによるコンテンツの管理方法のしかけアイデアなど。

電子書籍の自炊にみられるデジタルコンテンツ複製の私的利用の範囲など、たしかに現行の著作権の解釈はあいまいなものが多い。日本という立場でみると、実はコンテンツは輸出よりも輸入の方が多いので、著作権でガチガチに縛らない方が、国益にはつながるのかもしれない。さらに、「フリー」にも書かれていたように、生産コストを無視できるデジタルコンテンツは遅かれ早かれ、価格はフリーに近づいていくわけで。

岡田氏によれば、クリエイター自身が流通をコントロールすることは難しくなってきているし、作品そのものから収益を得るマネタイズは難しくなってきているけれども、世界の1000人程度の価値のあるコンテンツクリエイターを救う方法はあるかもしれない。

二人の会話はその方向へと進んでいきます・・・。

直接的ではないにせよ、私もコンテンツを扱う仕事をしているともいえなくはありません。コンテンツをどう見せるかということにばかり、アタマが向かいがちですが、視点を変えて、コンテンツの在り方についても考えさせられるよい機会となりました。

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
楠木 建

東洋経済新報社 2010-04-23
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目標をきちんと立てていると、あたかも戦略を立てているような気になってくるということがよくあります。つまり、「目標を設定する」という仕事が「戦略を立てる」という仕事とすり替わってしまいがちなのです。

戦略という言葉は聞こえがいいだけに、いろんなところで耳にします。全社戦略、ソフトウェア戦略、営業戦略、プラットフォーム戦略・・・。
この本を読んでしまうと、それらの多くは、ただ目標や、組織的な手立て、分析結果を並べただけにすぎず、本質的な戦略に至っていないのではないかと思わされてしまいます。

著者によると、戦略とは「違いを作ってつなげる」こと。

こうすべき、という打ち手を並べたアクションリストではなく、コンサル会社やビジネス書が提供してくれるような既成のテンプレートでもなく、ベストプラクティスでも法則でもない。それが戦略。

一枚のチャートや静止画で示されるものではなく、それらがつながって、ひとつの動画としてのストーリーを構成していること。そして、そのストーリーが何よりも面白いこと、それが戦略ではないかと。

本書では、競争戦略の基本論理として、SP(ポジショニング)とOC(組織能力)などの基本的な要素を踏まえながら、多くの殿堂入りの戦略論(スタバ、ガリバー、サウスウエストなど)の実例をもとにストーリーとしての戦略論の理解を深めることができます。

さまざまなメディアでも良書として紹介されていますが、いい本に出会ったという気がします。業務で本書に触れる機会があったので、積んであった未読本から繰り上げて読んだのですが大正解。
商品設計にかかわる身としては、耳に痛い話ばかりなのですが、すっと腹に落ちる感じがして、納得感も大きい。
ボリュームも多いし濃いので、ちょっとした引用程度では、本質を表現できないと思うのですが、地方都市のコギャルのたとえが印象的だったので、紹介しておきます。

ちょっと前に、コギャルという文化が流行った時期がありました。
雑誌やメディアを通じて、「渋谷のコギャル」という完成された作品をみた地方都市のコギャルたち。不思議なことに、地方都市のコギャルの方が、渋谷のコギャルに比べて、明らかに「やりすぎ」で、メイクも制服もバランスがぐちゃぐちゃ。黒すぎる肌に、白すぎるアイシャドー、異常なまでに長いまつげ(マスカラ)、短すぎるスカートに、ルーズすぎるソックス。
一つ一つの要素は、渋谷のそれと大差はないのですが、全体を作品としてみるとそれはもうひどいものになってしまったようです・・・。

業界のトップ企業を追いかける企業が陥りがちな罠がまさにそれ。徹底的に表面的な要素をまねをして、まね要素を詰め込んだ結果、全体としてまったく機能しない幕の内弁当的なグレーな製品になってしまう。そんなことがよくあるのではないでしょうか。
簡単にまねできるものは戦略ではないですし、同様に簡単にまねされるものも戦略ではありません。まねをしようとしてもできないもの、ここでは、何年もかけて渋谷のセンター街の中で醸成されてきた、コーディネートや雰囲気、小物使い、そういった基礎的な部分が、他社のまねを難しくさせている秘訣のひとつです。この場合、むしろ、下手にまねすると余計に価値が下がってしまう。簡単にまねできそうだけど、実は難しい、商品設計においてもこんな打ち手を見つけることこそが求められている戦略なのだと思います。

仕事をしたつもり (星海社新書)仕事をしたつもり (星海社新書)
海老原 嗣生

講談社 2011-09-22
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こんなにクタクタなのに、成果はほんの少し。
そうです、あなたは典型的な「仕事をしたつもリ-マン」なのです。

という、センセーショナルな問いかけから始まる一冊。

同じ仕事に対して同じ成果を上げた二人。ひとりは残業で毎日遅くまで頑張っているように見え、もうひとりは毎日定時で帰宅する。

残業が良しとされる、旧態依然の日本企業では、どうしても前者が評価されがち。
もっとひどい場合には、仕事をしているフリをする人も現れるかもしれない。

無駄な資料を作らず、無駄な会議を開催せず、最小限最適なコミュニケーションでしっかり仕事を進めて、それで定時で帰る人こそが評価されるべき。

20年前に成功体験をしたトップマネジメントたち。10年前に成功体験を重ねた部課長たち。
その時代とは仕事の仕方そのものが大きく変わっている。
周囲の既成概念に従うことなく、自分のスタイルを貫くこと。それが、個々人の効率的な仕事のスタイルになり、組織を変えていくのだろう。

この本には、そんな多くのTipsが込められている。

まずは、無駄な資料作りはやめてみよう。そして、「考える」ことに時間を割り当てよう。

世阿弥「風姿花伝」
上手は下衆に受けず、下手は上客に飽きられる。本当の芸達者は、衆人愛嬌、つまり下衆を笑わせながら、上客に心を伝えるべきだ。

親の品格 (PHP新書)親の品格 (PHP新書)
坂東 眞理子

PHP研究所 2007-12-15
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女性の品格というベストセラーが話題になった坂東氏の続編。

「きっと何百万年物もの間、人間の命の絆は、こうした無我夢中の親たちによってつながれてきたに違いありません。」

冒頭にも書かれているように、子を持つ親はみんな、それぞれ苦労しながら、無我夢中にもがき、そして子供たちのかけがえのない成長に喜びを感じながら、自分自身もまた成長していく。

そして結びには次のようなメッセージが書かれています。

「子供は親の思うようには育ってくれません。子供は親を選んで生まれてくることはできません。そのなかで互いにベストを尽くしていくところから、品格のある親子の関係が生まれるのではないでしょうか。」

人格をもったひとりの人間として、これから半世紀ちかく、子どもと向き合っていくうえで、できるだけ正しい道を示してやりたい、心からそう思います。

いくつか気になったフレーズをメモ。
- 泣きわめいたときは、断固として毅然たる態度を示しましょう
- 叱るときは、よくない行為を叱るのであって、子を憎くて叱っているわけではないことを伝える
- 江戸の人たちは、気持ちよく過ごすマナーを共有財産として身に着けていた。これを江戸しぐさという。 江戸しぐさの精神は、自分のことだけではなく、周囲を見回す余裕を持つことであり、その気持ちを外へ表すということ
- 心からおもてなしをする、その行為に答えてくれる友人をたくさん持つことが親の無形の財産であることをわからせ、次の世代に引き継ぐ
- どんなに忙しくても、こどもとも約束は最優先する。できない約束はしない。
- 幸せで品格のある子供を育てるには、親自身が幸せな大人として、品格のある大人として手本になること

慧眼 <問題を解決する思考> (大前研一通信 特別保存版 Part.Ⅳ)慧眼 <問題を解決する思考> (大前研一通信 特別保存版 Part.Ⅳ)
大前研一 ビジネス・ブレークスルー出版事務局

日販アイ・ピー・エス 2010-11-12
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大前氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学でのケーススタディをまとめた書。
分量も少なく、すぐに読めるのだが、内容は濃い。
相変わらず、歯に衣を着せぬ強い意見と表現で、現在の企業、日本、世界の問題の本質を突く。

あなたが首相だったら、イギリスのキャメロン首相のbig society発言に対してどうするか?
イオンの葬儀ビジネスについて考察せよ。
あなたが、観光庁長官だったらどう日本を立て直すか?

テーマは幅広く、どの記事をとっても視野が広げるには役に立つものが多い。

ただ、問いを投げるだけでなく、大前氏自身の考えを一つの解としてしっかりと示すあたりも心地よい。その論理的な思考の展開は、大いに知の刺激になる。

800兆とも1000兆ともいわれる借金を背負った日本がいまどうするべきか、人の顔色をうかがいながら、議論を繰り返している場合ではない。 借金を次世代につけ送りしないためにも、ものごとの本質にしっかりと迫って、解を出さなければ。

ラーメン屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだらラーメン屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら
木村 康宏

幻冬舎 2011-08-25
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どこかで聞いたことのあるような、「野球部のマネージャー・・・」の2番煎じっぽいタイトルながらも、さくっとよめる、この手の本は好きです。

ラーメン業界という、日本を代表する産業。新旧の店舗が入り乱れ、なじみのある世界だけに、誰もがその経営についても、うんちくをたれたくなるのではないでしょうか。
個性を重視してニッチを狙うべきとか、立地とコストを重視してマスを狙うべきとか・・。

全般を通じて、妙に納得感のある仕上がりで、爽快感すら感じさせられるハウツー本です。
ディズニーや吉野家など、他のサービス業界の分析情報や、サービス業経営にまつわるさまざまなセオリーも紹介されていて、よくまとまった一冊。

八日目の蝉 (中公文庫)八日目の蝉 (中公文庫)
角田 光代

中央公論新社 2011-01-22
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逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか--理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。

血はつながっていないけれど母親として最大限の愛を注ぎ続ける女性と、犯罪者に育てられたという冷たい目で世間から見られ育った少女の話。

徹底的に女性視点で書かれています。
その中で、男は、子育てに対してどこか第三者的な立場で、そしてだらしないものとして描かれている。

でも、極端に偏重というわけでもなく、どこか理解できる気もする。
子供にとって親とは何なのか。子をもつ親として、子供に何をしてやるべきか。
犯罪サスペンスを通じて、深いテーマが垣間見える作品です。

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
万城目 学

文藝春秋 2011-04-08
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好みはわかれそうですが、個人的にはかなりハマリました。
大阪を舞台に、万城目氏らしい不思議ワールドが展開される、実に痛快な作品。

会計調査員と中学生、暴力団事務所と大坂府庁、謎の男たちと女装少年、いろんな場面を行ったりきたしながら、大坂に潜む壮大なフィクションが徐々に明らかになっていく。

著者の妄想に本気で付き合うほど、最後は心地よく本を閉じられる、そんな作品。


神様のカルテ (小学館文庫)神様のカルテ (小学館文庫)
夏川 草介

小学館 2011-06-07
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地方病院で医療にとりくむ内科医師の奮闘ぶりを描く物語。
終末期医療、死などの重いテーマを描いているにもかかわらず、読み終わったあとには、不思議な爽快感の残る暖かい一冊。

ストーリー自体はシンプルで厚みはないものの、その分主人公をはじめとする登場人物の描写がとても丁寧で、読んでいる側も、彼らの苦悩にどっぷりとはまって一緒に悩み、彼らの心の成長とともに一歩前に踏み出した気になる、そんな不思議さがある。

惑い苦悩した時にこそ、立ち止まらねばならぬ。
川をせき止め山を切り崩して猛進するだけが人生ではない。そこかしこに埋もれたる大切なものどもを、丁寧に丁寧に掘り起こしていくその積み重ねもまた人生なのだ。


ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階
ジェームズ・C・コリンズ(James C. Collins) 山岡 洋一

日経BP社 2010-07-22
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「今度はフォースの暗黒面を調べよう」と、企業研究のプロ集団が分析した、企業の衰退と没落についてのレポート。

企業が繁栄するのか、それとも衰退するのかは、複雑な要因に依存するため、絶対的な因果関係を定義することは不可能。ただ、多くのデータを分析した結果、かつて偉大だった大企業が衰退する場合には、いくつかのステップと傾向があることが見えてきたらしい。

ベストセラーになった同シリーズの大量の企業分析データがベースになっているので、分析が論理的であることが特徴的。

日本ではあまりなじみのない企業が中心なのが残念ですが、アメリカをはじめとする実在の有名な企業の社史をもとにケーススタディが構築されているため、とても説得力がある。

著者による、衰退の5段階は次の通り。
1.成功から生まれる傲慢
2.規律なき拡大路線
3.リスクと問題の否認
4.一発逆転策の追及
5.屈服と汎用な企業への転落か消滅

それぞれのステージで起きうる、誤っている(かもしれない)経営判断やありがちな企業風土・傾向についても、多く示されている。

-成功は当然だと思い、企業のコアとなるはずみ車を無視していないか。
-学習意欲が低下していないか。
-運と実力をはき違えていないか。
-多すぎる機会に翻弄されて足元がふらついていないか。
-その拡大には規律が存在するか。
-リスクを直視しているか。
-問題の解決を組織変更で逃げていないか。
-画に描いたような特効薬に期待・追求しすぎていないか。
-その判断は拙速ではないかどうか。

これらの傾向が見られたら、その企業はもしかしたら、衰退へのステップをだどっているのかもしれないと・・・・。

もし、あなたの企業が、このシナリオに沿って進んでいることに気づいてしまったらどうするか。 もちろん、そのような深刻な状況から立ち直った企業もたくさん存在する。本書の一部は立ち直りのためのヒントを示すことに充てられてはいるが、明確な解が記されているわけではないので、読み手自身で考察する余地が多く残されている。

データは具体的でも、その考察は抽象的なものも多いため、対象を企業ではなく、もっと小さなチームやグループといった組織に置き換えても、成立する内容かもしれない。

さて、あなたの企業(チーム)は、衰退していませんか?チェックのために使えるかもしれない一冊。

官僚の責任 (PHP新書)官僚の責任 (PHP新書)
古賀 茂明

PHP研究所 2011-07-16
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管首相が辞任を示唆し、国民の政治不信が続く日々。
民主党の政治主導のはき違えによって、空回りを余儀なくされている官僚たちですが、今も昔も、そしてこれからも、彼らの担う責任と期待は大きいはず。

官僚出身の著者による、官僚批判と、官僚への期待と責任をつづった新書。
年功序列と終身雇用が強く根付いたその官僚の仕事内容と思考回路は、民間からすれば、非現実的なものばかり。
なぜ、そのようなシステムがまかり通るのか、どうすれば変えられるのか、震災で大きくダメージを受けた日本が今すべきことは。

軽く読めるけど、非常に重ーい話題が詰まった一冊です。

- 全体を見ずに省のことだけをかなえてムダな行為を繰り返す。若いころから環境によってはぐくまれるその官僚の本能とは。
- 日本がインフラをセールスしようとしている途上国の指導者は、国内外てたたき上げられた強者ばかり。慣れていないナイーブな日本政府に相手がつとまるのか。
- 公務員をいかにイノベーション軍団にするか。彼らが国民のために働ける仕組みをどう作るか。
- エリートたちが官僚になるのは、山登りをする人がエベレストに登りたいというのと同じ。国のために頑張るのではなく、そこにてっぺんがあるから目指す。
- 権限と予算と天下りポスト、この3点セットをじつけることを自動的に考えるように思考回路がセットされる現在のしくみをどう変えるか。
- 痛みに耐えて血を流して、信頼を勝ち得るべき。ちょっとかわいそうな人は救わない、といった明確な取捨が必要。

ポケット図解 「見える化」で目標を達成する本ポケット図解 「見える化」で目標を達成する本
今里 健一郎 佐野 智子

秀和システム 2011-04
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最近何かと話題の「見える化」。
何とかならんものかと、ヒントを求めて平積みから手に取ってみたのですが・・・・。

発展には「維持/改善/挑戦」が必要、ムダを見つけるには「時間/目的/手順」の3ステップが必要、といったように、解決すべき問題が、すべて3つの要素に分解整理されているのが特徴。全部で33の課題を「見える化」で解決すヒントが示されています。

FT図、クロス集計、パレート図、回帰分析など、多くの図解ツールが紹介されていますが・・

結局、淡々と基本的なツールの紹介に終始しており、釣りに例えるならば、魚(結果)を与えるのでもなく、釣り方(方法)を教えるのでもなく、ただの釣竿のリスト、といった構成。

残念ながら、私の求めている釣竿はそこにはなく。
また、自分の手でしっかりと考えることにします。

カンブリア宮殿 就職ガイド――村上龍×73人の経済人カンブリア宮殿 就職ガイド――村上龍×73人の経済人
村上 龍 テレビ東京報道局

日本経済新聞出版社 2011-05-21
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「カンブリア宮殿」からと出版されている本はいくつかありますが、本書は、その中でも就職をテーマに記事をまとめたもの。著名な経営者たちが、経営論だけでなく、自身が築き上げてきた会社の特徴とビジョンを語る。経営者の個性が色濃く現れていて、各企業たった4ページの紹介なのだが、企業文化がよくわかるという一冊。

興味のある企業の文化を知るだけでなく、自分の詳しくない業界の企業分析としても有用。番組で村上龍と経営者が語る濃いメッセージが、これでもかと詰まっていてお得な構成。

印象的なコメントを自分用にいくつかメモ。

本田技研 福井氏
我々が大切にしている創業者の教えの一つに、"3つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)"問い考え方があるんです。満足とかではなくて喜び。買っていただいて、満足していただいて、その先に喜びがあると思っているんです。これが中心なんですけど、最後はメーカー側が作って喜ぶんだと。

キョウデングループ 橋本氏
会社は後になればなるほど、優秀な人間が入ってくるです。最初、苦労を共にした人間よりも器が大きい人間がどんどん入ってくる。そうすると、前からいる連中は、新しい人を抑えてしまうんですね。そうじゃないよと。新しく入ってきた人間の実績もお前の実績だよ、と。

日本理化学工業 大山氏
人間の究極の幸せは4つですよ。一つ目は愛されること。二つ目がほめられること。3つ目が人の役に立つこと。4つ目が人に必要とされることですよ。幸せの中の3つは働いてこそ得られることなんですよ。

品川女子学院 漆紫氏
人生3万日とすると最初の1万日がちょうど28歳。それまでが学びのステージ、それを社会に還元するステージが28からだということです。

ファーストリテイリング 柳井氏
正常な危機感じゃないといけないんです。困っていると危機感じゃなくて不安になりますよね。不安になると何もできない。好調のときにこそ、ひょっとしたらこれは違うんじゃないかという危機感を持たないといけないんじゃないですか。

セブン&アイホールディングス 鈴木氏
ライバルは競合会社ではなく、刻々と変わる顧客のニーズであるということです。

白銀ジャック (実業之日本社文庫)白銀ジャック (実業之日本社文庫)
東野 圭吾

実業之日本社 2010-10-05
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本屋で平積みされているときから気になっていた東野圭吾の白銀ジャック。
ゲレンデを舞台に繰り広げられる事件の真相は・・・・。

スキーやスノボのシーンは的確に描写されているのだけど、登場人物の描写やストーリー展開は、いまいちかなぁ。
他の東野作品と比べると、ちょっと深みに欠けるというか・・・。

6月とは思えない蒸し暑さが続く中、ウインタースポーツをテーマにしたサスペンスで涼む、というのもアリかもしれない。

ウィキリークスからフェイスブック革命まで 逆パノプティコン社会の到来 (ディスカヴァー携書)ウィキリークスからフェイスブック革命まで 逆パノプティコン社会の到来 (ディスカヴァー携書)
ジョン・キム

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2011-04-16
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「逆パノプティコン」という聞きなれない言葉が目に留まり、手に取った新書。

パノプティコンとは、日本語では「全展望監視システム」と訳されるらしい。円形に独房が配置され、その中央で看守塔から全方位を見守るという監獄における効率的な監視システムのことだそうだ。このシステムでは、看守塔の中に、実は誰もいない状態でも、この構図そのものが、囚人たちの行動を規制するという力が働く。
本書が唱えるのは、その逆、つまり、現代の情報社会においては、看守塔側にいるのは市民、独房で行動を監視されているのが企業や国家となる。ウィキリークスやフェイスブックなどのソーシャルメディアツールによって、彼らの行動がさらされることによって、新しい権威体制が築かれていく、そんな時代の到来を解説している。

キャッチーなタイトルではあるけれど、内容は、ほぼウィキリークスとフェイスブックのシステムとその影響の説明がほとんど。米国国家機密流出やジャスミン革命など、最近起こった時事ネタの理解を深めるにはよいけれど、あくまでも事実の説明なので、ネットでも入手できる情報が多いと感じた。

エジプトやチュニジアだけでなく、これからも起こるであろう多くの市民革命は、従来のように特定のカリスマリーダーが率いるものではなく、ネット上に等しく大量にコピーされた整理された情報によって喚起された集団が起こすようになる。政府や国家組織による制圧や規制はより難しいものになるだろう。

