ブックレビューの最近のブログ記事

伝える力 (PHPビジネス新書)伝える力 (PHPビジネス新書)
池上 彰

PHP研究所 2007-04-19
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最近メディアへの露出がすごい増えている池上さんの著書。

難しいこと・専門的なことを、相手に合わせてわかりやすく伝えることのプロフェッショナルによる「伝える技術」の指南書。

「話す」「書く」だけでなく、コミュニケーションを深めるためには「聞く」ことも大切だと説く。
NHK時代の「週間こどもニュース」で、子供にも分かるように時事ネタを説明することで「伝える力」を培ったという池上氏。

「自分がわかっていないと、人に正確に、わかりやすく伝えることは不可能です。」

子供に理解してもらうためには、物事の本質を十分に理解したうえで、対象である子供がどこに興味を持っているのか「聞く」ことも大事なことなのです。

本書では、プレゼンテーションや、スピーチで、相手の心をつかむテクニックをはじめ、ライティングの注意点なども広く浅く述べられています。
どのテクニックも、奇をてらったものでもなく、当り前のことのようにも思えるため、一見、物足りなさを感じてしまうのですが、これらを着実に実行するのは、そう簡単なことではありません。

「簡単なことは簡単に」「難しいことも簡単に」
これは何かを伝えるときの基本です。

戦略の断層

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戦略の断層――その選択が企業の未来を変える戦略の断層――その選択が企業の未来を変える
古我 知史

英治出版 2009-12-15
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かなりヘビーな1冊ですが、読みごたえは抜群。

企業がとるべき戦略は、企業の位置づけや成長過程のステージによって異なる。
起業時から成長後にいたるまでの、それぞれの企業のステージを、華道からネーミングした 備・突・構・攻・守・破・離の7つのステージにわけて解説する。
いずれのステージも、既存の日本企業を例としたケーススタディが充実していて、とにかく具体的。
企業の成長過程を追いながら、企業戦略を考える上で基本となるフレームワークを学べることが狙いである。

この本だけでは、現代の複雑な企業環境をとりまく、もやっとした霧を晴らすことはできないかもしれない。
しかし、何事にも基本は大切。明るい未来に向けて、立ち向かうだけの知識の第一歩くらいにはなるかもしれない。

各ステージを通じて学ぶことのできる、戦略概念やフレームワークは次の通り。

「備」:備えるという行為は、「戦略着眼」からはじまる
重点思考、仮説思考、MECE、演繹法と帰納法

「突」:参入とは「尖がる」ことである
ニッチ戦略、ポーターのバリューチェーン、戦略主体

「構」:足固めのための「ぶれない戦略方針と軸足と体制」
競争優位戦略、PDSなどの検証スキル、3C手法, マッキンゼーの7Sフレームワーク、セグメンテーションとターゲッティング

「攻」:事業を一気に成長させるダイナミックな取り組み
PPM、事業拡大マトリクス、機能戦略、事業部制

「守」:成長に代わって持続力の獲得がテーマ
ROIC、経験曲線、規模と範囲の経済、コストリーダシップ戦略

「破」:産業全体の枠組みを超えた視点で戦略を構築しなおす
SWOT、5つの力、V字カーブ、M&A、戦略的提携

「離」:イノベーションを起こす
破壊的イノベーション、コアコンピタンス、マーケティングミックス


戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
三枝 匡

日本経済新聞社 2002-09
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BCGでのコンサル業務、ベンチャー投資、大企業でのサラリーマン、そしてミスミの社長という多様なキャリアを持つ三枝氏による実話をもとにした経営戦略物語。

MBAを取得した若手の大企業社員が、ある日突然、経験のない医療機器業界の子会社へ取締役として出向になる。その会社を立て直し、利益を上げていくまでの過程を描き、企業戦略とは何であるかを学べるという趣旨。
ともすれば概論に終わってしまいそうなコンサル本とは違って、実話をもとにしているだけあってリアル感にあふれているところが良い。
題材自体はちょっと古いので、本書の中で企業のとる戦略そのものには斬新さはないが、その思考の過程はとても役に立つ。
三枝氏の熱い思いがいたるところから伝わってきます。

Amazon等での評判もとても良いようですが、自信をもって人に勧められる本です。
組織の一員という役割を超え、会社のことを考え始める30歳前後で、出会っておきたい1冊です。

ユニセフ・カンボジア事務所で働くユニセフ・カンボジア事務所で働く
藤原 幸恵

明石書店 2006-11-10
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何かを成し遂げたいとか、幸せに日々を過ごしたいとか。
人が生きる意味にはいろいろあると思うけど、人のために何かをしたいというのもその中の一つ。

恵まれすぎた国日本に生まれて、何か海外で人助けができないだろうかと考える人もきっと多いと思います。

この本の著者もその一人。
一人のOLが、途上国での国際貢献を目指し、奮闘する様子がとても具体的に描かれている。

著者の場合は、教育分野での貢献をターゲットとし、会社をやめて教育に関する学位と語学力をもとめて海外へ留学するところから始まる。
その後ユニセフへ入り、カンボジアで国連若手職員として農村開発の業務につく。
本書では、その過程やユニセフの組織構造、現地での仕事の詳細、仕事を通じで出会った意識の高い同僚たちとの交流が細かく説明されている。

この仕事に興味がある人にとっては、とても貴重な情報源となることでしょう。

国際貢献といえば聞こえはよいですが、命の危険にさらされる危険な仕事であることが、リアルに伝わってくる。だが、その分、仕事から得られる満足度も大きいはず。

その勇気と実行力は本当に素晴らしいと思います。

カンボジアの子供たちの笑顔はとてもすばらしく、生き生きとしていた。また、カンボジアの農村の暮らしはのんびりとしていて、時にはうらやましいとさえ思った。彼らの時間の感覚は日本人のものとはだいぶ違う。いつしか私ものんびり構えるようになった。


忘れ雪

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忘れ雪 (角川文庫)忘れ雪 (角川文庫)
新堂 冬樹

角川書店 2005-02
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いわゆる裏社会ものなどの、ダークな小説が多い新堂 冬樹氏による恋愛小説。

一匹の犬を中心に流れる7年という時間を越えてすれ違う男女の切ない恋物語。

「春先の雪に願い事をすると叶う」というセンチメンタルな背景と、サスペンスとしての人間ドラマとのギャップが面白いのだが・・・。

獣医に関するディテール名取材をもとにした描写は、リアリティがあって読み応えがあるのだが、前後半でストーリーの流れるスピードがあまりにも違いすぎて、違和感があったりもする。

次は著者の別の作品も読んでみよう。

健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ
畔上 司

草思社 2004-01-22
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体重超過の人のほうが、正常な体重の人のほうが早死にする
牛乳をのむと骨粗鬆症になりにくい
コレステロールと動物性脂肪が動脈硬化の原因になる
アルコールは体に悪い

通説として当り前のように認識されている健康に関するこういった知識を、本書では、データと研究結果を用いて否定していく。

適正体重が体によいというのは本当だろうか?そもそも「適正体重」自体が、保険業界や健康ビジネスによって恣意的に作られた数値だとしたら?実は、長生きすることができるための体重というのは、私たちが考えているよりもずっと高いところにあるという。

飲みすぎは良くないとされるアルコール。しかし、過度のアルコールには、肝臓病を引き起こすというデメリットだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの病気を未然に防ぐというメリットも多い。むしろ、メリットのほうが大きいという結果もあるという。

では、いったい、何を食べればよいのか?
健康ってそんなに大事なのか?
豊かな食生活はどんな価値を与えているのだろうか?
人間が生きていく上での基本的なところだからこそ、悩ましい。

皮肉たっぷりに通説を否定する著者は、わかりやすいコンセプトを示してくれる。

「自分の食欲に忠実になりなさい。」と。

3D立体映像がやってくる−テレビ・映画の3D普及はこうなる!−3D立体映像がやってくる−テレビ・映画の3D普及はこうなる!−

オーム社 2010-04-28
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3Dブームがきていますね。最近は映画もテレビも、3D一色。
コンテンツはまだまだこれからですが、少なくともインフラは揃いつつある感じ。