その革命が正しい方向を向いているうちはよいかもしれないが、企業やコミュニティによって、情報の操作や、情報インフラを止めるなどの制御を行うことも可能とあっている今、それらの活動が、市民活動を間違った方向へ扇動する可能性も否定はできない。

一個人としてどのようにソーシャルメディアツールにかかわっていくか、やはりそこにも一定のモラルとリテラシーが求められることは間違いない。

ITロードマップ2011年版ITロードマップ2011年版
野村総合研究所技術調査部

東洋経済新報社 2010-12-24
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手っ取りばやく業界の流れを把握するには、この手の本に頼るのもあり。
野村総研の著者によって、各技術領域ごとに、2015年くらいまでの、技術ロードマップが整理されています。

紹介されている技術領域は、ワイヤレス通信、情報分析技術、クラウドコンピューティング、ITモダナイゼーション、ソーシャルCRM、スマートグリッド、データセンター、ITチャネル戦略、エクスペアリンスデザインなど。

WEBで時間をかければ調べられる情報かもしれないけれど、パラパラっとページをめくるだけでこれだけの情報が一覧できるのは、やっぱり書籍の強み。

世の中の方向と、自社の描いているロードマップを比較することで、差異化やコスト戦略の分析に用いるという使い方や、ここに紹介されていない(=知見がたまっていない)技術に潜在的なビジネス好機を見つけ出すという使い方もあるかもしれません。

個人的にはITモダナイゼーション(レガシーシステムを近代IT環境に蘇らせるアプローチ)については、知らないことが多く素直に勉強になりました。

ランチェスターの基本戦略がわかる本―販売の絶対法則 (知的生きかた文庫)ランチェスターの基本戦略がわかる本―販売の絶対法則 (知的生きかた文庫)
日本ランチェスター協会

三笠書房 2002-05
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戦争や戦闘における軍事シミュレーションから発展し、マーケティングでの地域戦略、市場占拠戦略などへと発展し、注目されたランチェスター理論。

強力な武器をつかって、個 vs 個の戦いが行われる場合、相手の兵士数が目に見えるような状況では、兵士数の1次関数で結果が決まる。つまり、A1000人とB500人と戦いの場合は、Aの方が500人の兵士を残して勝利することになる。(第1法則)

一方で、情報を駆使した広域の戦いが行われる場合、一人複数を相手に戦いができるような情報戦では、兵士の数の2次関数で結果が決まる。情報力と戦力が同じだとすると、上述のケースでは、Aは500人よりもはるかに多くの人数を残して大勝利を収めることができる。(第2法則)

営業戦略に例えると、兵士数は営業マンに相当し、情報力は情報のインフラ力になる。第1法則は、比較的接近戦で参入企業の少ないカテゴリーが当てはまり、第2法則は広域を対象とし物理的な距離に影響を受けない産業に当てはまりやすい。

自分の企業と、その協業企業との関係を分析し、どちらの戦いに持ち込むべきかを考えようといいうもの。
後半は、営業マンが情報戦を有利に運ぶための(戦略ではなく)戦術が多く語られている。

この本自体も10年ほど前に書かれたものだけど、最近はランチェスターということばも、あまり聞かなくなってきたような気がする。企業戦略にも流行があるとすれば、営業マンがiPhoneなどの情報端末で最新の数値を持ち歩き、あらゆるプロダクトがマルチプラットフォームでチャネル販売されている現代の企業戦略には、合わなくなっていているのだろうか。

ランチェスター。もっともっと奥深いものだとは思うけど、素人視点で、この本を読む限りでは、少なくとも現在の情報産業ビジネスにおいては、その混沌から抜け出すための銀の弾丸ではないような気がした。

35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)
山本 真司

PHP研究所 2011-04-26
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まもなく35歳。
ついつい、「35歳からの・・・」とか「35歳までに・・・」なんて本を見かけると手に取ってしまいます。
Amazonで検索してみると、35歳をターゲットにした本は、ビジネス関連書籍だけでもかなりの数が出版されていることがわかります。

コンサルティング担当としての実績をあげ、最強の担当者の状態からマネージャへ。
自分でチームのすべての仕事に指示を出し、部下育成が進まないマネージメントスタイルで悪評を集めてしまう。いろいろ悩んだ挙句、こんどは「ウルトラ放し飼い」スタイルで、また「最凶マネージャ」と呼ばれる羽目に・・・。

部下のマネージメント、リーダーシップにおいて、そんな失敗を繰り返しながら、会社のパートナーまでのぼりつめた著者による、マネジメント指南書。自分が頑張るだけでは回らなくなってくる35歳をターゲットにしています。

とにかく、失敗事例→改善→成果 というステップで多くのポイントが語られているので、ヒントが表面的ではなく、現実味を帯びているのが特徴。そこまで言うか、というほど赤裸々に具体的に著者の失敗例が述べられているのも面白い。

マネジメントのスタイル、というのは人によって違うのが当然。なかには、この著者の考え方とは同調できない部分もあるかもしれませんが、数多くのヒントが記されているので、いくつかは身になるものがあるのではないでしょうか。

形式化しにくいコミュニケーションやリーダーシップのやり方を、40個の部品としてフレームワーク化して説明するという本書のスタイルも、著者のコンサルティングとしての経歴のなせる技かもしれません。

「どんな仕事も初速勝負。最初の2週間で仮説をつくり、検証と進化を猛スピードで行う。このとききだけは、現場を走り回り、一兵卒のごとく。」
「忙しいから・・できない、という悪循環は今すぐ断ち切る。いまをこなすだけの自分から決別する。毎日1ミリでもいいから成長する。」
「逃げないこと。周りは見ている。」

BCG流 経営者はこう育てる (日経ビジネス人文庫)BCG流 経営者はこう育てる (日経ビジネス人文庫)
菅野 寛

日本経済新聞出版社 2011-02-02
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ボストンコンサル出身の著者による「経営者としてのスキルセット」の解説。

リーダーシップや経営論を語る書籍は多いですが、そのスキルを「アート」系、「科学」系にスパッと分類した解説はとても明確でわかりやすい。

この筆者もドラッカー同様に、経営者のスキルセットは後天的に身につけられるものであるという前提のもと、個々のスキルの説明と、いかにそれらを身につけるか、という視点でまとまれている。内容には納得できるものも多く、共感できる一冊。
文中には、ユニクロの柳井氏、ソニーの出井氏、京セラの稲盛氏など、大物経営者の生のコメントやインタビュー結果が数多く引用されている点も、論説に箔をつける感もあって面白い。

科学系スキル:
戦略・マーケティング・会計・財務などのマネジメント知識
論理的思考能力

アート系スキル:
まずなによりも何が何でも結果を出すという「強烈な意志」
決断する「勇気」
ロジカルシンキングでは気がつかない本質に迫る「インサイト」
考える「しつこさ」と実行する「しつこさ」
組織を動かす「ソフトな統率力」

科学系のスキルは、それを身に付けたミドルマネジメントであっても適切な答のだせるもの。科学的スキルだけでは解決できない問題だけが経営者には回ってくる。その意思決定と実行には、このようなアート系のスキルが欠かせない。

日本の大企業では、科学系スキルに偏重した組織形態が多くみられるという。ロジカルシンキングのみが発達したエリート集団は、適切な判断と意思決定を下せないことが多い。
それどころか、論理的にできない理由を見つけること(ネガティブチェック)だけが先行して、有効なうち手を自ら狭めていくことが多いという。その結果「何もしない」リスクを過小評価してしまうことになる。

経営論に答はないけれど、そこには体系的なスキルセットのようなものは存在する。それを知ると知らないとでは、周囲の巻き込み方、成功に導くまでの過程は大きく異なってくるだろう。

日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)
湯之上 隆

光文社 2009-08-20
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ソフトウェアエンジニアとしての仕事に影響を与える要素はたくさんあるけれど、ソフトが動作するハードウェアであるSoCやメモリなどの半導体から受ける影響がもっとも大きいと言ってもよいかもしれない。

だとすれば、この先、私たちが扱う半導体はどのように変化していくのか、現在の半導体のテクノロジードライバーであるグローバル市況はどうなっているのか、を知っておくことは悪いことじゃない。

本書は、半導体産業出身の著者による半導体産業を赤裸々につづった一冊。
仕事を通じて得た知識や、なんとなく理解していたことが、データと多くのヒアリングによる分析とともに解説されていて、とてもためになる。

韓国や台湾のメーカーに比べて、利益の上がらない日本内製の半導体ビジネス。それは、技術の差ではなく戦略の違いのせいだという意見が多いが、そこには根本的な設計思想の違いがある。25年保証というメインフレーム時代に定義された過剰な品質基準をもとに設計されたアーキテクチャとプロセスが、日本の半導体産業の利益率を低いものにしているという。

日本の半導体企業が、品質ベースで設計されたコスト意識のない工程フローを今も採用しているのに対して、 韓国や台湾の半導体業者は、ボトム品質をキープしながら、最終製品から逆算してコストベースで設計された工程が組まれている。

さて、世の中のシステムが求めているものはどちらだろうか?現在のPCやスマートフォンといった技術トレンドをリードするアイテムに25年の寿命が求められるだろうか?これらのマス製品のライフに合わせるならば、数年の保証で十分であり、過剰な品質は不要ではないだろうか、というのが筆者の分析結果である。ここに、イノベーションのジレンマが存在している。

もちろん日本の半導体技術者も、自分たちの向いているベクトルがずれ始めていることには気づいているという。しかし、実際に半導体ビジネスをドライブしている経営者たちには、この認識の差が大きな設計思想の違いを生み、その結果出来上がった半導体はコスト構造が、ビジネスそのものを揺るがすほどの大きな違いになることの認識が甘いのではないかと警鐘を鳴らす。

半導体の、設計は4段階。まず、アーキテクチャ設計。この出来で10倍の生産性の差がつく。そして論理設計と回路設計、ここで設計者のセンスで2~3倍の差がつく。さらにレイアウト設計 数10%の差がついてしまう。この影響の大きさを肌感覚として実感したうえで、思想からしっかりとかじを切りなおさなくてはいけない。

また、現在の日本の企業が、本当に世界で求めれている半導体の要件を理解できているかどうか、という点にも課題がある。

マルチプロセッサ化、メモリの積層化、3次元実装技術などが着実に進められている状況をみると、半導体の微細化の限界は近い。もはや、微細化などの技術領域における日本の優位性は薄れてきているのかもしれない。たしかに、微細化が止まると、MPUやメモリなどの微細化の恩恵を受けている先端領域はインパクトを受ける。しかし、5万円パソコンが市場のシェアを伸ばしているように、本当に必要とされている半導体のスペックは、機能からコストへと変わりつつあるのも事実である。

韓国の企業などは、半導体ビジネスのロードマップとして、インドなどの新興国での具体的な需要を理解するためにマーケティングに多くのコストをかけているという。果たして日本の半導体事業経営者にそのような知見があり、確実なロードマップが描けているだろうか。NO。それが本書を通じて、著者が多くの技術者や世界各国の関係者へのヒアリングを通じて導かれた、残念な結論のようだ。

世の中のニーズがドラスティックに変化していることを知りながらも、バリューチェーンを構成するすべての事業活動がその変化についていけない、というのは、官僚的な意思決定の手法が主体となっている多くの日本企業が直面している普遍的な課題かもしれない。半導体業界でも起こっている、そのズレを手っ取り早く理解するにはオススメの一冊です。

冗長性から見た情報技術 (ブルーバックス)冗長性から見た情報技術 (ブルーバックス)
青木 直史

講談社 2011-03-23
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「冗長性」というキーワードを軸に、フォールトトレラント、符号化表現、圧縮技術、誤り訂正、ルーティング、互換性、暗号などの情報技術を解説した書。
理系エンジニアとしては、すでに一度通った道。
新しい発見そのものは少ないですが、とてもわかりやすくまとめられているので、復習と知識の整理にはよいかも。

すべての項目が、「冗長性をもたせる」「冗長性を削り取る」「冗長性に意味を持たせる」という視点で整理されています。
特定の視点を切り口に技術情報をまとめるとこうなるのかという、情報のまとめ方の参考にもなるかもしれません。

こういった良い解説書が、高校や大学の教科書の副教材として与えられると、理解が進んで、脱落者も減るだろうになぁと、いつも思ってしまいます・・・。
情報関連の教科書って、読みづらいものが多いですからね。

たまたま―日常に潜む「偶然」を科学するたまたま―日常に潜む「偶然」を科学する
レナード・ムロディナウ 田中 三彦

ダイヤモンド社 2009-09-18
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ファンドマネージャが15年連続で市場予測を的中させ続けること
ビルゲイツが成功を収めて大金持ちになること
ニコラスケイジが有名俳優になること
ハリーポッッターが大ヒットすること

これらすべての事象はすべて「偶然」に支配されている。もちろん、その人のもつ素性が全く関係しないわけでもないし、彼らの努力を否定するものでもないが、そこには必ず何らかのランダムネスが引き起こした事象が関係している。にもかかわらず、人は期待や偏見によって、偶然で起こることを必然として説明しようとすることが多い。

本書の中で著者は、それらがすべて偶然によって決定される事象であることを、さまざまな例を挙げながら論証していく。いずれも、宝くじに2回当選することと同じ、偶然と確率によってもたらされた結果なのである。
「モンティーホール問題」や「訴追者の誤謬」に見られるように、人は錯覚や思いこみによって正確に確率を判断することができない生き物である。そのことを理解したうえで、偶然に惑わされずに日常生活を営むことで、真実が見えるようになる。

やや文章が読みにくい感じもするが、確率に関する様々な定理と見解はとても分かりやすく、理系人間にとっては知識好奇心をくすぐられる内容。

1/1000で誤りを示すHIV検査が陽性だった場合、HIVである確率は999/1000ではない。もし、1/10000の人がHIVに感染しているというデータがあるならば、その陽性宣告を受けた人が「HIVでない」確率は10/11以上になる。

といったベイズ理論やモンティホール問題も、日常的な具体例を挙げながらすっと理解できる内容に咀嚼されている点も本書の魅力である。

1.ランダムネスという不思議な世界
2.「それっぽい」話に潜む危険性
3.直観はすべての選択肢を把握できない
4.「たまたま」成功する確率を知る
5.大数の法則と少数の法則
6.「あなたが死ぬ確率は999/1000!」
7.バラツキを手掛かりに真実をつかむ
8.ランダムネスを逆手に取る
9.パターンの錯覚と錯覚のパターン
10.ドランカーズ・ウォーク

武器なき武器なき"環境"戦争 角川SSC新書 (角川SSC新書)
池上 彰 手嶋 龍一

角川SSコミュニケーションズ 2010-09-10
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NHK出身の池上氏、手嶋氏による環境対談。

COP3の京都議定書で日本が宣言させられてしまった重い約束、そしてその背景にある日本の国際交渉力の低さ。カーボンマネーをリードすることで実権を握ろうとするイギリス。第3者としての立場を変えようとしない中国やインド。
排出量取引など、世界が協力して築こうとしている環境施策の裏には、各国の思惑と戦略が渦巻く。まさに外交戦争とも呼べる戦いがそこにはある。

二人の対談を通じて、ニュースのうわべだけでは見えてこないような、本当のところ、をうかがい知ることができる。単に事実の紹介だけでなく、二人の見解も混じっているので、それが真実なのか、それとも日々メディアから流れるニュースが真実なのかは、私たち自身が見極める必要がある。環境問題は、各国の国益や企業の損益に大きく影響のあるテーマだけに、一定量の恣意的な情報が流れることもあるだろう。私たち自身にこそ、ただし情報を見極めるメディアリテラシーが求められている。(そのことにも本書では語られているあたりがぬかりない感じ。)

昨年秋に発売された本書では、今話題の原子力発電の有用性についても語られていますが、とにかくこれからのエネルギー問題において、世界の中の日本の位置づけはどうあるべきか、日本の中にいる私たちひとりひとりの役割とはなんだろうか、といったことを考えなければならない。生活に直結する問題だけに、積極的に行政の進め方を監視し、政治に参加していく必要があるだろう。

鋭く切り込む手嶋氏と、環境用語を丁寧に説明する池上氏との掛け合いは絶妙。
相手の言葉をうまく拾い、きれいに均したうえで、自分の考えを重ねていくという池上氏の会話のスタイルは、対談という形式の中で、うまく活きているように感じる。

テーマがまったく異なるので比較するのも変ですが、個人的には、池上氏単独によるベストセラー「伝える力」などよりも、はるかに面白かったなぁ。

異業種競争戦略異業種競争戦略
内田 和成

日本経済新聞出版社 2009-11-10
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フィルムカメラメーカーにとって、携帯電話のメーカーや通信キャリアがライバルとなり、スポーツクラブのライバルとしてゲーム機メーカーが名を連ねる。いまやレコード会社の最大の競争相手はアップルである。

既存のビジネスモデルと事業連鎖は、置き換え、省略、束ね、拡張、追加といった5つの視点で、次々変化を繰り返していく。そのスピードはとどまることを知らない。
顧客が共通にもつ時間と空間と財布という資産を奪い合う中で、販売チャネルもコスト構造も全く異なる企業が、明日から競争相手になるかもしれないのだ。

カメラや音楽業界の例
置き換え:フィルムがメモリーに。レコード店がiTunesストアに。
省略:現像は不要になり、CD媒体の物流も不要になった。
束ね:音楽の卸売・営業・小売はiTunesストアに束ねられた。
拡張:写真はアルバムだけでなく、PCで閲覧されたり、メールで配信されるなど、使途の選択肢が増えた。
追加:扱う写真や音楽の情報が多くなり、便利な閲覧ライブラリやレコメンデーションなどの事業が加わった。

85年にポーターが唱えたバリューチェーンを、一企業の視点としてだけでなく、業界全体に拡張して分析しないと、本当の敵を見据えることは不可能な時代になってしまった。
そして、このような時代には、平時のリーダーシップではなく、戦時のリーダーシップが求められる。先見性・勇気・現場力に優れ、不確実性に対処する資質をもったリーダーである。時には自分のビジネスステージを破壊することも真剣に考えながら、新しい戦略を築いていかなければならない。

この手の本は訳書が多いのだけど、日本人によって書かれたものだけに、とても読みやすくまとめられている。文中に登場する事業連鎖分析のフレームワークはとても有用。取り上げられる企業に日本企業が多いことも、分かりやすさを助けてくれている。

ただ、情報通信の革新と顧客の価値観が変わったのは、何も最近のことではない。すでにずいぶん前から異業種間のビジネス合戦が始まっていることを考えると、2009年末に書かれた本としてもタイミングを逸した感は否めない。

大改訂 図解 チームリーダーの教科書大改訂 図解 チームリーダーの教科書
藤巻 幸夫

ダイヤモンド社 2010-06-11
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チームを作れば、リードするものとリードされるもの、という役割が必ず発生する。
リーダーという役割には、少なからず鉄則のようなものが存在する。

本書は藤巻氏によってまとめられたリーダーシップの入門書。
見開き2ページですべてがわかりやすく完結していてとても読みやすい。

ビジョンをしっかり伝えよう(Chapter3)
そのためには、10人、5人、マンツーマンと規模を変えながら、変幻自在な語りかけをひたすら続けよう。フォーマルに、そして時にはインフォーマルに。ITに頼るのではなく、情報の「感性」や「熱意」を伝えよう。

戦略には余裕を持とう(Chapter4)
示すゴールを達成するための戦略には余白を残し、その余白はメンバーに埋めてもらおう。そのためにアイデアを引き出そう。その方が、得られる成果は大きくなる。

士気を高めよう(Chapter5)
人間関係に目を配ろう。人間を見続けることを面倒くさいと感じるならば、リーダーとしての役割は果たせない。リーダーを演じることが大切。心に訴える振る舞い、スピード感のある行動を、意識的に演出しよう。

当たり前のことかもしれない。
だけど、大切なことは、当たり前のことをしっかりとやり続けることだ。

永遠の0

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永遠の0 (講談社文庫)永遠の0 (講談社文庫)
百田 尚樹

講談社 2009-07-15
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第2次世界大戦、最高のゼロ戦乗りだった主人公の祖父の姿を追い求めていく、ドキュメンタリータッチの小説。

戦争を知る世代たちへのインタビューを重ねながら、徐々に祖父の人物像が明らかになっていく。そこには、屈指の腕をもつ操縦士であった祖父、何よりも家族を大切に思い必死で生き抜こうとした祖父、それゆえに臆病者と後ろ指をさされていた祖父、複雑な思いを胸に語る元兵士たちのさまざまな視点から人物像が築き上げられていく過程を見ることができる。

あくまでも小説として話が展開していくのだが、文中のインタビュー記事で語られる、戦場の様子の生々しさとリアルさは相当なもの。特攻として、自らの命を犠牲にして米国空母に突っ込んでいった、多くの若者たちの悲惨でやるせない感情が、実によく伝わってくる。

戦争中の悲劇をテーマにした多くの映画やドラマは、戦争中を舞台として書かれたものが多いため、多くの伝えられた史実を平均化してシナリオ化され、また最後には美化されて完結することも多い。