急に話題になり始めている3D技術ですが、その方式の種類は多く、実はずいぶん前から技術は実現されてきていました。
最近主流になりつつある、眼鏡を使ったものだけではなく、古くは赤と青のフィルムを使ったアナグリフ方式や、近い将来には実現されそうな眼鏡を使わないパララックスバリア方式など。

本書では、広く浅く、3D技術方式について触れられています。
歴史に始まり、将来のビジネス展開に至るまで。

技術書というよりは、幅広いターゲットを狙った入門書的な位置づけです。
ちょっと物足りない気もしますが、うまく整理されているとも言えるかもしれません。

参考までに、過去そして未来にわたって存在する様々な3D方式の名称をリストアップしておきます。

偏光フィルタ方式(IMAX, RealD, エックスポール)
時分割方式(XpanD)
波長分割方式(Dolby 3D)
カラーフィルター方式(アナグリフ, ColorCode3D, TrioScopics3D)
絶縁隔離方式(ステレオスコープ方式, ヘッドマウントディスプレイ)
視差分割方式(パララックスバリア方式, レンチキュラー方式, バックライトコントロール方式)
空間像表示方式(インテグラル方式, ホログラフィ)

いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」 (アスカビジネス)いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」 (アスカビジネス)

アスカ・エフ・プロダクツ 2010-04-12
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Google. Twitter, Wikipedia, ...
ネット経由で入手可能な情報が膨大になり、情報を集めるということは特別なスキルではなくなってきている。
それらの情報を使って、価値のある結果を出すためには、調べる技術だけではなく調べる力が必要になってきている。ネットだけの力にたよらず、リアルな世界にある情報を駆使して、差別化していくことが求められているのではないか、というのが著者の主張。そうすることで、プレゼン力、企画力、発想力の向上につながると。

全体を通じて著者の考えと共感できるところが多く、楽しく読むことができた。

従来WEBは、あるものを特定していくことに長けている。
調べたい事象がはっきりとしていると、WEBの検索技術を使えば、その答えや糸口を見つけることは本当に容易になった。

最近では対象物が明確でなくても、画像をつかった検索や、情報の鮮度を利用したフィルタリング、Twitterなどによる人間同士のコミュニケーション利用など、多彩な情報調査方法が実現されている。
しかし、それでも、実際に人と会って話を聞くことや、実際のその場所に足を運んで得られる情報には、ネットでは得られない貴重な情報が多く存在している。

相手の話し方や表情からは、その情報の確からしさを見極めることができるだろうし、お店で商品を手にしながら話している人の声からはリアルなマーケット情報を手に入れることができるだろう。

時間は有限である。

しかし、ネットで調べることに終始せず、その限られた時間のなかで、リアルな情報とネット検索をうまくミックスしていくことが求められている時期なのかもしれない。

最強確率論

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最強確率論-「絶対無敗」の法則 (学研新書)最強確率論-「絶対無敗」の法則 (学研新書)

学習研究社 2010-03-17
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確率うんぬんというタイトルにひかれて手にとりました。
著者の石橋達也氏は、パチンコをしたことがある人ならだれでも知っているという、ギャンブル界では超有名なパチプロのひとり。

パチンコなどのギャンブルにかぎらず、あらゆる事象は確率が支配しいている。
確率をしることで、世の中のいろんなことが見えてくる。

といった内容。
うーん、確率という言葉に拒絶反応を示す、新しいターゲットにはよいかもしれないけれど、
理系視点でみると、タイトルと比較して、ちょっとチープな内容かなぁ。

「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本

東洋経済新報社 2008-01-25
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とってもわかりやすい会計の本。
タイトルにある「1秒で」というのは、ちょっと煽りすぎの感はありますが、確かにわかりやすい。
多くの具体例をあげながら、貸借対照表と損益計算書を読むポイントを説明してくれています。

とはいえ、ROA、ROE、純資産調達コスト、キャッシュフローなどの用語が、わずかな説明だけでもって、普通に文章に点在しているので、多少の予備知識は要求されるかもしれません。

また、作者として、伝えておきたいポイントがあまりにも多いためか、それとも簡単なことばと表現のみで多くの会計概念を伝えようとしているためか、ところどころ話が発散しているように思える部分もあります。

とはいえ、よくまとまっているので、簿記の勉強をする前に、広義の会計概念を身につけるために読んでおきたかったなぁと思わされる一冊。

後半では、作者の意思もいえる、政府の金融政策に対する提言なども多数あり、読み物としてもうまくまとまっている気がします。

ベンダー・マネジメントの極意―プロジェクトを成功に導く外注管理ベンダー・マネジメントの極意―プロジェクトを成功に導く外注管理

日経BP社 2009-07
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購入してから半年近く、未読本の山に積まれていた1冊。
もっと早く読んでいればとちょっと後悔・・・。

というのも、この本、なかなかの秀作。

業務委託が当たり前のように行われているソフトウェア開発業界・IT業界において、ぜひ知っておくべき極意がぎっしりと詰まっている。
「極意」とはいえ、ひとつひとつは当然ともいえる内容。

後悔をしないためのベンダーの選び方
遅れを発生させないための効果的な進捗確認の方法
「言った」「言わない」が、裁判等へ発展しないための合意形成の方法
損をしないために加えておくべき契約書の書き方

ベンダーをうまく管理しつつ仕事を推進していく上では、当り前の内容ではあるけれど、めまぐるしく動く現場において何も参照せずに、最適の行動をとることは難しい。
ここまでぎっしりと、その当たり前のことが詰まっているところに、極意というタイトルに負けない重みがある。

そして、ハンドブックとして手元に置いておきたくなるような具体的な記述が多いこともうれしい。

進捗の確認のためのヒアリングの項目
業務委託で発生するコストのチェック項目
変更要求をやりとりするための抜けのないテンプレート
RFPに記述すべき共通の項目

などなど、すぐに業務に使えるような項目が満載なのである。
日本のベンダだけでなく、海外のオフショア先を相手にしても使えそうな情報もしっかりと抑えてある。

ベンダーと直接契約を交わし、管理を行うマネージャレイヤだけでなく、リーダーレベルの人も知っておくべき極意にあふれた本。


卒業 (講談社文庫)卒業 (講談社文庫)

講談社 1989-05-08
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「新参者」にも登場する、敏腕刑事加賀の学生時代を舞台にした推理小説、。

大学の剣道部と茶道サークルを中心に巻き起こる学生たちの不審死。

東野作品の中でも、本格推理の部類に含まれる硬派な構成で、小説単体としても面白い。

加えて、シリーズにもなっている加賀刑事の過去を知ることができるという側面が、この本のもう一つの魅力。
TVドラマ「新参者」を見ている人も、このシリーズの原点ともいえる本書は要チェックかもしれない。

あらすじで大づかみ『源氏物語』と平安文学 (講談社+α文庫)あらすじで大づかみ『源氏物語』と平安文学 (講談社+α文庫)

講談社 2008-06-19
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中学時代にその名前を聞いたくらいで、その中身をほとんど知ることのなかった「源氏物語」。

平安時代の女性作家によって書かれた恋物語というくらいの前知識しかなかったのですが、このあらすじ本のおかげで、その内容を知ることができました。

超モテ男の源氏が王朝内で繰り広げる、さまざまな女性との情事。
ただの恋愛物語という枠を超えて、結婚や出産、出世、そして家同士の闘争など、当時の社会事情や男女文化を知ることもできる壮大な物語であることに気づかされます。

本書では、登場する女性を個別に紹介したり、娘を位の高い家に嫁がせようと躍起になる父親を紹介したりなど、読者になじむように、独自の切り口で源氏物語を説明してくれています。

現代でも共感できるものも多く、古典文学がとても身近に感じられます。

さらには、源氏物語以外の、多くの平安文学についても、簡単に内容を紹介してくれるというおもてなしもうれしいところ。 内容は全く知らなかった 『宇津保物語』『落窪物語』なども、なかなか面白そう。

日本人である以上、たとえあらすじだけでも。、こういった名作に一度は触れておくのもありかもしれません。(残念ながら原文に挑むほどの素養もないので・・・。)

経済は感情で動く―― はじめての行動経済学経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
泉 典子

紀伊國屋書店 2008-04-17
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非常にわかりやすくかかれた行動経済学の本。
初期の経済学では、人そして市場は合理的に行動するという前提で、経済活動の計画と予測が行われていた。しかし、人間は、そんなに賢い生物ではない。