ところがこの作品では、真珠湾、ラバウル、ガダルカナルなどについて語られる体験談が、語り手である元兵士によってそれぞれ異なっている点が面白い。その時々の戦況によって、残された人のもつ印象も異なるわけで、現在に語り継がれている史実を作りだすもととなったそれぞれの物語も、異なっていて当然だろう。そこにリアリティが感じられる。

厳しい軍の規律の中、正しいと信じて、多くの若者がカミカゼとして命を落としていった。
残された遺書の言葉の行間に残された彼らの思いと、戦後、ジャーナリストがつくり上げた戦争史は本当に同じものなのか。今、私たちはそのつくり上げられた歴史から何を見出すべきなのか。
著者の考える太平洋戦争に対するあふれんばかりの思いが、小説に登場する多くの人物を通じて代弁されているようにも思えてくる、

とても深くて壮大なストーリーである。

プロセッサを支える技術  --果てしなくスピードを追求する世界 (WEB+DB PRESS plus)プロセッサを支える技術  --果てしなくスピードを追求する世界 (WEB+DB PRESS plus)
Hisa Ando

技術評論社 2011-01-06
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いい本だなぁ。

情報処理の授業で習うようなプロセッサやメモリの基本的な構造と命令系の話にはじまり、最近の仮想化技術やマルチコア技術など、比較的新しい情報にいたるまで網羅されています。

ひとことでプロセッサといっても、PC、携帯やモバイル、家電など、その特徴によってアーキテクチャは大きく異なるので、特定の製品に特化した説明はそれほど多くありませんが、しっかりと基礎+αを学べる構成になっています。(主に XeonやCore i7といったインテルのx86系の具体例を挙げた説明が多いですね。)

個人的には、GPUの汎用化の話や、プロセッサ毎の低消費電力化のとりくみなどの話はとても役に立ちました。
こういった基本的なプロセッサの仕組みを知っているのとそうじゃないのとでは、結構見えるものが違ってきますよね。

WEB上や雑誌で集めるしかなかった断片的な情報がぎゅっとまとめられている感じがします。コンピュータを扱う技術者ならば知っておく知識といえるでしょう。

マーケティング脳 vs マネジメント脳 なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか?マーケティング脳 vs マネジメント脳 なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか?
アル・ライズ ローラ・ライズ 黒輪 篤嗣

翔泳社 2009-07-16
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いわゆるマネジメントは左脳による言語・分析思考で判断する。現場で新しい発想をもって提案をするマーケティングのひとたちは右脳によって視覚的な思考をする。

その両者では話が合わないのは仕方のないこと。ここで問題になるのは、左脳思考のマネジメントのほうが最終的な意思決定の権限をもつ立場にあることである。どんなに優れた右脳発送のアイデアも、その多くは最終て意思決定の場でつぶれてしまうのである。

左脳思考をもつだからこそマネジメントという立場にいるともいえるし、右脳思考だからこそマーケティングという仕事をしている、というところにもどうしようもない矛盾があるのかもしれない。

いまとなっては、マーケティングの見解に理解を示し、多くの情報をもとに柔軟な判断ができるトップは増えてきているのではなうかと思う。
それでも、簡潔なことばで語れないブランドを立ち上げたり、あらゆるセグメントのユーザを狙った結果なんの面白みのない商品をつくってしまったり、多角化しすぎて何の会社だかわからなくなってしまったりと、現在でも左脳的判断による多くのミスジャッジがあることが、著者のあげる具体的な例から見えてくる。

マクドナルドとバーガーキング、ソニーとアップル、ペプシとコカコーラ、メルセデスとフォードなど実在の企業のブランディングに対する、痛烈ともいえるコメントは面白い。

個人的には違和感を感じる節はいくつかあるものの、内容は共感できるものが多いし、挙げられている例は欧米の企業のものが多いけれど、知識としては知っておいても損はない。

各章のタイトルを眺めるだけでも面白いので、ここから、左脳と右脳を融合させるためのヒントを探ってみるのもいいかもしれない。

マネジメントは商品に力を注ぐ、マーケティングはブランディングに力を注ぐ
マネジメントはよりよい商品を求める、マーケティングは他とは違う商品を求める
マネジメントはフルラインナップを好む、マーケティングはラインナップを絞る
マネジメントはすべてを詰めこもうとする、マーケティングは一語で表現しようとする
マネジメントは永遠の成長を目指す、マーケティングは市場の成熟に備える
マネジメントはライバルのまねをする、マーケティングはそれらが大っきらい
マネジメントは常識をよりどころにする、マーケティングは感覚を拠り所にする
マネジメントは新しいカテゴリーをつぶす、マーケティングは新しいカテゴリーを生み出す

お金の流れが変わった! (PHP新書)お金の流れが変わった! (PHP新書)
大前 研一

PHP研究所 2010-12-16
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いい本ですね~。

最近は、新興国に大量の投資マネーが集まってカネあまり状態、先進国での金融緩和政策により、流通量の調整を図る・・・なんて記事が、毎日のように新聞をにぎわせています。

ですが、金融素人の私にとっては、そもそもなぜ、世の中のカネがあまっていて特定の国に集まってしまうのかが、わからない。そんな、基本的だけど大事なことを、わかりやすい言葉で説明してくれているのが、この本。

コンサルとしての顔をもつ大前研一氏だけに、その見解にはもしかしたら、ある種の恣意的な偏りがあるのかもしれませんが、現在の世界の金融が抱える課題と、日本の現状を率直に理解するには、最短コースかもしれません。

インドネシア市場が、日本企業によっていかに魅力的なマーケットか
ドバイショック、ギリシャ不安の必然性
日本の将来にいったい何を期待するか
新興国がお金を集める具体的な理由とは何か
ホームレスマネーがどれほど巨大か
日本の国債に潜むリスクとは
民主党の犯したミスとは

果たして、この本からこれらの情報を得た後、いったどれだけの自己資産を、この日本に預ける気になるだろうか・・・。

日本の未来に興味のあって、ちょっとばかりの貯金をしている人は、ぜひ目を通しておいたほうがよいかも。

夕暴雨―東京湾臨海署安積班夕暴雨―東京湾臨海署安積班
今野 敏

角川春樹事務所 2010-01
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最近はテレビドラマでもシリーズ化されている「ハンチョウ」の原作のひとつ。

今回の事件の舞台は、お台場のコミコン会場。
ネット上にはその会場に爆破予告すをする書き込みが・・・。

主人公率いる刑事グループと、主人公にライバル心を持つとなりの警備グループ。
2つのグループが対立した結果、捜査はスムーズに進まない。

事件の背景描写や犯人探しもしっかりと書き込まれていますが、警察という巨大な組織構造のなかで、つまらない競争心や組織内の小競り合いが生産性を下げ、火種が実際に燃え始めるまで公式には動けない大組織事情といった、人間論、組織論にフォーカスされています。この視点が、今野作品の面白いところ。

最新のネット犯罪ともいえる事件に、旧来型の警察組織が右往左往する様子も、リアルに描かれていて面白いです。

ただ、全体としてはちょっと、ページ数の割に進行がスローかなぁ、もうひとイベント盛り込んでほしかったかなぁとも思う作品。

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれたグーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた
辻野晃一郎

新潮社 2010-11-22
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ソニーに22年間在籍する中で、VAIOデスクトップやすご録などで大きな成果をあげながらも、ソニーを去ってGoogleで社長を務めた辻野氏による自身の記録。

ここで語られるソニーの内情は、まるで企業小説のような物語。そこには、辻野氏自身がソニーという環境を利用して実現したいことができなかった、という悔しさと未練のようなものも伝わってくる。だが、経営方針が乱れ始め、ガバナンスが利かなくなった状況を憂いながらも、彼自身はソニーを否定しているのではない。むしろ日本企業では唯一だったともいえる、その自由でチャレンジ精神にあふれる企業文化を大いに認めている。

ソニーからグーグル、という時代を象徴する企業の変遷をそれぞれ追うだけでも面白い一冊。
さらに、この両極端ともいえる企業文化を経験したうえで述べられた、変化を受け入れるワークスタイルに関する辻野氏の視点も興味深い。

企業に集まるヒトたちは、その瞬間の企業に魅力を感じたヒトであり、マネージメント層が入社した当時のスタイルを求めているのではない。終身雇用が前提ではなくなってきた今、この瞬間に集まった仲間の独自性と違いを大切にして、短期間に成果を出せるワークスタイルをもつ人材が求められる。

また、ツールが充実した結果、24時間、世界中どこにいても仕事ができるようになり、各人のストレスレベルは高くなる傾向にある。この事実を認識したうえで、すばやくON・OFFを切り替えて、楽しみながら仕事のできるコンピテンシーもまた求められるのである。

なにもgoogleに限った話ではない、どんな場所で働いていようとも、このようなワークスタイルへのシフトが求められているのは間違いないだろう。辻野氏の生きざまから、自分のワークスタイルのヒントを探ってみるのも面白いかもしれない。

物流の知識<第3版> 日経文庫E5物流の知識<第3版> 日経文庫E5
宮下 正房

日本経済新聞社 2004-02-14
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ソフトウェアエンジニアという立場で、モノづくりに携わっている場合、いかに質の高い機能・品質を提供するかというプロフィット側に注力しがちで、自分の活動に伴うコストを圧縮させてコスト貢献するかという意識は低くなることが多い。

開発・生産・販売・消費という商品ライフを支える活動には、多くの登場人物が存在する。"物流"もその一部である。物流は、生産と消費の間にある、物理的・時間的・量的なギャップを埋める活動であり、価格を決定するコストに大きく影響のある企業活動である。

通常の業務ではあまり縁がないとはいえ、その強大な影響力をもつ物流という仕組みを把握しておくことは役に立つのではないだろうかと思い、手に取った一冊。

商品の形態にもよるが、物流が占める割合、つまり物流コストは販売価格の5~10%にも及ぶらしい。つまり、グローバルに販売網が拡大し、低コストで生産を行う新興国が増えた今、物流を支配して限界までコストを抑えることは、モノの造り手にとっては必須なのである。

保管のしやすい仕組み、荷積みしやすい仕組み、量的調整をしやすい仕組みなどをしっかりと開発項目に入れていくことは、物流の手前にある生産者が最適化に貢献できる部分ではないだろうか。

いかにモノを多く物理的に運ぶかが物流効率の決め手だった時代は過ぎ、物流の最適化と情報システムの支配とが同義になったのが1990年代。そして現在は、環境保全のためのモーダルシフトと物流労働力の確保が課題となりつつあるらしい。

世界的にみると、今でも、移動の主体は自動車・トラックであることが多く、環境への悪影響は大きい。いかに環境負荷の少ない移動・管理手段に切り替えていくが、企業に求められている。

そして日本では、高齢化に伴う労働人口の減少は、物流を支えるドライバー職の減少を直接的に意味することになる。今後は、物流コストの占める割合は、もしかしたら増えていくのかもしれない。コストリーダシップ戦略を成功させるためには、流通させる製品の特性に合わせて、最適な物流のための労働力を確保することも課題のひとつになりそうである。


名探偵の掟

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名探偵の掟 (講談社文庫)名探偵の掟 (講談社文庫)
東野 圭吾 村上 貴史

講談社 1999-07-15
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推理小説が好きだという方、東野ファンの方にはぜひ読んでほしい小説。

主人公の名探偵が、数々のミステリーを解いていく短編集・・・などという単純な構成ではありません。

さまざまな推理小説やミステリー、2時間ドラマには、数多くの名探偵が登場しますが、彼らの悩みは何か。そう、読者や視聴者を、これまでに見たこともないようなあっと驚かせるような謎解きを「しなければいけない」、そして、彼らが楽しめるように、ストーリー中にわざとらしくヒントもちりばめなければならない。そんな数々の「掟」が名探偵には課せられているのです。

そんなプレッシャーの中で、主人公を演じなければらなない名探偵の立場にたって書かれた作品。作中の名探偵いわく、いろんなトリックが出尽くした感のある密室トリックなんて、本当に名探偵泣かせなんだとか。過去の名作と呼ばれるミステリーのトリックを再び使うだけでは、読者は満足しませんし・・・。

名探偵というキャラクターを通じて、推理小説作家の頭の中(の一部)を、面白おかしく、そして惜しげもなく小説にしてしまう奇抜さが秀逸。

少年時代に読んだあの名探偵の物語や、2時間もののサスペンスドラマなどの見方も変わるかも、そんな面白さを秘めた作品です。

そして、そんなプレッシャーの中で名作を執筆し続ける、著者の発想の斬新さ、構成の緻密さを際立たせる作品です。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン 小林弘人

日本放送出版協会 2009-11-21
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おすすめ平均

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読み応えのある本。
多様な経歴をもつ著者の分析・解説は、多角的で共感できるものが多い。なぜ、あのビジネスがフリーで成り立つのか?という問いに対する、もやっとした考えを、明確に言葉で示してくれる。

ここでは、著者の言葉をそのままつづって、自分の備忘録としようと思う。

--
競争市場では、価格は限界費用まで落ちる

情報処理能力、記憶容量、通信帯域幅の限界費用は、年々ゼロに近づいている。

潤沢なもの(限界費用が低いもの)は無料になりたがり、稀少なもの(限界費用が高いもの)は高価になりたがる。

デジタル市場ではフリーは必ず選択肢として存在する。複製する限界コストがゼロに近いとき、フリーをじゃまするものはほとんど心理的なものだけになるから。

アイデアも究極の潤沢商品。伝達のための限界費用はゼロなので、いつか必ず伝達する。企業秘密や著作権で縛ろうとも、アイデアを永久に止めておくことはできない。

ムダは、人が稀少だと思うものに結びついている。人間は、本質的にムダに抵抗を感じる生き物だが、世代によって感覚は異なる。稀少なものが潤沢なものに変わっている場合は、それはムダではなくなる。
自然界はムダを受け入れることのほうが多い。何千万もの卵を産んで生存確率を上げる魚のように。極大値から最大値へ向かうには、その途中で多くの極小を経なければならない。

ウェブはふたつの非貨幣単位で構成されている。注目(トラフィック)と評判(リンク)だ。

フリーに抵抗するのではなく、活かすこと。
ミュージシャンが音楽を無料で配って、コンサート販売で収入をあげたように。

プラットフォーム戦略プラットフォーム戦略
平野 敦士 カール アンドレイ・ハギウ

東洋経済新報社 2010-07-30
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「場」を提供する人が儲かるという、古来から存在する圧倒的に強力な戦略が、「プラットフォーム」という言葉によってスマートに説明されているという点では、プラットフォームという言葉になじみのない人に対してこの本はとても受けがよさそう。

そういった大人たちをターゲットにしているせいか、普段からプラットフォーム指向を持った年代や業界の人にとっては、ちょっと物足りないのかもしれない。アマゾンやGoogle、Appleが、これだけ時価総額を大きくしている理由を考えると、自然と、プラットフォーム指向の重要性に気付かされるはず。

とはいえ、この本の分析はわかりやすくて有用。
実際、「場」の提供は簡単なことではなく、多くの企業が躓いてきているのだから。

システムは構築したものの、キラーコンテンツをそのプラットフォーム上に載せるという戦略に失敗した企業も多いし、最初にモデルを築きうまく滑り出したにもかかわらず、あぐらをかいた結果、2番手に抜かれてしまうというケースも多い。
プラットフォームの戦略を構築する上では、長期的な視点が絶対的に重要で、その点を見誤ると、先行企業もあっという間に抜かれてしまう。これもプラットフォームビジネスの特徴。

もしかしたら、日本人向けにこの本が出版されたことの意味が大きいのかもしれない。日本の多くの企業もこれまでプラットフォーム指向のビジネスモデルを立ち上げてきた。そして、その多くは、うまく軌道にのることのないまま消えていった。
本来、コンテキストをしっかりと把握して、ニーズと雰囲気を満たす製品作りは、日本企業の得意分野だったはず。現在のネット社会とグローバルな環境における顧客傾向をしっかりと分析して理解すれば、「場」を作り出すことはチャンスは多いはずだ。

ジーン・ワルツ

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ジーン・ワルツジーン・ワルツ
海堂 尊

新潮社 2008-03
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海堂氏による医療小説のひとつ。

本書のテーマは妊娠と出産。

クールウィッチ(冷徹な魔女)と呼ばれる主人公と、5人の妊婦を中心にさまざまな医療ドラマが繰り広げられる。

産科を舞台に、不妊治療や代理出産、大病院のシステムと中小クリニックとの軋轢、慢性的な医師不足など、話題になっている医療問題を取り上げた社会派の作品ともいえる。

フィクションでありながらも、現実の世界とシンクロした問題提起に、思わずリアリティを感じてしまいます。'手軽に読めるけど、テーマは重い一冊です。

マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選2 失敗の技術 人生が思惑通りにいかない理由 (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選)マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選2 失敗の技術 人生が思惑通りにいかない理由 (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選)
マルコム・グラッドウェル 勝間 和代

講談社 2010-08-06
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アメリカの人気作家 マルコム・グラッドウェルによるエッセイ集。
全3巻のうちの2巻目の本書は、現実は必ずしも論理的な結果とはならないことによる、多くの矛盾点を、「失敗」にフォーカスしたエッセイが集められている。

「画像をめぐる問題点」では、乳がん検診のマンモグラフィーを診た医者の判断は、画像以外の様々な情報と経験とスキルに基づいたものであって、実は画像そのものは多くを語っていないと指摘する。判断には、生死に関連する判定を行うための医師の慎重さや心情が大きく影響することも多く、マンモグラフィーの結果が、そのまま判断に結びつくことは少ない。それでも、人は目に見えるその複雑な画像の情報にこそ真実があると思いこみ、写真を撮り続けている。画像は多くの情報を持ってはいるが、そこに結論はないことが多いのである。目に見えるものを過剰に信用するという人間の傾向を鋭く突いたエッセイである。

スペースシャトル、チャレンジャー号の事故を取り上げて、その必然性を説いた「爆発」も興味深い。この事故に関する多くの調査がなされたが、わかったことは、NASA職員は、やるべきことをやっていた、意思決定は正しかった、そしてリスクは管理もされていた。それでもこの事故は起こったというものだった。何事にもリスクはついてくる。そのリスクは、限りなく小さくすることはできてもゼロにはできない。この事故のケースでも、限りなくゼロに近いところまでリスクを低減する意思決定がなされていたが、それでも残っていたリスクが確率に基づいて発症し、事故につながったのである。つまり、この事故は「通常」の事故であり、この通常の事故こそが最も恐ろしいものといえる。ある分野のリスクが減ると、別の分野でリスクを冒すという傾向が私たち人間にある以上、リスクはゼロにならないし、事故は起こり続けるだろう。

「100万ドルのマーレー」では、増え続けるホームレスを一掃するためのアイデアを提唱する。実際、本当に救済なホームレスは、全体の何分の1にしかすぎない。多くの事象は、正規分布とべき乗分布に基づくことが多く、一部の人間が全体に大きな影響を与えているという一般則がある。ここでも、本当に必要なホームレスにフォーカスしてアパートを与えるなどの常識外れとも思える大胆な施策を行うことが最も有効であると主張する。その準備にかかるコストは、ホームレスの問題を見て見ぬふりをするために、ホームレスと思われる全体の人たちにかけている費用の累積よりもはるかに少ない。都度対処するのではなく、問題を一気に解決することが最も効率が良いという、意思決定の原則を示してくれている。

ところで、本書は勝間氏による翻訳。
あれだけ多忙な生活の中で、このような翻訳業にも時間を割いているという、彼女のワークバランスにも驚かされる。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ Tina Seelig

阪急コミュニケーションズ 2010-03-10
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「あなった自身に許可を与える」という一貫したコンセプトで、読者の自己啓発を試みた一冊。
常識を疑い、世の中を新鮮な目で見て、失敗を受け入れ、自分で道を切り開く、そのために必要な許可を自分自身で与えることができるかどうか。
このことに気付いた人は、新しいレンズを通して世の中を見ることができ、一歩高いステージの上で人生を歩むことができる。ぜひ、このことに20歳のときに気付いてほしい、というメッセージ。

訳書ですが、日本語も素晴らしく、本書にちりばめられた多くの言葉の中に、読者の琴線に触れるものがいくつかはあるはず。

・ ルールを1000個教えられるよりも、やってはいけないことを3個だけ教えられるほうが自己裁量は大きい。ルールと助言は違うもの。
・人間は、自分のやりたいことを許可されるのを待っている人と、自分自身で許可する人にわかれる
・ 個々人でみると、成功と失敗の比率は同じ。もっと成功したいなら、失敗を受け入れなければならない。
・ 運のいい人たちは、どちらかといえば外交的。人と会うときは、相手の目を見、笑顔も絶やしません。運のいい人たちは、楽天的でもあり、自分にはいいことがおきると思っている。
・ 自分に対しては真面目すきず、他人に対しては厳しすぎないこと。間違いに対して寛容になって、失敗も学習のプロセスと考える。

ただ、自己啓発という点では、個人的にはやはり「7つの習慣」や「人を動かす」といった本にはかなわないかなぁといった印象。ページ数は本書のほうが圧倒的に少ないので、さらっと読みたい方にはお勧め。