脂肪分5%のヨーグルトよりも無脂肪分95%のヨーグルトが好まれるし、

100人の進む先に、99人が助かる道と1人が危険な目にあう道があると、人は99人が助かる道を選ぶ。

そして、A,Bから好きなほうをえらぶことができても、A,B,Cと選択肢が増えると、Cが明らかに他より劣っていたとしても、人は迷って選べなくなる。

人は、自分の都合のよい面だけをみて選択をする傾向があり、多くの選択肢があると選択できなくなり、過去の選択の結果(後悔や成功)にも大きく影響をうける。3つの選択肢があると、真ん中を選びたくなる。
自分の持っている者に対しては市場以上の価値を見出し、100万円を得する喜びよりも100万円を損する苦しみのほうが大きい。
その割には、あがっている株は売りやすくても、下がっている株は売りにくい。

数字のマジックとも言えなくないが、人間のこれらの行動は、全く合理的な判断ではないものである。
しかし、こういった非合理な行動が積み重なって、経済が動き、世界が動いている。

最近の研究では、これらの合理的ではない判断をしているときの、脳の活動などのデータ採取も進んでいて、人が合理的でない判断をしてしまうロジックも明確になりつつあるらしい。

さまざまな事例をもとに、なぜ人がそんな判断をしていまうのかを、心理学ともくみあわせてとてもわかりやすく解説した良書。
コミュニケーション、マーケティングなどの分野にも共通する解説も多く、中で触れられている理論は知っておいて損はない。

自分への備忘のためにも、いくつかのキーワードをメモしておこう。
選好の逆転(preference reversal), 保有効果(endowment effect), サンクコストの過大視(overestimate of sunk costs), コンコルドの誤謬(mistake of Concorde), アンカリング効果(anchoring effect), 少数の法則(law of small number), 平均値への回帰(phenomenon of regression to the mean), フレーミング効果(framing effect), 損失回避性(loss aversion), 省略の誤り(false of omission), 後悔回避(regret aversion), プロスペクト理論(The theory of Prospect), ポートフォリオ理論(The portfolio theory), ピーク・エンドの法則(peak-end rule), ゲーム理論(Theory of Game), ソマティック・マーカー仮説(somatic marker hypothesis)

口のきき方

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口のきき方 (新潮新書)口のきき方 (新潮新書)

新潮社 2003-09
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しゃべりのプロである元アナウンサーの梶原氏による「言葉の使い方」に関するエッセー。

しゃべり言葉というのも重要な文化であり、守るべきものと変わっていくべきものとがあると個人的には思います。

本書では、変わっていくべきでないしゃべり言葉を中心に、テレビなどのマスコミによる弊害や、スマートに見える口のきき方について触れらています。

テレビで多くの芸人が発する言葉を、言葉を汚しているとみるか、新しい文化の発信ととらえるのかは、難しい課題なのかもしれません。

読み物として、すぐに読めてしまいますが、実用性は高いのかも。
日々の会話の中で、次のような言葉を使っている人は、注意してみてはいかが?

「私的/俺的には・・だけど。」
「海とか行きたいね。」
「てゆうか」「ぶっちゃけ」
「いちおう・・・なので」
「とりあえず・・・お願いね」
「わりと・・・だね」
「なにげに」
「・・・系」
「・・・状態」
「・・・のほうは(いかがでしょうか)」(ほうほう症候群というらしい。お釣りのほうは?ご注文のほうは?)
「・・・というかたちで」
「(こちら)・・・になります」
「こだわりの・・・」(こだわりは悪い意味で使うことが多い)

地学のツボ―地球と宇宙の不思議をさぐる (ちくまプリマー新書)地学のツボ―地球と宇宙の不思議をさぐる (ちくまプリマー新書)

筑摩書房 2009-02
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出張中の乱読書の一つ。
地学に関する本は初めてかもしれない。
高校で習うようなレベルの内容を非常にわかりやすく解説されており、加えて最近の研究の内容なども適切に情報追加されていて、好感触の一冊。

火山の噴火、海水温度の上昇、地震、日々の気温、地形形成、生命の誕生、植物の発達、恐竜の滅亡、地球の寿命・・・
この星で起きている地球規模の様々な出来事は、ほとんどが「地学」にひもづいていることがよくわかる。

なんとなく知っていた、地球の構造。
核があり、マントルがあり、プレートで覆われているのが地球。
そこには、プルームテクノニクスという考え方がある。
地球上のプレートが衝突しながら沈み込んでいくと、そのプレートは融解し蓄積し、地球の中心部へと流れおちていく。こうして、地表で冷えたプレートが中央に下降するのが、コールドプルーム。
その反作用として、核から高熱のプルームが地表へ流れだすことになる。これがホットプルームである。

現在は南太平洋やアフリカ大陸へホットプルームが流れ、ユーラシア大陸の両サイドではプレートが沈み込んでコールドプルームが生じているらしい。ハワイもホットプルームの産物のひとつである。
これら両方のプルームが、地球サイズで循環することで、プレートの動きが活性化され、各地で地震や火山噴火、地殻変動などの現象が起きるのである。

40億年を超える地球の歴史では、こうした現象が繰り返されて現在にいたっている。
とてもスケールの大きな話だけれども、ちょっと理解が深まると、とても面白い学問のひとつ。

プルームやプレートの話だけでなく、海洋循環の話、地球の歴史、宇宙の構造に至るまで、幅広く解説されています。
とてもわかりやすいので、自分の住んでいる地球について理解を深めたい方には、よい入門書かもしれません。

会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?

朝日新聞出版 2009-11-06
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百年コンサルティングの鈴木貴博氏による、企業分析のノート。
多くの日本企業が、なぜ、こんなに苦しんでいるのかを、経済学の基本原理を説明しつつ、さまざまなデータと共に紹介している。
リーマンショック後に、書かれたものなので、情報は割と新しく、納得のいくものが多い。

トヨタがリストラを敢行し、企業規模を縮小しているのは正しいのかどうか
セブンイレブンが生み出した、小売業の付加価値の重要性
不況時のマクドナルドや薄型テレビの低価格戦略
迷走するJALが抜け出せない高付加価値高価格戦略

具体的な企業の事例をもとに、所得弾力性や価格弾力性といった、基本的な経済指標を学べる点もうれしい。
そして、この本のすごいところは、それぞれについて、著者なりの、明確な解を提示しているところ。

複雑な経済社会においては、物事はそんなに単純に解決はできないかもしれないが、基本原則は普遍のはず。本書には、多くのヒントが込められている。最後の章に書かれたメッセージが印象的だったので、ここに引用しておきます。

経済成長は、国民の野望や欲望がドライブするものである。
いくら暗い時代でも野望を捨てない者だけが、経済を牽引してく力を持つ。
「豊かな者がなるべくお金を使うようにする」

内容もさることながら、何よりも著者の切れ味のよい表現が気に入りました。
難解な経済学を、わかりやすく説明することは困難。しかし、この本は実にわかりやすい。
100を知る人が10を伝える余裕というものが感じられる気がして、文章にもその余裕が感じられます。

あとがきにも触れられていますが、

より多くの人の人々に伝えるために、結論が同じならばより単純な説明を選ぶ

というスタンスが随所に見られます。
この考え方は、難解なものを文書にして説明するときだけではなく、ビジネスの現場においても広く使えるはず。本書の内容とは直接関係はありませんが、大切なメッセージを受け取った気がします。

カッコウの卵は誰のものカッコウの卵は誰のもの

光文社 2010-01-20
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久々の東野圭吾小説。

スキー選手の父娘を中心とした複数の家族の間に存在する、複雑な関係。
娘の母親にはどのような過去があったのか、最先端のスポーツ医学は何を明らかにしていくのか・・・。

いつものようにさくさくと読み進めるのは良いのだけど、本作は、私にとってはイマイチな感想。
最終章で、強引に話をまとめた感もあるし、読み終わった後に、ちょっと違和感が残る感じ。

それにしても、「カッコウの卵は誰のもの」という、好奇心をそそるタイトルのネーミングは絶妙。
もともとは「フェイク」というタイトルだったらしいですが、それと比べると、内容をうまく象徴した内容になっていると思います。加えて、「売れる」タイトルになっている気もしますね。