7つの習慣―成功には原則があった!7つの習慣―成功には原則があった!
スティーブン・R. コヴィー ジェームス スキナー Stephen R. Covey

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人を動かす 新装版人を動かす 新装版
デール カーネギー Dale Carnegie 山口 博

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経営史

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経営史 (日経文庫―経営学入門シリーズ)経営史 (日経文庫―経営学入門シリーズ)
安部 悦生

日本経済新聞出版社 2010-03
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香料や毛織物が戦略的製品としてもてはやされ、それらを生産できる国、貿易のかなめとなる国が、国力を築き、経済上・軍事上に優位に立っていた15世紀。イタリアやポルトガル、アラブ諸国が繁栄した時代。

18世紀の第一次産業革命では、機械化によって綿織物を効率的に生産できるようになったイギリスが優位に立ち、製鉄の発展により木炭を原料とした大量輸送鉄道が構築され、蒸気期間によってエネルギー革命がもたらされた。

その後のアメリカでは、ベルトコンベアに代表される大量生産システムが構築され、広大な土地に鉄道網と電気網を敷設されることで、インフラが格段に成長した19世紀の第二次産業革命。リアルタイムな通信が可能となり、場所と時間制約が大幅に縮小した時代。鉄道、化学、鉄鋼や石油が戦略的な製品の代表でした。

その後、国際競争が激化する中で、トヨタ生産方式など、日本式のきめの細かい経営資源配置方式がもてはやされた時代がやってきます。
インターネットが敷設され、コンピュータ関連企業が大きな経営基盤をもつようになり、エレクトロニクス革命・IT革命と呼ばれる、ハードからソフトへの価値シフトが20世紀には起こりました。

本書では、15世紀から21世紀にいたる産業構造の変化を、その経緯を変化の理由・裏づけとともにわかりやすく説明されています。良く歴史を勉強している人にとっては優しすぎるかもしれませんが、ちょっと将来を考えてみたい30代のビジネスマンにとっては良書だと思います。

「愚か者は経験に学び、私は歴史に学ぶ」
と、19世紀のドイツの政治家のビスマルクは言ったそうです。

私たちメーカーでモノづくりをする立場としては、これから10年後、20年後、50年後に世の中がどのように変わっていくのかを常に模索し続けなければなりません。

人々の嗜好はどのように変化するのか、産業構造はどのように変化するのか。

ちょっと広い視野で将来を見据えるには、過去に発生した変化とその理由から、アナロジーを見出すというのも一つの有効なアプローチではないでしょうか。

ひとめあなたに... (創元SF文庫)ひとめあなたに... (創元SF文庫)
新井 素子

東京創元社 2008-05-29
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先日、勝間和代氏がTwitter上でフォロワーたちと「好きな作家・作品」について公開議論した際、多くの啓発本やビジネス本が紹介される中、「新井 素子」さんの本が多く推薦されていた。

彼女の本を読んだことがなかったので、夏休み用に手に取ったのがこの本。

偶然にも、直前によんでいた「終末のフール」と全く同じ背景。
隕石が衝突して地球が終わってしまうというSF小説。

突然、ニュースから、あと一週間で地球が滅んでしまうことが告げられる。
残された時間で何をするのか。
その答えは、人によってさまざま。

全く意味のない殺人や略奪を行う人。
とにかく当てもなく逃亡を行う人。

そんな中、主人公の女子大生は、ただただ、鎌倉に住む彼氏のもとへと歩いていく。
彼女のとった行動は、とくべつ情熱的なものでもなく、奇をてらったものでもない。
ただ、素直に、彼女の世界観の中で、彼女なりに、今やるべきこと実行し、自分の人生、そして世の中の終わりに直面していく。

女性的な語り口調で散文的に主観的に進められる物語は、客観的にパニックを描いたものよりも、むしろリアリティが強く感じられる。
29年前に書かれた作品とは思えない、普遍的な新しさがそこにはあります。

終末のフール

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終末のフール (集英社文庫)終末のフール (集英社文庫)
伊坂 幸太郎

集英社 2009-06-26
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「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年がたった日本のとある町が舞台。
SFによくありがちな設定だが、国としての様々な機能がシャットダウンしていく様や、略奪や犯罪によってパニックに陥る様子はほとんど描かれていない。

自分の人生が強制的に終わらされることを、事実として受け入れながらも淡々と暮らす人々の群像劇に焦点を絞った短編集。

登場する人々は、それぞれに「絶望」、「復讐」、「希望」、「愛情」を表現しながらも、前を見据えて「生きる」ことを選択する。

時間が限られてしまったとしても、生活の密度が急速に凝縮することはなく、ただ人と人とのつながりが、よりはっきりと浮かび上がってくる、そんな世界観が描かれている。

マクロ経済学入門 (日経文庫)マクロ経済学入門 (日経文庫)
中谷 巌

日本経済新聞出版社 2007-01
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日経文庫はいいですね。
一見、難しい話を、ほんとうにわかりやすく説明してくれます。
その内容もさることながら、明確なターゲッティングと、段階的な説明という、わかりやすい文書の構成を学ぶ上でも本当に役にたちます。

本書は、「マクロ経済学」を、多くの(適切な)仮定のもとに解説し、経済の大きな流れを理解してもらおうという試みで書かれています。
多くの数式は登場しますが、ゆっくりと読み進めていけば、中学から高校レベルの数学でも、十分についていくことができるレベル。

GDP=内需+外需=(消費+投資+政府支出)+(輸出-輸入)

GDP=家計の取り分+企業の取り分+政府の取り分

消費=基礎消費+限界消費性向x(所得-税金)

投資は利子率の減少関数

このような基本的な理解からはじまり、フィリップス曲線を使ったインフレ理論などが説明されます。

エンジニアの私にとっては、しっかりと頭で理解して、自分の身とするには、もう少し時間がかかりそうですが、世の中の仕組みを理解しておくことで、ニュースなどの記事から得られる情報は、倍増してくるはず。

販売数を増やすために「わかりやすさ」を目的としたような類の本とは異なり、かかりやすく経済学を理解することに真面目に主眼をおいた、しっかりとした入門書です。

ポーターを読む (日経文庫)ポーターを読む (日経文庫)
西谷 洋介

日本経済新聞出版社 2007-04-14
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経営学の名著「競争の戦略」の著者 マイケル・E・ポーター。
不況にあえぐ中、その堅実かつ適切な理論に救いをもとめて、ドラッカー同様、彼にも注目が集まっています。
そんな彼の著書は、いずれも、内容が濃くて、素人には敷居が高いものばかり。
ある人に言わせれば、その理論は、あまりに緻密で繊細なものらしいのですが、そのすべてを理解するには、あまりに時間が足りません。

この本は、彼の理論のエッセンスがしっかりと詰まった入門書になっています。

多くの経営者が、事業低迷の要因を、オペレーション効率の改善などの内部統制に気を取られすぎていることに対し、事業のポジショニングに要因があるとポーターは説いています。

本書では、ポーターの考え方の根幹ともいえる事業ポジショニングのための5つの競争要因を、ケーススタディを通じて、しっかりと学ぶこともできるという、充実した1冊。

ほかにも、「クラスター」と呼ばれる、地域的に集中した事業体の密な情報交換によって生まれる高い競争力についての理論についても述べられています。
世界がフラット化する現代においても、健全なクラスターが生み出すのは単一企業の収益だけではなく、その地域を形成する国の競争力であるという「国の」競争原理についての説明は、説得力があります。

最近は研修等で、いろいろな経営者の考え方を学ぶ機会がありましたが、しっかりと先達の教えを理解しておくことは重要なこと。

何度か読み返すことにもなりそうな良書のひとつです。

伝える力 (PHPビジネス新書)伝える力 (PHPビジネス新書)
池上 彰

PHP研究所 2007-04-19
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最近メディアへの露出がすごい増えている池上さんの著書。

難しいこと・専門的なことを、相手に合わせてわかりやすく伝えることのプロフェッショナルによる「伝える技術」の指南書。

「話す」「書く」だけでなく、コミュニケーションを深めるためには「聞く」ことも大切だと説く。
NHK時代の「週間こどもニュース」で、子供にも分かるように時事ネタを説明することで「伝える力」を培ったという池上氏。

「自分がわかっていないと、人に正確に、わかりやすく伝えることは不可能です。」

子供に理解してもらうためには、物事の本質を十分に理解したうえで、対象である子供がどこに興味を持っているのか「聞く」ことも大事なことなのです。

本書では、プレゼンテーションや、スピーチで、相手の心をつかむテクニックをはじめ、ライティングの注意点なども広く浅く述べられています。
どのテクニックも、奇をてらったものでもなく、当り前のことのようにも思えるため、一見、物足りなさを感じてしまうのですが、これらを着実に実行するのは、そう簡単なことではありません。

「簡単なことは簡単に」「難しいことも簡単に」
これは何かを伝えるときの基本です。

戦略の断層

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戦略の断層――その選択が企業の未来を変える戦略の断層――その選択が企業の未来を変える
古我 知史

英治出版 2009-12-15
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かなりヘビーな1冊ですが、読みごたえは抜群。

企業がとるべき戦略は、企業の位置づけや成長過程のステージによって異なる。
起業時から成長後にいたるまでの、それぞれの企業のステージを、華道からネーミングした 備・突・構・攻・守・破・離の7つのステージにわけて解説する。
いずれのステージも、既存の日本企業を例としたケーススタディが充実していて、とにかく具体的。
企業の成長過程を追いながら、企業戦略を考える上で基本となるフレームワークを学べることが狙いである。

この本だけでは、現代の複雑な企業環境をとりまく、もやっとした霧を晴らすことはできないかもしれない。
しかし、何事にも基本は大切。明るい未来に向けて、立ち向かうだけの知識の第一歩くらいにはなるかもしれない。

各ステージを通じて学ぶことのできる、戦略概念やフレームワークは次の通り。

「備」:備えるという行為は、「戦略着眼」からはじまる
重点思考、仮説思考、MECE、演繹法と帰納法

「突」:参入とは「尖がる」ことである
ニッチ戦略、ポーターのバリューチェーン、戦略主体

「構」:足固めのための「ぶれない戦略方針と軸足と体制」
競争優位戦略、PDSなどの検証スキル、3C手法, マッキンゼーの7Sフレームワーク、セグメンテーションとターゲッティング

「攻」:事業を一気に成長させるダイナミックな取り組み
PPM、事業拡大マトリクス、機能戦略、事業部制

「守」:成長に代わって持続力の獲得がテーマ
ROIC、経験曲線、規模と範囲の経済、コストリーダシップ戦略

「破」:産業全体の枠組みを超えた視点で戦略を構築しなおす
SWOT、5つの力、V字カーブ、M&A、戦略的提携

「離」:イノベーションを起こす
破壊的イノベーション、コアコンピタンス、マーケティングミックス


戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
三枝 匡

日本経済新聞社 2002-09
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BCGでのコンサル業務、ベンチャー投資、大企業でのサラリーマン、そしてミスミの社長という多様なキャリアを持つ三枝氏による実話をもとにした経営戦略物語。

MBAを取得した若手の大企業社員が、ある日突然、経験のない医療機器業界の子会社へ取締役として出向になる。その会社を立て直し、利益を上げていくまでの過程を描き、企業戦略とは何であるかを学べるという趣旨。
ともすれば概論に終わってしまいそうなコンサル本とは違って、実話をもとにしているだけあってリアル感にあふれているところが良い。
題材自体はちょっと古いので、本書の中で企業のとる戦略そのものには斬新さはないが、その思考の過程はとても役に立つ。
三枝氏の熱い思いがいたるところから伝わってきます。

Amazon等での評判もとても良いようですが、自信をもって人に勧められる本です。
組織の一員という役割を超え、会社のことを考え始める30歳前後で、出会っておきたい1冊です。

ユニセフ・カンボジア事務所で働くユニセフ・カンボジア事務所で働く
藤原 幸恵

明石書店 2006-11-10
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何かを成し遂げたいとか、幸せに日々を過ごしたいとか。
人が生きる意味にはいろいろあると思うけど、人のために何かをしたいというのもその中の一つ。

恵まれすぎた国日本に生まれて、何か海外で人助けができないだろうかと考える人もきっと多いと思います。

この本の著者もその一人。
一人のOLが、途上国での国際貢献を目指し、奮闘する様子がとても具体的に描かれている。

著者の場合は、教育分野での貢献をターゲットとし、会社をやめて教育に関する学位と語学力をもとめて海外へ留学するところから始まる。
その後ユニセフへ入り、カンボジアで国連若手職員として農村開発の業務につく。
本書では、その過程やユニセフの組織構造、現地での仕事の詳細、仕事を通じで出会った意識の高い同僚たちとの交流が細かく説明されている。

この仕事に興味がある人にとっては、とても貴重な情報源となることでしょう。

国際貢献といえば聞こえはよいですが、命の危険にさらされる危険な仕事であることが、リアルに伝わってくる。だが、その分、仕事から得られる満足度も大きいはず。

その勇気と実行力は本当に素晴らしいと思います。

カンボジアの子供たちの笑顔はとてもすばらしく、生き生きとしていた。また、カンボジアの農村の暮らしはのんびりとしていて、時にはうらやましいとさえ思った。彼らの時間の感覚は日本人のものとはだいぶ違う。いつしか私ものんびり構えるようになった。


忘れ雪

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忘れ雪 (角川文庫)忘れ雪 (角川文庫)
新堂 冬樹

角川書店 2005-02
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いわゆる裏社会ものなどの、ダークな小説が多い新堂 冬樹氏による恋愛小説。

一匹の犬を中心に流れる7年という時間を越えてすれ違う男女の切ない恋物語。

「春先の雪に願い事をすると叶う」というセンチメンタルな背景と、サスペンスとしての人間ドラマとのギャップが面白いのだが・・・。

獣医に関するディテール名取材をもとにした描写は、リアリティがあって読み応えがあるのだが、前後半でストーリーの流れるスピードがあまりにも違いすぎて、違和感があったりもする。

次は著者の別の作品も読んでみよう。

健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ
畔上 司

草思社 2004-01-22
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体重超過の人のほうが、正常な体重の人のほうが早死にする
牛乳をのむと骨粗鬆症になりにくい
コレステロールと動物性脂肪が動脈硬化の原因になる
アルコールは体に悪い

通説として当り前のように認識されている健康に関するこういった知識を、本書では、データと研究結果を用いて否定していく。

適正体重が体によいというのは本当だろうか?そもそも「適正体重」自体が、保険業界や健康ビジネスによって恣意的に作られた数値だとしたら?実は、長生きすることができるための体重というのは、私たちが考えているよりもずっと高いところにあるという。

飲みすぎは良くないとされるアルコール。しかし、過度のアルコールには、肝臓病を引き起こすというデメリットだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの病気を未然に防ぐというメリットも多い。むしろ、メリットのほうが大きいという結果もあるという。

では、いったい、何を食べればよいのか?
健康ってそんなに大事なのか?
豊かな食生活はどんな価値を与えているのだろうか?
人間が生きていく上での基本的なところだからこそ、悩ましい。

皮肉たっぷりに通説を否定する著者は、わかりやすいコンセプトを示してくれる。

「自分の食欲に忠実になりなさい。」と。

3D立体映像がやってくる−テレビ・映画の3D普及はこうなる!−3D立体映像がやってくる−テレビ・映画の3D普及はこうなる!−

オーム社 2010-04-28
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3Dブームがきていますね。最近は映画もテレビも、3D一色。
コンテンツはまだまだこれからですが、少なくともインフラは揃いつつある感じ。

急に話題になり始めている3D技術ですが、その方式の種類は多く、実はずいぶん前から技術は実現されてきていました。
最近主流になりつつある、眼鏡を使ったものだけではなく、古くは赤と青のフィルムを使ったアナグリフ方式や、近い将来には実現されそうな眼鏡を使わないパララックスバリア方式など。

本書では、広く浅く、3D技術方式について触れられています。
歴史に始まり、将来のビジネス展開に至るまで。

技術書というよりは、幅広いターゲットを狙った入門書的な位置づけです。
ちょっと物足りない気もしますが、うまく整理されているとも言えるかもしれません。

参考までに、過去そして未来にわたって存在する様々な3D方式の名称をリストアップしておきます。

偏光フィルタ方式(IMAX, RealD, エックスポール)
時分割方式(XpanD)
波長分割方式(Dolby 3D)
カラーフィルター方式(アナグリフ, ColorCode3D, TrioScopics3D)
絶縁隔離方式(ステレオスコープ方式, ヘッドマウントディスプレイ)
視差分割方式(パララックスバリア方式, レンチキュラー方式, バックライトコントロール方式)
空間像表示方式(インテグラル方式, ホログラフィ)

いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」 (アスカビジネス)いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」 (アスカビジネス)

アスカ・エフ・プロダクツ 2010-04-12
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Google. Twitter, Wikipedia, ...
ネット経由で入手可能な情報が膨大になり、情報を集めるということは特別なスキルではなくなってきている。
それらの情報を使って、価値のある結果を出すためには、調べる技術だけではなく調べる力が必要になってきている。ネットだけの力にたよらず、リアルな世界にある情報を駆使して、差別化していくことが求められているのではないか、というのが著者の主張。そうすることで、プレゼン力、企画力、発想力の向上につながると。

全体を通じて著者の考えと共感できるところが多く、楽しく読むことができた。

従来WEBは、あるものを特定していくことに長けている。
調べたい事象がはっきりとしていると、WEBの検索技術を使えば、その答えや糸口を見つけることは本当に容易になった。

最近では対象物が明確でなくても、画像をつかった検索や、情報の鮮度を利用したフィルタリング、Twitterなどによる人間同士のコミュニケーション利用など、多彩な情報調査方法が実現されている。
しかし、それでも、実際に人と会って話を聞くことや、実際のその場所に足を運んで得られる情報には、ネットでは得られない貴重な情報が多く存在している。

相手の話し方や表情からは、その情報の確からしさを見極めることができるだろうし、お店で商品を手にしながら話している人の声からはリアルなマーケット情報を手に入れることができるだろう。

時間は有限である。

しかし、ネットで調べることに終始せず、その限られた時間のなかで、リアルな情報とネット検索をうまくミックスしていくことが求められている時期なのかもしれない。

最強確率論

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最強確率論-「絶対無敗」の法則 (学研新書)最強確率論-「絶対無敗」の法則 (学研新書)

学習研究社 2010-03-17
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確率うんぬんというタイトルにひかれて手にとりました。
著者の石橋達也氏は、パチンコをしたことがある人ならだれでも知っているという、ギャンブル界では超有名なパチプロのひとり。

パチンコなどのギャンブルにかぎらず、あらゆる事象は確率が支配しいている。
確率をしることで、世の中のいろんなことが見えてくる。

といった内容。
うーん、確率という言葉に拒絶反応を示す、新しいターゲットにはよいかもしれないけれど、
理系視点でみると、タイトルと比較して、ちょっとチープな内容かなぁ。

「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本

東洋経済新報社 2008-01-25
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とってもわかりやすい会計の本。
タイトルにある「1秒で」というのは、ちょっと煽りすぎの感はありますが、確かにわかりやすい。
多くの具体例をあげながら、貸借対照表と損益計算書を読むポイントを説明してくれています。

とはいえ、ROA、ROE、純資産調達コスト、キャッシュフローなどの用語が、わずかな説明だけでもって、普通に文章に点在しているので、多少の予備知識は要求されるかもしれません。

また、作者として、伝えておきたいポイントがあまりにも多いためか、それとも簡単なことばと表現のみで多くの会計概念を伝えようとしているためか、ところどころ話が発散しているように思える部分もあります。

とはいえ、よくまとまっているので、簿記の勉強をする前に、広義の会計概念を身につけるために読んでおきたかったなぁと思わされる一冊。

後半では、作者の意思もいえる、政府の金融政策に対する提言なども多数あり、読み物としてもうまくまとまっている気がします。

ベンダー・マネジメントの極意―プロジェクトを成功に導く外注管理ベンダー・マネジメントの極意―プロジェクトを成功に導く外注管理

日経BP社 2009-07
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購入してから半年近く、未読本の山に積まれていた1冊。
もっと早く読んでいればとちょっと後悔・・・。

というのも、この本、なかなかの秀作。

業務委託が当たり前のように行われているソフトウェア開発業界・IT業界において、ぜひ知っておくべき極意がぎっしりと詰まっている。
「極意」とはいえ、ひとつひとつは当然ともいえる内容。

後悔をしないためのベンダーの選び方
遅れを発生させないための効果的な進捗確認の方法
「言った」「言わない」が、裁判等へ発展しないための合意形成の方法
損をしないために加えておくべき契約書の書き方

ベンダーをうまく管理しつつ仕事を推進していく上では、当り前の内容ではあるけれど、めまぐるしく動く現場において何も参照せずに、最適の行動をとることは難しい。
ここまでぎっしりと、その当たり前のことが詰まっているところに、極意というタイトルに負けない重みがある。

そして、ハンドブックとして手元に置いておきたくなるような具体的な記述が多いこともうれしい。

進捗の確認のためのヒアリングの項目
業務委託で発生するコストのチェック項目
変更要求をやりとりするための抜けのないテンプレート
RFPに記述すべき共通の項目

などなど、すぐに業務に使えるような項目が満載なのである。
日本のベンダだけでなく、海外のオフショア先を相手にしても使えそうな情報もしっかりと抑えてある。

ベンダーと直接契約を交わし、管理を行うマネージャレイヤだけでなく、リーダーレベルの人も知っておくべき極意にあふれた本。


卒業 (講談社文庫)卒業 (講談社文庫)

講談社 1989-05-08
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「新参者」にも登場する、敏腕刑事加賀の学生時代を舞台にした推理小説、。

大学の剣道部と茶道サークルを中心に巻き起こる学生たちの不審死。

東野作品の中でも、本格推理の部類に含まれる硬派な構成で、小説単体としても面白い。

加えて、シリーズにもなっている加賀刑事の過去を知ることができるという側面が、この本のもう一つの魅力。
TVドラマ「新参者」を見ている人も、このシリーズの原点ともいえる本書は要チェックかもしれない。

あらすじで大づかみ『源氏物語』と平安文学 (講談社+α文庫)あらすじで大づかみ『源氏物語』と平安文学 (講談社+α文庫)

講談社 2008-06-19
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中学時代にその名前を聞いたくらいで、その中身をほとんど知ることのなかった「源氏物語」。

平安時代の女性作家によって書かれた恋物語というくらいの前知識しかなかったのですが、このあらすじ本のおかげで、その内容を知ることができました。

超モテ男の源氏が王朝内で繰り広げる、さまざまな女性との情事。
ただの恋愛物語という枠を超えて、結婚や出産、出世、そして家同士の闘争など、当時の社会事情や男女文化を知ることもできる壮大な物語であることに気づかされます。

本書では、登場する女性を個別に紹介したり、娘を位の高い家に嫁がせようと躍起になる父親を紹介したりなど、読者になじむように、独自の切り口で源氏物語を説明してくれています。

現代でも共感できるものも多く、古典文学がとても身近に感じられます。

さらには、源氏物語以外の、多くの平安文学についても、簡単に内容を紹介してくれるというおもてなしもうれしいところ。 内容は全く知らなかった 『宇津保物語』『落窪物語』なども、なかなか面白そう。

日本人である以上、たとえあらすじだけでも。、こういった名作に一度は触れておくのもありかもしれません。(残念ながら原文に挑むほどの素養もないので・・・。)

経済は感情で動く―― はじめての行動経済学経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
泉 典子

紀伊國屋書店 2008-04-17
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非常にわかりやすくかかれた行動経済学の本。
初期の経済学では、人そして市場は合理的に行動するという前提で、経済活動の計画と予測が行われていた。しかし、人間は、そんなに賢い生物ではない。

脂肪分5%のヨーグルトよりも無脂肪分95%のヨーグルトが好まれるし、

100人の進む先に、99人が助かる道と1人が危険な目にあう道があると、人は99人が助かる道を選ぶ。

そして、A,Bから好きなほうをえらぶことができても、A,B,Cと選択肢が増えると、Cが明らかに他より劣っていたとしても、人は迷って選べなくなる。

人は、自分の都合のよい面だけをみて選択をする傾向があり、多くの選択肢があると選択できなくなり、過去の選択の結果(後悔や成功)にも大きく影響をうける。3つの選択肢があると、真ん中を選びたくなる。
自分の持っている者に対しては市場以上の価値を見出し、100万円を得する喜びよりも100万円を損する苦しみのほうが大きい。
その割には、あがっている株は売りやすくても、下がっている株は売りにくい。

数字のマジックとも言えなくないが、人間のこれらの行動は、全く合理的な判断ではないものである。
しかし、こういった非合理な行動が積み重なって、経済が動き、世界が動いている。

最近の研究では、これらの合理的ではない判断をしているときの、脳の活動などのデータ採取も進んでいて、人が合理的でない判断をしてしまうロジックも明確になりつつあるらしい。

さまざまな事例をもとに、なぜ人がそんな判断をしていまうのかを、心理学ともくみあわせてとてもわかりやすく解説した良書。
コミュニケーション、マーケティングなどの分野にも共通する解説も多く、中で触れられている理論は知っておいて損はない。

自分への備忘のためにも、いくつかのキーワードをメモしておこう。
選好の逆転(preference reversal), 保有効果(endowment effect), サンクコストの過大視(overestimate of sunk costs), コンコルドの誤謬(mistake of Concorde), アンカリング効果(anchoring effect), 少数の法則(law of small number), 平均値への回帰(phenomenon of regression to the mean), フレーミング効果(framing effect), 損失回避性(loss aversion), 省略の誤り(false of omission), 後悔回避(regret aversion), プロスペクト理論(The theory of Prospect), ポートフォリオ理論(The portfolio theory), ピーク・エンドの法則(peak-end rule), ゲーム理論(Theory of Game), ソマティック・マーカー仮説(somatic marker hypothesis)

口のきき方

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口のきき方 (新潮新書)口のきき方 (新潮新書)

新潮社 2003-09
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しゃべりのプロである元アナウンサーの梶原氏による「言葉の使い方」に関するエッセー。

しゃべり言葉というのも重要な文化であり、守るべきものと変わっていくべきものとがあると個人的には思います。

本書では、変わっていくべきでないしゃべり言葉を中心に、テレビなどのマスコミによる弊害や、スマートに見える口のきき方について触れらています。

テレビで多くの芸人が発する言葉を、言葉を汚しているとみるか、新しい文化の発信ととらえるのかは、難しい課題なのかもしれません。

読み物として、すぐに読めてしまいますが、実用性は高いのかも。
日々の会話の中で、次のような言葉を使っている人は、注意してみてはいかが?

「私的/俺的には・・だけど。」
「海とか行きたいね。」
「てゆうか」「ぶっちゃけ」
「いちおう・・・なので」
「とりあえず・・・お願いね」
「わりと・・・だね」
「なにげに」
「・・・系」
「・・・状態」
「・・・のほうは(いかがでしょうか)」(ほうほう症候群というらしい。お釣りのほうは?ご注文のほうは?)
「・・・というかたちで」
「(こちら)・・・になります」
「こだわりの・・・」(こだわりは悪い意味で使うことが多い)

地学のツボ―地球と宇宙の不思議をさぐる (ちくまプリマー新書)地学のツボ―地球と宇宙の不思議をさぐる (ちくまプリマー新書)

筑摩書房 2009-02
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出張中の乱読書の一つ。
地学に関する本は初めてかもしれない。
高校で習うようなレベルの内容を非常にわかりやすく解説されており、加えて最近の研究の内容なども適切に情報追加されていて、好感触の一冊。

火山の噴火、海水温度の上昇、地震、日々の気温、地形形成、生命の誕生、植物の発達、恐竜の滅亡、地球の寿命・・・
この星で起きている地球規模の様々な出来事は、ほとんどが「地学」にひもづいていることがよくわかる。

なんとなく知っていた、地球の構造。
核があり、マントルがあり、プレートで覆われているのが地球。
そこには、プルームテクノニクスという考え方がある。
地球上のプレートが衝突しながら沈み込んでいくと、そのプレートは融解し蓄積し、地球の中心部へと流れおちていく。こうして、地表で冷えたプレートが中央に下降するのが、コールドプルーム。
その反作用として、核から高熱のプルームが地表へ流れだすことになる。これがホットプルームである。

現在は南太平洋やアフリカ大陸へホットプルームが流れ、ユーラシア大陸の両サイドではプレートが沈み込んでコールドプルームが生じているらしい。ハワイもホットプルームの産物のひとつである。
これら両方のプルームが、地球サイズで循環することで、プレートの動きが活性化され、各地で地震や火山噴火、地殻変動などの現象が起きるのである。

40億年を超える地球の歴史では、こうした現象が繰り返されて現在にいたっている。
とてもスケールの大きな話だけれども、ちょっと理解が深まると、とても面白い学問のひとつ。

プルームやプレートの話だけでなく、海洋循環の話、地球の歴史、宇宙の構造に至るまで、幅広く解説されています。
とてもわかりやすいので、自分の住んでいる地球について理解を深めたい方には、よい入門書かもしれません。

会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?

朝日新聞出版 2009-11-06
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百年コンサルティングの鈴木貴博氏による、企業分析のノート。
多くの日本企業が、なぜ、こんなに苦しんでいるのかを、経済学の基本原理を説明しつつ、さまざまなデータと共に紹介している。
リーマンショック後に、書かれたものなので、情報は割と新しく、納得のいくものが多い。

トヨタがリストラを敢行し、企業規模を縮小しているのは正しいのかどうか
セブンイレブンが生み出した、小売業の付加価値の重要性
不況時のマクドナルドや薄型テレビの低価格戦略
迷走するJALが抜け出せない高付加価値高価格戦略

具体的な企業の事例をもとに、所得弾力性や価格弾力性といった、基本的な経済指標を学べる点もうれしい。
そして、この本のすごいところは、それぞれについて、著者なりの、明確な解を提示しているところ。

複雑な経済社会においては、物事はそんなに単純に解決はできないかもしれないが、基本原則は普遍のはず。本書には、多くのヒントが込められている。最後の章に書かれたメッセージが印象的だったので、ここに引用しておきます。

経済成長は、国民の野望や欲望がドライブするものである。
いくら暗い時代でも野望を捨てない者だけが、経済を牽引してく力を持つ。
「豊かな者がなるべくお金を使うようにする」

内容もさることながら、何よりも著者の切れ味のよい表現が気に入りました。
難解な経済学を、わかりやすく説明することは困難。しかし、この本は実にわかりやすい。
100を知る人が10を伝える余裕というものが感じられる気がして、文章にもその余裕が感じられます。

あとがきにも触れられていますが、

より多くの人の人々に伝えるために、結論が同じならばより単純な説明を選ぶ

というスタンスが随所に見られます。
この考え方は、難解なものを文書にして説明するときだけではなく、ビジネスの現場においても広く使えるはず。本書の内容とは直接関係はありませんが、大切なメッセージを受け取った気がします。

カッコウの卵は誰のものカッコウの卵は誰のもの

光文社 2010-01-20
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久々の東野圭吾小説。

スキー選手の父娘を中心とした複数の家族の間に存在する、複雑な関係。
娘の母親にはどのような過去があったのか、最先端のスポーツ医学は何を明らかにしていくのか・・・。

いつものようにさくさくと読み進めるのは良いのだけど、本作は、私にとってはイマイチな感想。
最終章で、強引に話をまとめた感もあるし、読み終わった後に、ちょっと違和感が残る感じ。

それにしても、「カッコウの卵は誰のもの」という、好奇心をそそるタイトルのネーミングは絶妙。
もともとは「フェイク」というタイトルだったらしいですが、それと比べると、内容をうまく象徴した内容になっていると思います。加えて、「売れる」タイトルになっている気もしますね。

笑う脳

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笑う脳 (アスキー新書)笑う脳 (アスキー新書)

アスキー・メディアワークス 2009-08-07
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そのタイトルとは対照的に、しっかりと真面目に「笑い」について考察した本。

「この地球上で笑うことができるのは人間だけである」という一節からもわかるように、笑いというのは非常に高度なコミュニケーション手段である。

本書では、さまざまな人との対談をもとに、「笑い」をさまざまな視点で科学していく。

最近は、テレビをつけると笑いがあふれ、他人から強制的に笑いを押し付けられることは多くなってきている。一方で、自分たちで笑いを作り出すことが下手になり、そのための努力を怠るようになってきたのではないかと警鐘を鳴らす。

メディアへの露出も多い茂木先生の、力強い発言の裏にある、「笑い」の脳科学研究の深さを垣間見ることができる一冊。

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
伏見 威蕃

日本経済新聞出版社 2008-01-19
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この10年で世界は大きく変わった。

私たちが眠っている間に、欧米や日本企業のコールセンターはインドや中国に設置されるようになり、個人のジャーナリストがワシントンポストなどの専門誌を超える価値のある情報を扱うようになり、その日の天気に応じて最適な在庫調整ができるほどのきめ細かい在庫管理が可能な時代なってきた。

情報の伝達速度が著しく上がり、地域の違いは情報格差の要因ではなくなった。まさに世界はフラットになったのである。

上下の2巻からなる本書の上巻では、フラット化させた10の要因をボトムアップで紹介している。
ベルリンの壁の崩壊、インターネットの登場、インドを代表とするアウトソーシング、UPSなどのインソーシング、ウォルマートに代表される徹底されたサプライチェーン、などなど。

いずれも具体的な企業名を題材にした、かなりしっかりとしたレポートになっている。

大きな変化の時代を迎えた21世紀l。

人々が変化にのみこまれるか、あるいは置き去りにされないように変化を吸収するのか。
新しいグローバルなプライヤーが次々と生まれてくる中、企業は生きぬくために何をしなければならないのか。インドや中国から大量な労働力が放出された場合になにがおきるのか。

米国や日本の一部の労働者は、フラット化によって水平に移動しなければいけないかもしれない。しかし、経済競争はゼロサムゲームではない。
プレイヤーの登場と同時に、複雑ではあるが、とてつもなく大きな市場が広がったことも忘れてはいけない。
自分のパイを守ろうろするのではなく、自分と自分の社会が複雑で大きなパイを得られるように、事業の投資を判断していくことで、このフラットな時代に適した新しい事業が生まれてくるはずだ。

著者のフリードマンはいう。

生まれる産業も、始めるビジネスも、やる仕事も無限にある。人間の想像力だけがそれを制約している。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
伊豆原 弓

翔泳社 2001-07
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数年ぶりに再読。
良い本は、読むたびに新しい発見があります。

市場を開拓し、会社にとって新しい利益の原泉となる可能性のあるイノベーティブかつ破壊的な技術が、安定した大企業から生まれることはほとんどありえない。
それは、合理的な投資ではないからである。
その理由は3つ
1. 破壊的な製品は利益率が低い
2. 破壊的な製品が商品化されるのは小さな市場
3. 企業にとって収益性の高い顧客が、破壊的な製品を求めないこと

合理的なプロセスで運営されている企業であればあるほど、上記のような場面では合理的な判断として、投資を否定することが正しいプロセスとなる。ここにジレンマが存在する。

本書では、多くの具体的なケーススタディをもとに、持続的技術を追い続けた企業の多くがいずれ衰退し、破壊的技術にチャレンジした新興企業が成功した事例をとりあげている。

そして、そこから得た経験則をまとめ、企業が破壊的技術にとりくむためのポイントをとりあげている。

新しい市場の成長率を押し上げる
市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ
小規模な組織に小さなチャンスを与える(能力のある人材を能力のある組織に割り当てる)

本書の初版が書かれてから、9年近くの月日がたつが、その内容はまったく色あせることはない。

海外企業の低コスト戦略への抵抗に苦しむ、多くのメーカーの経営者やエンジニアが今もまさに悩んでいること、そのものズバリがここでは述べられている。

(最近は別の品質話題で賑わっていますが、)ハイブリッドカーを成功させたトヨタや、iPhoneを世に送り出したアップル。
少なからず、このジレンマを乗り越えた企業も存在する。

この本と、これらの企業の事例から学べることは多いはずだ。

ブリッジマンの技術 (講談社現代新書)ブリッジマンの技術 (講談社現代新書)

講談社 2008-12-17
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日本人同士で話をしていても、以外とコミュニケーションについての課題は多い。
実際、私たちのまわりでも、マーケティング部の人間とエンジニアとの会話がかみ合わなかったり、高齢者の方とはうまく表現に気を使わないと意思疎通が難しかったり、というケースが多い。

それらは、考え方の枠組み(フレームワーク)が違うからだと、火山学者である著者は述べる。
そして、それらのコミュニケーションを円滑に進める、「フレームワークの橋渡し」ができる人たちのことをブリッジマンと定義している。

たとえば、国会答弁の会話や、特許の請求項などに書かれた言葉は、常人には理解しがたいものがある。それは表現の枠組みが違うからだと考えれば納得できる。

この枠組みの違いを乗り越えるために、この本の中では、まず相手を知る方法、そして自分を変える方法が述べられている。

人間は自分の見たいものしか見ようとしないという、心理学でいう「認知のバイアス」がある。
それゆえに、コミュニケーションがうまくいかないのは自然なこと。

コミュニケーションがうまくいかない場合に、相手が少しでも考えを変えてくれれば、と思うのが普通である。
しかし、このバイアスを理解していない相手に対して、考え方を変えようとするのは解決策にはならないことがほとんど。
状況に応じて「少しだけ自分を変える」というのが、ブリッジマンとしてのコミュニケーションの鉄則らしい。

なるほど、「少しだけ」というのがポイント。
フレームワークの部分だけ、自分の性格や好みのことはおいておいて、一時的に相手に合わせておけば、あとは自分のスタイルでのコミュニケーションができるはず。

わかりやすくて、実践的なヒントがちりばめられた一冊。
相手に変わってほしいと悩んでいる人は、一度目を通してみては?

ソニー VS.サムスンソニー VS.サムスン

日本経済新聞出版社 2009-08-06
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家電業界の2強であるソニーとサムスンについて、韓国人の著者が鋭く分析をした書。
ひとことで、成功、失敗と語れるほど単純な話ではないが、ここ数年のソニーとサムスンの優劣を分けた理由が客観的かつ明晰に分析されている。

両社の違いは、3章のタイトルにもなっている「デジタルドリームキッズと刺身屋」ということばに象徴される。
時代を切り開くコンセプトメーカーとして、アナログ時代からいち早くデジタルエンターテインメントの世界へ移行しようとしたソニー。そして、半導体を刺身にたとえながら、徹底した生産管理と在庫削減で効率化を追求したサムスン。

21世紀の時代という舞台で、両者の戦略の結果は、明確な優劣となって現れた。
その理由の多くは技術力の差ではなく、人事・リーダーシップの問題であり、組織の問題であると。

アナログ時代に栄華を極めたソニーのビジネスが、デジタル化に伴って陰ってきたのにはいくつかの理由がある。
時期を逸したブラウン管工場への投資を、埋没費用として生産できず、PDPやLCDへの投資が遅れたこと。
森田氏、井深氏、大賀氏から先、適切な後継者を育てることが出来なかったこと。
グローバル企業を目指して現地化をすすめながらも、その運営は大賀氏をはじめとする一部の個人に依存し、日本的な企業活動全体がついていけなかったこと。
EVAの導入によって、カンパニーによる行投資へのインセンティブが失われてしまったこと。

一方のサムスンの特徴は明確である。
進化の流れが速い半導体の進化の中で、適切に投資を行い先行企業として、先行者利益をしっかりと価値とったこと。
イコンヒ会長と少数精鋭の秘書室の下す、軍隊的とも言える絶対的な「恐怖経営」による意思決定の速さ。
組織に忠誠心を誓い、組織文化に沿った人だけを選別する、徹底した採用人事。

上記に加えて、現在、サムスンがソニーに対して優位に立っている理由の一つは、明確な目標(ソニー)をもとに走り続けることができたからと著者は説く。
その目標を失ったサムスンが、これから先、ソニーと同じように迷走することは大いにありえる。
サムスンがソニーと同じ道を歩まないためにはどうすればよいのか、そのヒントはこの本の中にあるのかもしれない。

このレポートがまとめられた2008年以降も、驚くほどのスピードでサムスンの成長は続いている。
為替の影響を抜きにしても、サムスンはすでにトップメーカーのひとつとして、時代を切り開くことに挑戦し始めている。
この本の分析通りにサムスンが先頭を走ることができるのか、ソニーの巻き返しが始まるのか、2010年も両社の動向には注目である。

アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターンアドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン
伊豆原 弓

日経BP社 2009-10-22
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著者の定義するアドレナリンジャンキーとは、優先順位が絶えず変化し、納期まで時間が足りた試しがなく、プロジェクトはすべて急ぎ、次から次へと緊急のプロジェクトが押し寄せ、誰もが猛烈に忙しい、切迫感があることがよしとされる、そんなアドレナリン中毒の組織のこと。

仕事をする最良の方法は、計画を立てることではなく、可能な限り早く走ること。

うーん、相変わらず、デマルコの指摘は厳しい。

この本には、アドレナリンジャンキーにありがちなエピソードと、そんなジャンキーたちを少しでもよくするためのちょっとしたヒントが全部で86も、ぎっしりと詰め込まれている。

ちょっとだけ備忘録も兼ねてメモをしておこう。

「フェイスタイム」
分散プロジェクトでは、顔を合わせることが大事。確実に失敗させる方法は、コスト削減お圧力に屈して、出張を制限すること。

「永遠の議論」
多くのチームは、いかなる決定も最終的なものとは考えない。人々は賛成のときだけ、その決定に従えばよいと考えている。決定を受け入れるという倫理を確立するのはマネージャの責務である。

「かかし」
かかしは、クライアントの批判を得るために意図的に提供されるものだ。人々は白紙から答えを作ることは嫌がるが、すでにあるものは平気で批判する。

「残業に見る予兆」
残業は、いつも熱意とプロフェッショナルからくるものに見えるが、本当の原動力は恐怖であることが多い。

「まず話す、次に書く」
どれほど形式ばった組織でも、短時間で効果的に意思疎通を行うときは会話を使う。どれほど敏速な新興企業であっても、あとに残すべき決定を伝えるときは文書を使う。

「ダボハゼ」
チームが適切に処理できないほどの仕事を受けることは、マネージャとして卑劣な行為である。

Binary Hacks ―ハッカー秘伝のテクニック100選Binary Hacks ―ハッカー秘伝のテクニック100選

オライリー・ジャパン 2006-11-14
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ずーっと読みたかった本のひとつ。
「ソフトウェアの低レイヤの技術を駆使したプログラミングノウハウ」を集めたオライリー本。
ツールの使い方、プログラミングテクニック、OSのシステムコールを使った解析方法などが、幅広く列挙されています。

副題にはハッカーのためとの煽り文句がありますが、組み込みソフトウェア開発の現場ではどれも必要なものばかり。

世の中のソフトウェア開発のトレンドと同じベクトルの技術(たとえば、アプリケーションフレームワークとか)などは、書籍やWEBで目にすることも多く、技術を理解できるチャンスは多い。

一方で、この本の先にあるバイナリの世界は、ある種地味で、積極的に探さないと情報を得たり身につける機会の少ない分野。
しかし、すべてのソフトウェアに共通する根本技術でもあり、重宝される希少分野ともいえ、ある程度の規模のチームになれば、この技術を駆使できるエンジニアは重宝されることは間違いない。

この本で書かれているテクニックを、しっかりと自分のものするには、実際に手を動かしながら、じっくりと時間をかけて読み解く必要があるかもしれませんが、必要なときに参考にするリファレンスとしても十分活用できそう。

この本には、数年前に出会いたかったですね。

漂流する広告・メディア――12人のキーパーソンと語る「マス×ネット」の今漂流する広告・メディア――12人のキーパーソンと語る「マス×ネット」の今

日経BP企画 2009-12-01
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混沌としている業界のひとつ、「広告」の世界。

その広告の世界でいきる著名人が語るリアルな感覚。
TVプロデューサーおちまさと、ピンクリボンを広め中西氏、東京ガールズコレクションを成功させている永谷氏ら12名の広告マンが語る広告の世界。

そこには、テレビや雑誌のマスからネットへ、と簡単に語られるモデル転換の議論を超えた、広告の世界の奥深さが広がっています。
確かに、ネットビジネスの台頭によって、広告ビジネスのモデルは変化し始めていますが、必ずしもマス広告が終焉を迎えるわけではありません。

マスメディアに比べるとリーチが極端に短いネットは、本来の広告の意味である「広く告げる」すなわ多くの人へリーチすることが難しい。
ネット広告とマス広告は互いの特性をよく考慮して統合的に実施されるべきであり、マス広告の代替ソリューションとして語られることの多いネット広告ではあるが、決して二元論で考えるべきではない。

今後注目される、企業からの一方的な情報発信を超えた、次世代IMC(Integrated Marketing Communication)による、広告戦略とはどのようなものか、そのヒントが識者たちの会話から見えてきます。

まさに迷っているとも思える2010年の広告ビジネス。

ユーザのマス広告離れが進む現在、最適な効果を生む宣伝のビジネスモデルに生まれ変わろうとしてる、そんな大きな時代の変化を感じられる一冊です。


ミドルワールド 動き続ける物質と生命の起原ミドルワールド 動き続ける物質と生命の起原
三井恵津子

紀伊國屋書店 2009-12-03
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ブラウン運動という現象をご存知だろうか。
溶媒中に浮遊する微粒子が、ランダムに運動する現象である。

その現象を最初に発見し報告したロバートブラウンは、植物学の研究の中でその現象を発見した。
1827年のことである。

植物を通して、生命の原点と交配のなぞを追っていた中で発見された花粉の微粒子の運動(ブラウン運動)は、実は生命とは関係なく、特定の大きさの微粒子に発生する物理現象だった。
そのなぞは、それから1世紀近く後に、アインシュタインによって証明されることになる。

科学史にはブラウンの成果が「ブラウン運動」として記録が残っているが、当時のブラウン本人にとっては、きっと大きな混乱があったに違いない。
自分が信じ、研究を続けていた花粉から生じた粒子の挙動が、自分の想像をはるかに超えた現象であるとわかった瞬間、彼はいったい何を思ったのだろう。

この本では、その観測可能な粒子の運動をきっかけとして、微粒子の不確定性原理の話、原子の振る舞いの話、そしてそれが現代技術として生きている現代、さらには、粒子が生み出した生命の起源にいたるまで、とても壮大なストーリーが繰り広げられる。

ノンフィクションでありながら、まるで作られたストーリーのような科学史の世界を展開する一冊。
「ミドル」と定義された、観測可能な微小な世界をテーマに、科学に見せられた人々を描く物語は、真実だからこその面白さを秘めている。

オフショア開発に失敗する方法―中国オフショアのリスク管理オフショア開発に失敗する方法―中国オフショアのリスク管理

ソフト・リサーチ・センター 2008-10
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多くの欧米企業が中国やインドを使って、ソフトウェア開発のオフショア化を進めています。
そんな中、日本では、その一歩を踏み出すことができずに、自社や国内のソフトウェアハウスを使って、開発を進めている企業が多い。

十年以上前を振り返ると、あうんの呼吸が通じる日本人ならではの低コストなコミュニケーションは、日本ならではの強みでした。
だからこそ、経済資源が乏しいながらも、諸外国と比べても高度な経済成長を遂げることができたのです。
ところが、今はその「あうん」が足かせとなって、自分たちの仕事を、より低コストなオフショア先に移すことができなくなっています。この「成功者のジレンマ」と呼ばれる状況から、一刻も早く抜け出さなければいけません。

この背水の陣とも言える経済状況の中、いくつかの企業が中国にオフショアを進めてきています。
日本語を使えるブリッジエンジニアが多く、地理的に近い中国は、日本にとっては最適なオフショア対象国のひとつ。
しかし、実際には、オフショアに成功した企業もあれば、投資対効果の側面で失敗している企業もあります。
苦しい時期を何年もかけて乗り越えて、長い付き合いを経て初めてコストメリットが出てくるというのは、短期で収益を上げなければならない企業にとっては、やはり厳しいのかもしれません。

ではなぜオフショア開発は失敗してしまうのか、そのアンチパターンをうまくまとめたのがこの一冊。

仕様の出し方、文章の書き方などのテクニカルな側面だけでなく、中国の国民性に依存した異文化コミュニケーションのポイントや、中国の会社と付き合うことで生じやすいリスク(為替や天候などにいたるまで)など、多角的にまとめてあります。
さらに、実際にオフショアを体験した企業のマネージャやリーダーによるレポートなども引用されていて、とてもリアルな内容となっていてとても有益です。。

筆者が重ねて強調しているのは、オフショア開発は新規事業に相当し、既存事業の拡張と考えてはいけないということ。
オフショアが初めての企業であるなら、短期で収益を上げようとはせずに、3年先を見据えた企業活動をしなければならない。これを取り違えた企業は確実に失敗しているというのが筆者の見解のようだ。


新参者新参者

講談社 2009-09-18
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好きですねぇ、この作品。
実に斬新な構成で、1冊で9度美味しいともいえる長編小説。

東京の下町を舞台に繰り広げられる、人情味の溢れるショートストーリーが、これでもかとちりばめられています。

その独特とも言える下町の空気の中に、敏腕「新参」刑事が、上手く溶け込みながら、町の人と交流を交わし、小気味よく活躍してくれる様はとても爽快です。

疑心―隠蔽捜査〈3〉疑心―隠蔽捜査〈3〉

新潮社 2009-03
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今野敏の描く竜崎シリーズの第3作。

主人公竜崎のキャラクタも、シリーズを通して徐々に定着してきたこともあって、早い段階でストーリーに没頭できる。

過去に多くの難事件を解決してすっかりと有名人になったのにもかわらず、その名声におごることもなく、当の本人は相変わらずマイペースで自分の職務を愚直にこなしていく。

本作では、新たに発生するテロ事件の解決にむけた物語だけでなく、彼自身の新たな人間性発見にも多くのページが割かれている。

クールな主人公を期待している愛読者からは、否定的な意見もでそうな内容であるが、個人的にはまあありなかなと。
今回の構成が吉か凶か、それを見極めるのは次回作を読んでからでもよいかもしれない。

単体で読むよりも、1作目から通して読むむほうが、はるかに充実した内容になると思うので、もしこの本を手にした人は、シリーズを順に読むことを強く勧めます。

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

講談社 1997-05
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たった二人の登場人物が繰り広げる物語。
玄関に内側からカギのかかった古い家を訪れた男女が、その家にまつわる秘密と、自分たちとのかかわりを明らかにしていく。

その家の中でリアルタイムに事件が起きるわけではないのだけど、話が進むにつれて淡々明らかになっていく事実が実に怖い。

文中に登場するひとつの日記がある。
その日記の内容が、読むたびに新しい事実を生み出していく。
日本語の面白さをうまく利用し、読者の想像をはるかに超えた物語を展開させてくれる。

ほんとに東野圭吾という人の技術力には驚かさます。

ぜひ舞台化してほしい作品。

人を動かす

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人を動かす 新装版人を動かす 新装版

創元社 1999-10-31
売り上げランキング : 75
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ビジネス誌などで、人気の自己啓発本ランキングを行うと、からなず上位に入るこの一冊。
アマゾンでも200を超えるレビューがつくほどの人気。

もともとの原題「友をつくり人を動かす法」にあるように、ひとりではできない大きな目標を実現するために、いかに周囲の人に影響を与え動かすのか。

人間の心理を利用したテクニックという表面的なものではなく、この本を読んだ人自身の行動指針が変わることで、結果として周囲の友に影響を与えていく、という実にすばらしい行動指針が語られている。

そして、それらが小難しい論理ではなく、柔らかい語り口で、多くの実例をもとに述べられている。自己啓発本というよりも、チームが機能した多くのケーススタディともいえなくない。

どれも当たり前で常套のことともいえますが、もし、ここに書かれていることが実現できていないマネージメントがいたとしたら、その人をはじめ、その人のいる組織は決して、一流の結果を出すことはできないでしょう。

人間関係には悩みが尽きません。
人を動かす3原則、人に好かれる6原則、人を説得する12原則、人を変える9原則。
きっとここにはヒントがあるはず。

人を動かす原則のひとつは、人の立場に身を置き、強い欲求を起こさせること。

「まず相手の心の中に強い欲求を起こさせること。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、やれない人は、ひとりの支持者を得ることにも失敗する。」

徹底抗戦徹底抗戦

集英社 2009-03-05
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世間を騒がせた元ライブドアの堀江貴文氏の逮捕劇の裏側をつづった物語。

物事には常に複数の側面がある。
この「徹底抗戦」では、ライブドア事件を堀江氏側の視点で語られている。

世間のいうように、堀江氏の拝金主義と思想が引き起こした「事件」なのか、それとも検察や司法をとりまく古い慣習が彼のぶっとんだ行動についていけなかったことによる検察権力振りかざしの犠牲なのか。

どちらがホントかはわからないけれど、この本に書かれたことの8割が本当だとしても結構、衝撃的な内容。

実名を出すことを恐れないその大胆な告白と、勢いのある文章から、堀江氏の頭の良さと、すさまじい客観力がうかがえる。

他方、人は逮捕されると何が行われるのか、留置所ではなにが起きるのか、そして裁判を起こすとはどういうことなのか、など通常語られない事実もしっかりと語られていて、純粋に面白い。
最近世間を騒がせている芸能人・有名人の逮捕ネタともリンクして、芸能ニュースをより楽しむための素養にもなるかも。

赤い指

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赤い指赤い指

講談社 2006-07-25
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老人介護、そしてひきこもり少年という2つの時事テーマを主題としたサスペンス。

崩壊していく家族を描いた妙にリアルな展開と、リアルがゆえにちょっと切ないストーリー。

作品に描写された表面的な事象だけでなく、その裏にあるメッセージが心を揺さぶる作品。

おすすめの東野作品。

ソフトウェアアーキテクトが知るべき97のことソフトウェアアーキテクトが知るべき97のこと
Richard Monson-Haefel

オライリージャパン 2009-10-05
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自分の仕事との関連も深く、最近読んだ本の中では、ググッときた1冊。
ソフトウェア業界の著名なソフトウェアアーキテクト達による97のエッセイ。

エンジニア向けの本であるにもかかわらず、技術的な内容よりも、ビジネスドメインとのかかわり方や、仕事の仕方、精神論のような記述が多いのは、ソフトウェアアーキテクトという役割の特性なのでしょう。

97のエッセイのうち80%くらいは共感できるもの、そして残り20%くらいに新しい発見もちらほら。(いくつかは、自分とは異なる意見のものもありましたが・・・。)

その80%の共感できるもののうち、どれだけのものを自分が実際の職場で「実践」しているだろうか、できているだろうかと考えてみると、、、これが案外出来ていないんですよね。

わかっていても、実現できないことがこんなにもある、という自分のスキルマップの棚卸をすることもできて、とても有用な1冊。

アーキテクトとは、時には、エッセイで述べられているような方法論を、相手に合わせた様式に翻訳して、理解させ、説得させなくてはいけないことも多い仕事。
一見抽象的になりがちな精神論・方法論を、しっかりと文章として表現できているところも、作品をよせているアーキテクト達の表現力の高さを感じずにはいられません。

原書では読めていませんが、下記から同じものを原文で読むことができます。
http://97-things.near-time.net

以下、備忘録がわりにいくつか引用。

フレームワークとかベンダーの言う「ソリューション」といったものの多くは、往々にして付随的複雑病の兆候を示しています。個別の問題を解決してくれるフレームワークは役に立ちますが、やりすぎると解消してくれる以上に新しい複雑さを持ち込むことになります。(中略)まず、象牙の塔から紡ぎだされたフレームワークではなく、現場で生まれたフレームワークを選ぶことです。(02 本質的な複雑さは単純に、付随的な複雑さは取り除け)

なぜパフォーマンステストがそんなに大切なのでしょうか。最大の理由は、どのような変更を加えたときにパフォーマンスが急降下したかわかることです。これならパフォーマンス問題に直面したときに、アーキテクチャー全体を相手にえずに最近に加えた変更に焦点を絞り込んでいけるのです。(13 パフォーマンスの検討に早すぎるということはない)

設計の判断として2つの選択肢のどちらを選らんでもよさそうな感じがする時には、アーキテクトは1歩下がって考えなければなりません。選択肢AとBのどちらを選ぶかではなく、A,Bどちらを選んでも、それほど重大な意味を持たないようにするために、どう設計するかを考えるのです。(24 不確定性が潜むという感覚を磨け)

アーキテクチャの図表は、いわば1万メートルの上空からの目、飛行機から見た風景です。ふつうは、システムに対する視点はあとひとつ、すなわちソースコードしかありません。しかし、これら2つの視点はソフトウェアの品質について多くの情報をとりこぼしてしまいます。(中略)必要なのは、上空300mからの目です。(28 上空300mからの目)

再利用を行うために必要な人々。
1.再利用できるものがあることを知っている人
2.使い方を知っている人
3.自分で作るよりも再利用したほうがよいと思っている人
(26. 再利用はアーキテクチャだけではなく人と教育の問題と心得よ)

現実の世界はずっと前から同じ問題に取り組んできているのです。遅れた手紙、破られた約束、行き違いになったメッセージ、間違って口座への支払いなど。(中略)ですから、あなたの頭痛のために現実世界を打た非難するのではなく、解決方法を探す場所として現実世界を活用して下さい。(47 現実の世界にようこそ)

明確な原則を持つアーキテクチャは、何から何まで面倒をみることからアーキテクトを解放します。レバレッジや影響が大きくなるのです。(59 趣味や個人的な意見ではなく、原理原則に従え)

ソリューションがあまりに巧妙すぎて自意識過剰みたいだと感じたら、手を止めて考えましょう。そのソリューションは、問題にぴったりと合っているでしょうか。(62 単純なものは単純に)

よくできたアーキテクチャはごく普通のことの積み重ねです。有能なアーキテクトの多くは、知識としては知っているものの、習慣として実践できているわけではないことを思い出すために、毎日毎週のチェックリストを作り、それに従うようにしています。(78 勤勉さが必要)

優れたアーキテクトは、自分があまりよく知らないドメインについては、その道のエキスパートに譲るものです。(79 自分の判断に責任を持て)

いかに魅力的に感じたとしても、すでにわかっている要件やユーザーが希望している特性以上に大規模なシステムを設計するのは避けましょう。大きな設計ではなく、大きなビジョンを持つのです。(97 優れたソフトウェアは構築されるのではなく、成長する)

プレゼントの経済学―なぜ、あげた額よりもらう額は少なく感じるのか?プレゼントの経済学―なぜ、あげた額よりもらう額は少なく感じるのか?

プレジデント社 2009-11-12
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クリスマスプレゼントのシーズンを目前に、なかなか面白いタイトルに惹かれて。

著者である経済学者がこのテーマに取り組み調査したところ、クリスマスシーズンに全米で消費されるクリスマス費用は660億円にもなるらしい。
そしてさらに、彼の調査によると、プレゼントは、渡した瞬間に価値が18%減少する。つまりクリスマスの瞬間に100億ドル近い価値が消失することになる。

つまり、友人からもらった20ドルのCDに20ドルの価値を感じることもあれば、おばあちゃんからもらった100ドルの木製のおもちゃに10ドルの価値しか感じない孫もいる。
これらを平均すると18%分の価値が目減りするらしいのである。

ほしくないものをもらっても作り笑顔で「ありがとう」と答える孫の気遣いだったり、時間がない故に相手の望んでいないものを「とりあえず」社交辞令としておくる風習だったりが、この傾向を強めている。

そうはいっても、消費活動が続けば経済は潤うのだからいいではないかという意見に対して、著者は反対を唱える。
消費とは、価値以上の価値があるものを買うということを指すのであって、不適当な贈り物によって価値を下げることは、社会全体の財産を下げることに相当すると。

では、何をプレゼントすればよいのか。

最初に思いつくのは現金かもしれない。現金であれは、送る側ともらう側で価値の増減は発生しない。
しかし、現金を贈るのはあまりに品がないという意識を多くの人が持っているのも事実。

そこで重宝されているのがギフトカードだったりする。
たしかに商品券に形を変えると、現金ほどのいやらしさもないし、確実に相手にも喜んでもらえる。
しかし、現実は違う。
多くの商品券は、期日までに使われることはなく、その価値を失っていくのである。
これは、上記の社会全体の価値を下げていることと等価である。

そんな著者がお勧めしているのは、慈善活動につながる慈善ギフトカードという贈り物である。
もらった人は、慈善活動の中から自分の選んだ寄付先にそのカードを使うことができる。
もし期限内に使わなければ自動的に、どこかの団体に寄付されるという仕組みもある。

慈善活動へのギフトであれば、もしかしたら100ドルのカードの価値が、実質何倍もの価値となって活用されることもあるだろうし、本人の満足度も100ドルを超えるものになるかもしれない。
少なくとも価値の総計は100ドルの価値を下回ることはないはずである。

もし、これに賛同してくれる人が増えれば、毎年無駄になっている100億ドル分の価値が、形をかえてよみがえるというお話である。

さて、今年のクリスマスにあなたは何を贈りますか?

GPSのしくみと応用技術―測位原理、受信データの詳細から応用製作まで (レベルアップ・シリーズ)GPSのしくみと応用技術―測位原理、受信データの詳細から応用製作まで (レベルアップ・シリーズ)

CQ出版 2009-10-23
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最近では、携帯ほどの大きさのGPS受信機でもかなりの精度で現在位置を知ることができるようになりました。

現在、地球上には24のGPS衛星が配置されていて、そこに搭載されたルビジウムやセシウムといった発信機から、正確な時刻で基準信号が送信されてきています。

GPS受信機では、3次元の場所、そして基準からの時刻差という4つ不定パラメータを求める(4元方程式を解く)ために、4つの衛星からの電波が使われている、といった基本的な技術概要から、精度向上に貢献したデバイスの変化の歴史などを幅広く知ることができます。

本書の後半では、「応用技術」に力が入っていて、CQ出版らしく、自作でGPSモジュールをつくるときの手順などに多くのページが割かれています。
そこでは、GPSそのものの技術はもちろんのこと、デバイス同士で通信させるためのインターフェースや、小型の液晶デバイスを駆動させるための技術、そしてGoogleMapのAPIを使ってAjaxなアプリを開発するためのノウハウのようなものに至るまで、最近の小型組み込み機器を設計するときに必要な基礎知識のようなものが、バランス良く詰まっています。

知的好奇心をかき立てられる一冊です。

それにしてもGPSのすごいところは、全世界でそのプロトコルを共通にできたこと。

軍事用途をはじめとして、各国独自にその他の測位システムを開発しているとはいえ、世界中の多くの国がGPSの重要性に共感し、投資し、共通のプロトコルで衛星を共同運用できている。

優れた「技術」が優れた貢献をするためには、利害競争をいかにして乗り越えるかが一番のハードルだろうから。

協力のリーダーシップ―メンバーの個性を活かすチームワークの技術 (Harvard Business Review Anthology)協力のリーダーシップ―メンバーの個性を活かすチームワークの技術 (Harvard Business Review Anthology)

ダイヤモンド社 2009-07-31
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従来の日本型の企業では、当たり前に実現できていた、チームとしてメンバーが協力して成果をあげる仕事のスタイル。
しかし、個の尊重が重視された結果、最近の仕事の現場では、チームの協力が自然発生することはなくなり、協力は「意図的に醸成」しなくてはいけなくなってしまいました。
この本には、効果的なチームを率いて「協力」を作り出すための6つのレポートが掲載されています。

1. 協力するチームの秘訣
2. チームEQの強化法
3. チームの心理学
4. フェアなプロセスが協力を生み出す
5. コンフリクトの解決が協力を育む
6. ハイパフォーマーの力を引き出すレッスン

チームを成功に導くには、さまざまな意思決定を行う必要があります。
そして、その意思決定が、どれほど正しいものであっても、その方針に伴い行動するすべてのメンバーの考え方と同期していないと期待する成果を出すことはできません。

4章で触れられている「フェアプロセス」とは、意思決定するもの(経営者)が、それに追従するもの(従業員)に対して、判断の結果だけでなく、その決定に至るプロセスにおいて、いかに関係者たちの考えが考慮されたかを、重視するもので、両者の信頼関係を高めるうえで、重要なツール。

本書によると、「エンゲージメント」「説明」「期待の透明性」という3つの原則を徹底することで、フェアプロセスは初めて有効となる。

個々のメンバーの考えを吸い上げ、決定の根底にある考え方を説明し、メンバへの期待値を明示すること。
どれも当たり前のことのようですが、確実に実現するには結構なパワーが必要なはず。
どれかひとつでも欠けると、メンバーは正しい協力関係を築くことはできないでしょうから、ここには力を注ぐ必要がありそうです。

また、最近は国籍や背景の異なるメンバで構成されるチームで業務にあたることも増えてきました。
異なる専門性をもつメンバーがあつまると、そこには必ず軋轢が生じます。
5章では、その軋轢を避けるのではなく、コンフリクトは必ず起こるものとして受け止め、それらを当事者同士で解決させることで、より一層のチームパフォーマンスを引き出すためのテクニックに触れらています。
ここでも、やはりリーダーによる説明とメンバーに対するエンゲージメントの重要性が述べられています。

6章では、チームの構成について、スーパーマンをあつめたドリームチームと従来型のチームについて、それぞれの体制で、成果を出すために必要なチームマネジメントが語られています。
メンバが何を重視しているか、チームに対して何を期待しているか、会社に対してどのようなインセンティブを求めるか、それらが根本的に異なる両チームでは、マネジメントの仕方も全く異なります。

目的に応じて適切に両チームを使い分けることができればよいですが、実際には、意図せずしてチームが形成されることも現場では多いと思います。
どのようなチームであっても、的確に成果を出すためのヒントがここにはあります。

いずれのレポートも、質の高いものばかり。
実際の企業を題材にした多くの具体例が掲載されていますので、読み応えもあります。

5人以上の人を集めるリーダーにとっても、きっと500人の人を束ねる人にとっても、きっと有益な1冊だと思います。


そこでもやはり、コンフリクトの内容と

不機嫌な職場

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不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

講談社 2008-01-18
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私にとってはかなりの良書でした。

締め切りに追われ確かに忙しいんだけど、ただ忙しいということだけでなく、ギスギスした雰囲気を持った職場が増えているらしい。

なんだか仕事を頼みづらい(頼むと断られそう)。問題を発見したけど報告しづらい(報告すると自分の仕事に返ってきそう)。

* 自分じゃなくても上司や先輩がどうにかするはずだ、自分は目の前の仕事をやればよい
* みんな自分のことしか考えていない。ならば自分もそうしよう。
* 「その仕事は私のためになるんですか」

そんな雰囲気が蔓延した結果、本来のパフォーマンスを出すことができず、利益を生むことができない組織が増えてきているのは確からしい。

お互いに自分のせいではないというのを他の人に知ってほしいと主張している
非協力でいることで自分を守ろうとする感情や行動の連鎖が起きる

という、この行動の背景には、いったい何があるのだろう。

著者によると「協力の問題は個人の問題ではなく組織の問題」とのこと。

従来の日本では、「責任をあいまいにして、人の能力や実体にあわせて責任範囲を伸び縮みさせる方法で組織を運営」し、成功してきた。

しかし、それが一定のラインを超えると、競争力を保つために、ジェネラリストではなく、境界を儲けてその中の深さを求める意識を強めていくという方向に、人の指向が向き始める。
その結果として、自分と他者との間に落ちるような仕事に対し、手を差し出すということが減ってしまうのである。

では、どのようにして、対策をすればよいのか。
本書の後半では、具体的な対策(というかヒント)が述べられている。

1. 異動による知識や価値観の共有化、異動損しない異動の仕組み
2. 人間の内発的な感情に訴えかけるようなインセンティブのあり方

協力関係を阻害する要因には、役割構造、評価情報、インセンティブなどがあり、それらをどのように変革するかで協力に対する効果は違ってくる。もちろん、業種や組織の規模、文化的背景によっても異なるはず。

私の場合も、400人を超える規模でソフトウェア開発を行っていると、この本に書かれているような「不機嫌な」事態に、日常的に直面します。

自分の組織とそれを構成する人の未熟さもあるにせよ、このような悩みを経験している職場はたくさんあって、普遍的な問題なんだということがわかると、なんだかほっとしまう面もあるのだけど、なんとかこの本からヒントが得られればと思います。

組織力は「個人の力」と「個人間のちから」の掛け算
人が人らしく働けない職場は、常識的に見て長続きすることはできないのだから

世界トップクラス営業マンのモチベーションに左右されずに結果を出す仕事術世界トップクラス営業マンのモチベーションに左右されずに結果を出す仕事術

大和書房 2009-09-19
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さらっと読める自己啓発本。
書かれていることは、自ら宣言して困る状態を作れ、適切な目標をたてろ、など当たり前のことばかり。
なーーんだ、期待はずれ、と思ったのですが・・・。

モチベーションが下がっているときに、どうすべきかという普遍的な悩みには、これまでに多くの作家が啓発本で論じてきたはず。
ともすれば抽象的になりがちな方法論を、とっても具体的に、しかも著者自身の実践例を交えながら書いていることが、すごいことかもしれない。
その結果、書かれているひとつひとつの仕事術が実践可能に思わせる、わかりやすい表現になったのでしょうね。

著者が「先出しじゃんけん」と表現する、自分の目標を先に周囲に告知して自分を追い込む、というやり方は私もよくやります。芯が弱いからこそ、そうしないと途中で折れちゃうんですよね。
そんなちょっとしたテクニックがたくさん詰まっています。

大きなものを生み出したいなら「安全領域」を抜け出せ
簡単に困る一番の方法は「先出しじゃんけん」
ネガティブな評価はそのまま受け取らない
勝負は「勝てる」カテゴリーでしかしない
マネしてもできないことはあきらめる
失敗経験が恥ずかしいのは、まだ成功していないからだ
人間は、楽しいときのほうが能力を発揮する
自己投資には100年に一度の大不況はない
楽しいかどうかで判断する

35歳の教科書

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35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画

幻冬舎メディアコンサルティング 2009-09
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なんだか悩んでいるのだろうか、久々に本屋で自己啓発系の本に惹かれて、数冊まとめ買い。
その中でも、最もインパクトのあるタイトルだった本書。

多様化、複雑化、変化といった3つのキーワードで象徴されるこの成熟時代においては、みんなで同じ方向を向いてひたすら頑張った昭和の成長時代とは違って、ひとりひとりがいかに豊かな人生戦略を持っていきるかが大切。

そのためにはこの30際前半というのは、とても重要な時期なのかもしれない。
全体を通じて、吉越さんの書かれた『「残業ゼロ」の仕事力』と近いものはあるけれど、とにかく、会社には依存しない生き方をみつけましょう、という強いメッセージが伝わってくる。

クリティカルシンキングが大事、仲間を作れ、自分だけのキャリアを気づけ、と、人生を豊かに生きるために彼が提唱する方法論の部分は、それほど新しいことが書かれているわけでもなく、ちょっと退屈な部分もあったけれど、言っていることはとにかく正論。
これらがすべてしっかりと実現できるコンピテンシーを持っていれば、きっと著者のように豊かな大人になれるのかもしれないですね。

内容よりも、あ、もうすぐ35歳(あと2年くらいありますが)なんだ、と、自分の位置を再確認させてくれた本の存在に感謝。

それにしても、本の帯に書かれた文章が秀逸。こりゃ手に取るわな。

拝啓、終電帰りのビジネスパーソン様。35歳からはただ頑張っても報われません。(中略)そんな今こそ、あなたと家族がつくる人生が始まるのです。

復讐―孤拳伝〈1〉 (中公文庫)
復讐―孤拳伝〈1〉 (中公文庫)
中央公論新社 2008-11
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漆黒―孤拳伝〈2〉 (中公文庫) 群雄―孤拳伝〈3〉 (中公文庫) 覚醒―孤拳伝〈4〉 (中公文庫) 義闘―渋谷署強行犯係 (徳間文庫) 特殊防諜班 連続誘拐 (講談社文庫)

今野敏氏による格闘小説4部作。
不遇な環境に育った主人公が、さまざまな「戦い」を経て成長していく様を描く小説。

暴走族、任侠、裏社会などの世界を渡り歩き、東京、横浜、沖縄などのステージで、死闘を繰り広げていく。そこで多くの人に出会いながら、戦うことの意味、強さとは何か、人間の生きる意味とは何かを悟っていく。

2段組み4部作というボリュームながら、内容は軽いのでサクサク読める。
(そうは言っても、3週間くらいかかりましたが・・・)

今野氏といえば、刑事作品、という思い込みがありましたが、違う側面から彼のつづる作品を見る意味でも面白い。
後半になればなるほど、格闘シーンのダイナミクスさや動きは小さくなってしまうのが残念ですが、その分、共感できる普遍的な描写も多くなり、それはそれで面白い。

理系の企画力!-ヒット商品は「現場感覚」から (祥伝社新書167)理系の企画力!-ヒット商品は「現場感覚」から (祥伝社新書167)

祥伝社 2009-07-28
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消しゴムで消えるボールペン、などのようにこれまでの常識を変えるような商品がヒットしている。
これらの商品は、きっと技術を知らない人たちだけの企画会議で生まれることはなく、そして技術まっしぐらなエンジニアによって生み出されることもない商品でしょう。

お客様が何をもとめているのか、ビジネスのトレンドはどこに向かっているのか、というマクロなマーケット視点と、自社の技術ロードマップにある技術をしっかりと把握するミクロな知識との両方をしっかりと結びつけ、その接点が見えた時に商品化への可能性が見えてくる。

この本では、いくつかの成功事例をあげながら、全体からモノごとを考えられる企画力を持った技術屋の活躍する道を示唆してくれている。

「技術企画」みたいな組織をつくればいいじゃん、なんていう安易なアプローチではなく、エンジニアひとりひとりの考え方が重要という著者の主張のはうなづけるところ。
実際、技術企画という部署ができても、トップマネジメントからのプレッシャーの中で、ご機嫌をうかがう提案を続けていくうちに、結果的には現場のエンジニアとの距離はどんどん離れてしまい、従来からある企画部門とどこがちがうのよ、ということもよくあるのではないだろうか。

たしかに顧客分析をして、作るべきものを帰納的に導く商品企画的なアプローチも重要だとは思うけれど、それでは新しい顧客体験を生み出すのは難しいだろうし、イノベーティブな商品も作れない。
もしかしたら、技術屋が考える企画には面白いタネが埋まっているのかもしれません。(そのタネをしっかりと拾おうと、多くの企業のミドルマネジメントも苦労しているのだと思いますが・・・。)

あくまでも重要なのは「現場感覚」。
本質的に何が求められているのかを常に自問しながら、「あっ」と言わせる商品を技術屋自身で作れるように、技術を磨いきたいものです。

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)

幻冬舎 2009-07
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タイトルにつられて、出張前の空港売店で購入。
ドコモでiモード立ち上げに尽力された著者による、これからのウェブビジネスに対する提言などもろもろ。

グーグルやアマゾンについて直接のノウハウやその応用について触れられているわけではなく、今の日本企業がウェブビジネスを進めていく上で抱えている問題点を、顧客・技術・広告・規制など幅広い視点から整理している感じ。

日本のスコープを超えて、グローバルなマーケットでウェブビジネスが生き残っていくためのヒントがあればとの期待でページを進めましたが、論点はそこまで広がらずに、あくまでの今の日本のウェブビジネスの問題点指摘にとどまっている感じ。

全体的に、とくに新しいことが書かれているわけではないなぁという印象ですが、急にネットについて考えなくてはいけなくなった中小企業のちょっとエラい人が読むには、整理された内容なのかもしれない。

ただ、著者が最後の章で述べているように

ウェブビジネスというのは、組織的に何か新しいディレクションを出そうといった、会社全体のストラテジーの話なのだ。(略)現場だけがウェブに対応し、それだけで終わってしまっている。

というくだりには大いに共感できる。
企業全体として、どのようにウェブをつかったビジネスモデルを描くか。ここをしっかり押さえておかないと、道具に振りまわされて、余計なコストだけを支払うはめになる。
これまでリアルの世界ではできなかったことが実現可能になった、このボーダレスな時代に、何に企業価値を求めるのかを明確にして、ウェブを活かすことが重要である。

多くの企業では、その戦略を考えられる経営層が不足しているというのは事実かもしれません。

日常の疑問を経済学で考える日常の疑問を経済学で考える
Robert H. Frank

日本経済新聞出版社 2008-02
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難しい数式も、細かいお金の計算も、なーんにも出てこない経済学の本。
人は、生活をする中で、いろんな判断をする。

100円ショップで100円で買えるペットボトルのお茶を、なぜ自動販売機で140円で買う人がいるのか。

それは、無意識に機会費用を計算した結果、その方が便益が高いと考える人がいるからである。
人の行動は、「費用便益の原則」に基づいて決定される。
「ある行動によって生じる便益が費用を上回る場合のみ、その行動をする」という判断である。

そんな無意識の行動を、意識できるようになると世の中のいろんな仕組みが見えてくる。

本書では、そんな経済学的な原則に基づいたルールや仕組みの例がたくさん詰まっている。アメリカで書かれたものなので、文化的に日本人には???なものもあるけれど、わかりやすくてとても面白い。
多角的に物ゴトを判断したいと思っている人は、読んでみるとよいかも。

- ドライブスルーの操作盤に点字がマークされているのはなぜか(目の見えない人は車を運転しないのに・・・)
- ホテルのミニバーが法外に高いのはなぜか
- 株式のアナリストが「売り」を推奨しないのはなぜか
- 平均初婚年齢が高くなっているのはなぜか

そんな疑問に答えてくれる、面白い一冊です。

インドと中国―世界経済を激変させる超大国インドと中国―世界経済を激変させる超大国
Robyn Meredith

ウェッジ 2007-09
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劇的な変化を遂げている、2つの大国について書かれた2007年の書。
リーマンショックなど、この本がかかれてからも世界経済は大きく変わっているが、もともと劇的な変化で進化をつづけている中国とインドにとっては、それも多くの変化のうちのひとつなのかもしれない。

中国とインドの進化の歴史をひも解きながら、将来について考えさせられる面白い1冊。
そこには、先進国で働く私たちの価値観では計り知れない、ビジネスに対する評価基準がある。
あとがきにも書かれているが、アメリカ人の著者の視点で書かれていることも、日本人の私にとっては、余計な色眼鏡なしに第3者視点で読むことができるという点も面白い。

欧米諸国と肩を並べるほどのビジネス大国に成長した両国。
中国は、この20年で、シルクロード以来ビジネスの中心だった商品の輸出から、オフショアリングなど安いサービスを輸出するという新しいビジネスモデルで、雇用を創出し続けている。
インドでは、中国には10年ほどの遅れをとりながらも、ハイレベルな技術力を輸出することで、欧米のGEやシーメンス、IBMといった企業とともに成長を続けている。

インドのインフォシスや中国の浦東ソフトウェアパークなどのホワイトカラーエリアで働くチャンスを得た人たちは、故郷の賃金の何十倍という高い収入を得ながら、先進国と変わらない生活レベルを維持することができている。
そんな彼らでさえ、アメリカの企業から比べるとかなり割安の賃金しかもらえていないのは事実。その状況から脱しようとアメリカへ出ようとする優秀なビジネスマンが多かったらしい。
しかし、中国では、近年、アメリカに行けば10倍の賃金が貰える、そんなチャンスを手に入れながらも、中国にとどまるという新しい動きもあるようだ。
30年後に世界を動かしているのは、西側諸国ではなく、中国やインドであることは十分に考えらえる、と冷静に将来を見据えた結果なのかもしれない。

一方で順調に見える成長の裏には、まだまだわれわれの想像を絶する劣環境がのこされているのもインドと中国の姿である。
炭鉱と工場から出る煙による強烈な酸性の雨、整備されていない下水による強烈なにおい、まじかに迫っているエネルギー問題。
世界を代表するモデル国として次の一歩に踏み出すには、まだまだ解決することは多い。

そして、増え続ける人口に対する危惧。
インドでは 11億人の半分が25歳未満である。
彼らの将来のためには、多くの雇用創出が必要である。
海外からの雇用創出にたよるのか、新しく国内の整備を進めていくのか、岐路に立たされたインドでは、雇用について国民自身が真剣に悩んでおり、政治にも注目度が高い。

本書を通じて、著者が一貫して主張していることは、とにかく教育を重視しなくてはいけない、ということ。

教育に投資せずに高賃金の仕事がたくさん生まれると期待しているのであばそれは間違い

インドと中国の「それぞれ」が毎年労働人口に加える大卒者の数は、アメリカとヨーロッパすべてで毎年卒業する人数の合計より多い。
このデータは、先進国であるアメリカや日本の将来が、インドや中国の生み出すビジネスによって、大きな影響を受けるという想像をさせるには十分である。
彼らにできなくて、私たちにできないことをしっかりと取捨し、共存する仕組みを構築していかないと、私たち自身が雇用を失う日は近い。

これからさき、地球という限られた資源のなかでのゼロサムゲームで生き残っていくのは難しいのかもしれない。

プログラマの道具箱 (図解 ビジネスの現場)プログラマの道具箱 (図解 ビジネスの現場)
イノウ

技術評論社 2009-06-06
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世の中にはたくさんのプログラマがいる。
システム開発やっている人、組み込みのソフトやっている人、携帯やPCのアプリ開発やっている人・・・。

この本では、それらプログラマが使う多くのツール(道具)について述べられている。
分析用、設計用、開発用、そしてテスト用。

仕事を進める中で、ツールに助けられるケースも多いと思う。

いろんな人が考えたさまざまなの効率化アイデアの共通要素が集約されたものがツールといえるわけで、なにか壁にぶつかったときには、新しいツールを使うことで、突破口が見つかるというのもよくある話。
この本で、その選択肢が広がれば・・・と思います。
(しかし、この手のインターネットリテラシーの高い人をターゲットにした話は、ネット上で同様の話題が簡単に見つけられてしまうので、紙媒体として書籍化するのはだんだん難しくなってきているのでしょうね・・・。)

よい道具との出会いは、仕事の効率を格段に向上させます。
決して道具に使われることのないように。

と強く感じた一冊でした。

ヤバい経済学

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ヤバい経済学 [増補改訂版]ヤバい経済学 [増補改訂版]
望月衛

東洋経済新報社 2007-04-27
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経済学とタイトルにあるが、まったくコムズカシイことはかかれていない。
日常にある、とってもありふれた事象を経済学的な視点で読み解くうちに、経済学の本質を垣間見ることができるという内容。

「道徳」と「インセンティブ」に基づいて人は行動する。その結果、世の中にはどのような「事象」おこるのか。
人が起こす消費行動によって、物価や経済がどのように動くのか、なんてことを研究している人はたくさんいるが、この著者たちはちょっと違った視点で人の行動を読み解く。

不正に生徒の点数をつりあげて、自分の評価を高めようとする学校の先生がどれくらいいるのか?
相撲の世界に八百長はあるのか?
ヤクの売人の生活がリッチではないのはなぜか?
ニューヨークの犯罪はなぜ減ったのか?
良い子育てをするために、親たちはどんな名前をつけるのか?

あらゆる事象がデータをもとに分析されていて、説得力は十分。
一般のメディアでは語られない、人種や格差を意識した心理によって人は少なからず行動してしまい、多くの人が犯罪すれすれのラインで目先のインセンティブに飛びついてしまうことが、データからよーくわかります。

経済を読み解くこととは、人間心理を理解することなんですね、きっと。

「残業ゼロ」の人生力「残業ゼロ」の人生力
吉越 浩一郎

日本能率協会マネジメントセンター 2008-08-03
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『「残業ゼロ」の仕事力』の続編ともいえる本書。

仕事はできて当然。でも、本当に幸せな人生を送るためには、それだけではダメ。
という視点で、人生力を強化するためのポイントが述べられています。
そして、やはりそこは「残業ゼロ」に帰着する、というストーリー。

前作と比べると、どちらかというと定年後の過ごし方に焦点があてられています。
仕事時間は人生の中の一部でしかないんだよ、という当たり前だけど若い時代には認識忘れがちなポイントをつきつけ、長期的な視点でもって人生を満喫するTipsにあふれています。

仕事というのは、人生の一時期だけ参加が許されたゲーム

であって、仕事以外の時間も含めた人生全体をゲームとして楽しむには、仕事に依存しないスキルと属性とネットワークも身につけておかないとね。

深紅

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深紅 (講談社文庫)深紅 (講談社文庫)
野沢 尚

講談社 2003-12
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とても重くて辛い事件から始まる。

被害者家族と加害者家族の間にある悔いと恨み。
被害者の家族はいつまでも、忘れることはできない光景に悩まされ続け、
加害者の家族はいつまでも、自分に責任のない誹謗と悔いに悩まされ続ける。

そして、どんなことが過去にあっても、人は時間とともに、感情の形を変えつつ生きていかなければならない。

とっても重い人間ドラマを、二人の少女を通じて、読者に投げかける。
決して、明るい気持ちになれる作品ではないが、名作のひとつ。

次元とは何か―「0次元の世界」から「高次元宇宙」まで (ニュートンムック Newton別冊サイエンステキストシリーズ)

ニュートンプレス 2008-04
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ムックのNewtonシリーズの別冊。
理系の人なら、一度は手に取ったことがあるシリーズだと思うけど、このシリーズは写真や画がとても多く、世界トップレベルのコムズカシイ話をわかりやすく説明してくれている、というのが特徴。

端が0次元になるものを1次元(線)と呼ぶ。
端が1次元になるものを2次元(面)と呼ぶ。
端が2次元になるものを3次元(立体)と呼ぶ。
端が3次元になるものを4次元(超立体)と呼ぶ。

数学者アンリ・ポワンカレによる次元の定義である。

私たちの住むと思われている4次元時空では、3次元の空間に1つの時間が存在する。
この世界に住む私たちからは、4次元時空で起こる事象は1次元下の観測系で、容易に観察することができる。
ある時間のスナップショットをとらえればそれは3次元の世界であり、3次元の世界を面に投射すればそこには2次元の世界を観察することもできる。

では、この4次元の世界を観察している、もっと高次元の世界はないだろうか。
多くの数学者が頭を悩ませた結果、5次元の世界は存在するという説が有力らしい。
そして、「電磁力」、陽子や中性子を結ぶ「強い力」、中性子を陽子に変身させる「弱い力」、「重力」といった4つの力のうち、5次元の世界を伝搬できるのは「重力」だけなのだそうだ。
これらの世界は、私たちの目からは見えない、とても微小な世界で起きていることと説明されている。

どうやら、このジャンルでも数学による机上理論の世界と、実験による実観測結果の世界の隔たりは大きいらしい。
数学では超ひも理論によって11次元の安定性が確認されているが、実観測でこれから明らかにしていくのは5次元目の世界だ。

なんだか難しい話ですが、近い将来、相対性理論の時のように、世界を変えるような新しい物理法則が生まれ、私たちがこれまで学んできたことをすべてひっくり返してしまう可能性があると思うと、ちょっとわくわくしたりします。

まだまだ勉強することはたくさんあるのに、人間とは、次から次へと新しい課題を見つけてしまう生き物なのですね

学ぶことを止めないように、この本からは、そんなメッセージを受けとった気がしました。

眠りの森

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眠りの森 (講談社文庫)眠りの森 (講談社文庫)
東野 圭吾

講談社 1992-04
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バレエ団で起こる、殺人と切ない恋の物語。
東野作品の中では、サスペンスの中身や詳細よりも、小説としての全体の流れを重視したリアル重視の作品だったように思う。

読み終わったあと、心に残るものはなく、なんだかあっさりとした印象に終わってしまったのは、彼の作品に濃厚な表現を期待しすぎているからだろうか。
世間の評判はよい作品のようだが、個人的には△評価かなぁ。

それでも、バレエ団というまったく知識のない世界が描かれているので、展開が想像できず、ぐいぐい読み進められたのは確か。

アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)
堂目 卓生

中央公論新社 2008-03
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アダムスミスといえば、「見えざる手」による価格調整メカニズムを「国富論」の中で説いた経済学者、というのがこの本を読む前の知識。

本書では、彼のもうひとつの功績である著書「道徳感情論」についても多くページを割いており、「国富論」との関連性を説明することで、彼が生涯をかけて築いた、人間の本性に深く根付いた経済活動についての壮大な研究成果を垣間見ることができる。

市場の機能を支える、市場参加者の行動を左右するのは、彼らの自愛心であり、利己心であり、そしてフェアプレイの精神である。
その結果として資本が生成され、蓄積され、そして分配・消費されることで経済が回る。

市場参加者である私たち一人ひとりの行動規範の裏には、自分の行動を称賛されたい、非難されたくないという、道徳原理があるはずで、「道徳感情論」では、そういった人間の本性の定義に試みており、これが結構面白い。

アダムスミスの視野の広さと考察の深さを感じるとともに、特定の分野にしばられず、分野を超えた検証の中に、新しい真実が見つかるという、よい例だと感じさせられた一冊。

経済学には明るくないけれども、わかりやすい説明で理解は可能。
評判がよいのもうなづける本でした。

ビールの科学

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ビールの科学 (ブルーバックス)ビールの科学 (ブルーバックス)
サッポロビール価値創造フロンティア研究所 渡 淳二

講談社 2009-03-20
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もうかれこれ15冊目くらいになるだろうか、ビール関連の書籍を読んだのは。
この本は、中級者向けといったところでしょうか。
ビールに関する薀蓄だけでなく、製法や原材料の特徴についての科学的な分析が多いのが特徴。
そして、おいしい飲み方や、料理とのコンビネーションにいたるまで、幅広く述べられており、ボリューム満点の一冊。

ビールの歴史を振り返ると、それぞれの時代の最新の科学に基づいた醸造を行い、ときにはビール製造で得られた現象が、科学自体の進展に貢献したりと、その奥深さには感服です。

毎日飲んでいるビールには、メーカをはじめとする多くの技術者たちの英知が詰まっているのですね。
今夜もありがたくいただきましょう。

サイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリルサイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリル
山下 優子 生田 りえ子

日経BP社 2008-10-23
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アメリカでは年間どれくらいの重さの家庭ゴミが出されているか。
赤道上にゴルフボールを並べるといくつ必要か。
日本にはピアノの調律師が何人いるか。

わずかな基本事実から得られる数字だけを元に、大まかな推定をおこなう技術をフェルミ推定といいます。
常識力と適切な判断能力そして、数字を現実世界に活かす視点を求められる技術のひとつ。
マイクロソフトなどが入社試験に取り入れていることで、一時、話題になったような気もします。

上のゴミの例の場合、自分の家の毎週のゴミの量をもとに、自分の家と平均的な家との差分を考え、アメリカ全土のボリュームをみつもる、といった非常にロジカルなステップで答えに近づくことができます。

正確な解をだすことは不可能ですが、少なくとも1/10倍~10倍の範囲に収まる答えは導けるはずです。

実際に、仕事においてもこのスキルはとても重要。
会議の場で発言を求められ、長期的なプロジェクトの工数などの数字を見積もる場合、100人のプロジェクトの日々のコストを計算する場合、この考え方は、漠然とした感覚を数値化する上でもとても有益。

時間と品質は相反するもの。
投げかけられる質問、仕事でぶつかる課題、それらは時間をかければ、より精度の高い正解に近づくかもしれないけれど、限られた時間で答えを出すことも重要。
あいまいな答えを出すことに違和感を感じるという人も多く、多くのエンジニアは特にその傾向があるかもしれません。

この本には、そんな例題とそれぞれの解説がてんこ盛りです。
さくさく読むというよりも、出勤時の電車の時間などを利用して、1問5分くらいかけて頭をフル回転させてみると面白いかも。

イコン (講談社文庫)イコン (講談社文庫)
今野 敏

講談社 1998-08
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先日読んだ、同氏の「蓬莱」の続編ともいえる作品。

ネットの世界で作り上げられる偶像。
その偶像の周りで次々に引き起こされる殺人劇。
その偶像を現実視するネット世界の住人達と、彼らに翻弄される現実世界の刑事達のドラマ。

既存の常識では図りえないネットに憑かれた彼らの意図と価値観を、なんとか理解しようとする主人公たちの姿が面白く描かれている。

98年ころに書かれたものというだけあって、インターネットというよりもパソコン通信という色あいが強いが、ネットとリアルのはざまで翻弄される警察たちドラマは、現代に書かれたものにも引けを取らない内容だと思う。

他の今野敏作品同様に、本作品でも人間ドラマに多くのページがさかれている点も印象的。
主人公の刑事が、この事件をきっかけに、ほとんど口もきかなくなっていた息子と少しずつうちとけていくといったサイドストーリーが、主人公の人間性をより鮮明に描き、本編の助けとなっていて、実に巧妙。

朱夏

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朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
今野 敏

新潮社 2007-09-28
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同氏の作品「ビート」の続編。
仕事人間で家庭を顧みない真面目な刑事が、ある日、妻を誘拐されてしまう。
彼は犯人を探し始めるが、それは事件を追う刑事としてなのか、それとも妻を愛する夫としてなのか・・・。

犯人探しなどミステリーな部分は単調なため、ストーリーとしてはそこそこであるが、彼らの人間描写がなんともリアルである。30歳すぎた読者には、考えるものがあるはず。

青春の次にくるのは、情熱と熱意で社会をドライブする「朱夏」の時代。

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版
矢羽野 薫

ランダムハウス講談社 2008-06-19
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2007年9月18日、ペンシルベニア州ピッツバーグにあるカーネギーメロン大学の講堂で、1人の教授が「最後の授業」を行った。
教授の名前はランディ・パウシュ。46歳。最後の授業をするにはまだ若すぎるパウシュだが、彼にはこのとき、長年親しんだ大学に別れを告げざるをえない事情があった。膵臓から肝臓へと転移したガン細胞。医師から告げられた命の刻限は――「あと3カ月から半年」。
こうしてパウシュの最後の授業は始まった。スクリーンに映し出された演題は『子供のころからの夢を本当に実現するために』。それは、「最後の授業」であると同時に、幼い3人のわが子に遺すためのメッセージだった。

技術者である彼が最後の授業で選んだメッセージは、自分のアイデンティティであるコンピュータ工学の知識を共有するものではなく、子供への愛情表現という万人共通のテーマだった。

夢をかなえるにはこうすればいい、という抽象的なハウツーはたくさんあるかもしれないが、この本に描かれているのは、自分の子供たちにむけた最後のメッセージである分、具体的かつ明確である。

不満を口にしない、何を言ったかではなく何をやったかに注目する、「ありがとう」を伝える、誠実であれ、楽観的であれ、相手の視点に立って発想する・・・

世界中には著者と同じように、がんによって命を失っていく人がたくさんいる。その誰もがそれぞれ大切な人に対して、感謝や願いといった自分の思いを伝えようと、最後の時間を過ごしている。誰もが著者のように強い意志をもって、明確な形で表現できるわけではないと思うが、何らかの形でがんに関わったことがある人もそうでない人も、そのメッセージには共感できるに違いない。

親が子を思う深い気持ちが、この本には描かれている。

最後に著者の好きだったという言葉のひとつを記しておこうと思う。それこそが夢をかなえるためのヒントだと思うから。

Luck is a matter of preparation meeting opportunity.
幸運とは準備が機会に出会うことである。

のぼうの城

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のぼうの城のぼうの城
和田 竜

小学館 2007-11-28
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2万を超える兵を率いる石田三成による北条勢制圧の一場面。
わずか2000の兵で守るのは忍城。
その城主が「のぼう様」こと成田長親である。

誰よりも城下の農民からの熱い信頼をもつ「のぼう」は、城を守る戦にてその才を発揮する。

歴史にはあまり詳しくない私でも軽く読めるような、程よいボリュームの小説。
歴史物語が好きな人には物足りないのかもしれませんが・・。

有能でありつつも爛漫な武将たちを、力ではなく、頭脳でもなく、そのおおらかな雰囲気と温かさでもってまとめてしまう様は、時代背景は違えど、リーダーシップ論に通ずるものもあって、読み終わった後の気持ちよさは格別。

合衆国再生―大いなる希望を抱いて合衆国再生―大いなる希望を抱いて
棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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年初以来、少しづつ読み進めていた、オマバ新大統領による書。
かなりのボリュームかつ私にとっては内容も難しかったので、とても時間がかかってしまいましたが、訳も良くて、オバマ氏の思想や国を愛する気持ち、そしてなによる彼のもつ聡明さが、深く伝わってくる一冊だった。

運のいいことに、私はいまの社会に生まれた。この社会は私の才能を認めてくれ、その才能を伸ばすことができる良質な教育を与えてくれ、存分にこの仕事ができるような法律と金融制度を定めている。そんな時間と場所に私は生まれてきた。わたしにできるせめてものことは、そういういろんなことに代価を支払わせてもらうことだ。

宗教、軍事思想、外交、人種、歴史、各社の是正、教育問題、医療整備、銃規制など、どれをとっても一言では表現できない多様性をもち、それを許容するアメリカという国をまとめる難しさは想像を絶するだろう。

正しいことが必ずしも真実にはならないアメリカの政治の世界で、自分の思想や信念を実現できないもどかしさや、政治家としてのオマバ氏の心情や思想が丁寧かつ、自信たっぷりに描かれていて、アメリカ事情に疎い私にとってはとても勉強になったし、なにより読み物として面白かった。

そして、個人的に感銘を受けたのは、この本の最後の章にあった。
最後の章では、愛する妻ミシェルと子どもたちのためにあてられている。
弁護士時代に出会った妻との出会いに始まり、多くの夫婦と同じように家庭で起こる多くすれ違いと多くの会話。
その節々から、深い愛をもって家族を包み込むことのできる人間であることが描かれていて、身近に感じられるとともに、人として尊敬できる点を見出さずにはいられない。

ニュースをにぎわしている日本の政治家からは伝わってこないような、政治家としてではなく人間としての誇り高さが、この本には述べられているように思えた。

そういった人物であるからこそ、就任式にあれだけの人数が集まるほど国民から愛され、大切な自分の国とその未来を託そうという気持ちにさせるのかもしれない。

蓬莱

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蓬莱 (講談社文庫)蓬莱 (講談社文庫)
今野 敏

講談社 1997-07
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最近はまり中の今野 敏の小説。
私自身も学生時代にはまっていたAOEのようなゲームがテーマの作品です。

シミュレーションゲームを発売しようとするゲームプロデューサーが主人公。
渾身のその作品は、順調に発売日を迎えるはずだった。
ところが、それを阻止しようとする組織の力によって、身の回りに多くの事件がおきていく。

いったいゲームにどんな秘密が隠されているのか・・・。
それはただのゲームではなく、壮大な意味をもっていて・・・。

ゲームとサスペンスを結び付けた、なんとも斬新な発想に驚かされた作品。
警察中心の今野作品もいいけれど、こういう創作もイケてます。

レイクサイド

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レイクサイド (文春文庫)レイクサイド (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2006-02
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受験合宿のために湖畔にあつまった数組の家族の中でおきた殺人事件。

序盤は淡々と主人公視点で物事が進んでいくのですが、読み進めるに従って多くの登場人物の個性が明らかになっていく。読者も一緒に犯人探しをするタイプの作品。

消去法で少しずつ犯人候補が消えていき、最後に残ったのは・・・。

多少の中弛みはあるものの、結末が気になり始める後半は一気に読みたくなってしまう内容。
ボリュームも多くないので、さくっと読める、よい小説。
個人的には、東野作品としては中の上といったところでしょうか。

最強の戦略は「図」で立てる!―アイデアを一気に実現に近づける、図解発想の技術 (PHPビジネス選書)最強の戦略は「図」で立てる!―アイデアを一気に実現に近づける、図解発想の技術 (PHPビジネス選書)
村山 涼一

PHP研究所 2003-04
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仕事のなかでパワーポイントをつかって資料を書くことが多いのだけど、自分の考えていることや主題・パンチラインを効果的に図に表現するのは難しくて、苦戦することが多々。

なにかしら仕事のヒントになればと、以前買っていたこの本を久々に読み返してみる。

その内容は、図解やパワーポイントのテクニックというよりも、マーケティングや企画戦略立案といった、プレゼンによる意思伝達で仕事を進めていく人たちのための、思考プロセスを支援する内容。

チャートをつかって何を伝えるのかという図の出口よりも、チャートをつかってどのように考えるかというプロセスに主眼が置かれている。

紹介されるいずれのチャートも単純なボックスと矢印の組み合わせであり、そこには新しさがあるわけではないけれど、解決すべき課題に対して、「要素」と「論理」をどのパターンを使って思考するかによって、導き出される結論はきっと異なるものになるに違いない。
事象を並列で考えるのか、展開して考えるのか、それとも帰納的に考えるのか。本書に示された多くのパターンがヒントになるケースもありそう。

取り上げられているサンプルが商品企画向けのものが多いため、畑違いの私にとっては、わりとハイコンテキストな内容。
エンジニアとして、「おっ、これは使える!」という速効性の高いポイントは多くないかもしれませんが、思考の幅をひろげてくれるちょっとしたスパイスにはなってくれそうな一冊です。

貧困の光景

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貧困の光景貧困の光景
曽野 綾子

新潮社 2007-01-17
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曽野 綾子氏による、アフリカ諸国における貧困の真実を描いたノンフィクションレポート。
著者が自身の慈善活動を通してみた真実の光景がそこにはある。

「ルポ 貧困大国アメリカ」もそうであったが、飾ることのない真実は、ときにフィクションよりも重いテーマを私たちに突きつける。

本書に描かれているのは、日々の食事に困っている家族、教育を受けられない子供たち、満足に治療を受けることができない幼児といった、私たち日本人の多くが、抽象的に理解しているようなものではない。

慈善団体から恵まれたお粥を家族のために自分で食さずに汚れたポケットに入れて持ち帰る子供たち、着るものがないために寄付された毛布を明日の糧のために安値で売らなければいけない家族、屋根のないレベルの住環境における大人の性生活に影響されて増え続ける非成人のエイズ感染と人口問題に直面する集落。

お金や形のあるものは盗まれて失うリスクが常につきまとい、手に入れた糧や資産は家族だけではなく親族全員で分け合うべきもの。そういった私たちの想像を超える貧困国の常識のもとでは、少しばかりの形のあるモノの援助や、全体の一部の人数に対する支援といったものは、ほとんど効果を奏しない。

その結果、お金の向かう先は、私たちが意図しない方向に向かうことになる。

アフリカの貧困国の援助の最大のネックはこうした汚職と公的な金の私物化の習慣にある。ヨーロッパ諸国やアメリカや日本が、アフリカの貧しい国の援助をする、と決定することは、その国の国家元首とその一族の私財を増やすことを意味する

学校の規模を大きくし給食を与えるために行った金銭の支援をその校長が持ち逃げするといったエピソードが語るように、北の諸国から支援された金銭は、その多くがそれらの国の上層部に私物化されたり、汚職によって消えていくということが日常であるという。その校長のモラルの低さををどうこう批判するものではなく、それが常識であるという環境自体に問題があるのであろう。

寄付された貴重な金は、間違いない仕事に使わねばならない。しかし間違いない仕事というものが果たしてでてくるだろうか、という心配が、私の不眠の元だったのである。

著者自身、支援した場合には、その援助が確実にアフリカの末端の人々にまでいきわたっていることを自分の足で確認するといっているのには、そのような理由がある。

私自身も、大手の寄付団体を通じて定期的に金銭支援を行っているのだが、果たしてそのお金が、どのような使途で用いられているのかとても気になるところである。
そういった「正しい」と思われる行いが、きちんとその役目を果たせるような仕組みがないと、この問題は解決の方向に向かうことは難しいのかもしれない。

この地球上には、常に劇的な貧困と慢性的な貧困とがある。そして慢性的な貧困は、援助の対象としては目立たないから困難な状況は長く潜行して続くのである。

突発的な自然災害に対する支援ももちろんであるが、こういった慢性的な貧困に対する支援活動の重要性は高い。

この国際化時代を生きていく上で、日本に生まれた私たちができることはいったい何なのか、この本によって与えられたテーマは実に大きい。
この世界的な経済不況のなかで日本のODA予算も縮小している状況ではあるが、中間コストを削ったり、組織による不当な搾取を撲滅するなどして、適切な支援が実行されることを願うばかりである。

任侠学園

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任侠学園任侠学園
今野 敏

実業之日本社 2007-09-19
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「とせい」が面白かったので、続編である「任侠学園」も、さくっと完読。
前作で活躍したヤクザたちが、今度は学園を立ち直らせる。

腐った生徒たちと、モンスターペアレントたちを相手に華麗な立ち回りを見せる仁義に熱い男たち。
最後や親分が現れて・・・というストーリー構成はほとんど同じなんだけど、途中で結末まで予測出来ちゃうんだけど、それでも面白いから一気に読めてしまいます。

通勤中に読むには、こういった軽めの小説が気分転換になって良し。

とせい

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