笑う脳

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笑う脳 (アスキー新書)笑う脳 (アスキー新書)

アスキー・メディアワークス 2009-08-07
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そのタイトルとは対照的に、しっかりと真面目に「笑い」について考察した本。

「この地球上で笑うことができるのは人間だけである」という一節からもわかるように、笑いというのは非常に高度なコミュニケーション手段である。

本書では、さまざまな人との対談をもとに、「笑い」をさまざまな視点で科学していく。

最近は、テレビをつけると笑いがあふれ、他人から強制的に笑いを押し付けられることは多くなってきている。一方で、自分たちで笑いを作り出すことが下手になり、そのための努力を怠るようになってきたのではないかと警鐘を鳴らす。

メディアへの露出も多い茂木先生の、力強い発言の裏にある、「笑い」の脳科学研究の深さを垣間見ることができる一冊。

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
伏見 威蕃

日本経済新聞出版社 2008-01-19
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この10年で世界は大きく変わった。

私たちが眠っている間に、欧米や日本企業のコールセンターはインドや中国に設置されるようになり、個人のジャーナリストがワシントンポストなどの専門誌を超える価値のある情報を扱うようになり、その日の天気に応じて最適な在庫調整ができるほどのきめ細かい在庫管理が可能な時代なってきた。

情報の伝達速度が著しく上がり、地域の違いは情報格差の要因ではなくなった。まさに世界はフラットになったのである。

上下の2巻からなる本書の上巻では、フラット化させた10の要因をボトムアップで紹介している。
ベルリンの壁の崩壊、インターネットの登場、インドを代表とするアウトソーシング、UPSなどのインソーシング、ウォルマートに代表される徹底されたサプライチェーン、などなど。

いずれも具体的な企業名を題材にした、かなりしっかりとしたレポートになっている。

大きな変化の時代を迎えた21世紀l。

人々が変化にのみこまれるか、あるいは置き去りにされないように変化を吸収するのか。
新しいグローバルなプライヤーが次々と生まれてくる中、企業は生きぬくために何をしなければならないのか。インドや中国から大量な労働力が放出された場合になにがおきるのか。

米国や日本の一部の労働者は、フラット化によって水平に移動しなければいけないかもしれない。しかし、経済競争はゼロサムゲームではない。
プレイヤーの登場と同時に、複雑ではあるが、とてつもなく大きな市場が広がったことも忘れてはいけない。
自分のパイを守ろうろするのではなく、自分と自分の社会が複雑で大きなパイを得られるように、事業の投資を判断していくことで、このフラットな時代に適した新しい事業が生まれてくるはずだ。

著者のフリードマンはいう。

生まれる産業も、始めるビジネスも、やる仕事も無限にある。人間の想像力だけがそれを制約している。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
伊豆原 弓

翔泳社 2001-07
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数年ぶりに再読。
良い本は、読むたびに新しい発見があります。

市場を開拓し、会社にとって新しい利益の原泉となる可能性のあるイノベーティブかつ破壊的な技術が、安定した大企業から生まれることはほとんどありえない。
それは、合理的な投資ではないからである。
その理由は3つ
1. 破壊的な製品は利益率が低い
2. 破壊的な製品が商品化されるのは小さな市場
3. 企業にとって収益性の高い顧客が、破壊的な製品を求めないこと

合理的なプロセスで運営されている企業であればあるほど、上記のような場面では合理的な判断として、投資を否定することが正しいプロセスとなる。ここにジレンマが存在する。

本書では、多くの具体的なケーススタディをもとに、持続的技術を追い続けた企業の多くがいずれ衰退し、破壊的技術にチャレンジした新興企業が成功した事例をとりあげている。

そして、そこから得た経験則をまとめ、企業が破壊的技術にとりくむためのポイントをとりあげている。

新しい市場の成長率を押し上げる
市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ
小規模な組織に小さなチャンスを与える(能力のある人材を能力のある組織に割り当てる)

本書の初版が書かれてから、9年近くの月日がたつが、その内容はまったく色あせることはない。

海外企業の低コスト戦略への抵抗に苦しむ、多くのメーカーの経営者やエンジニアが今もまさに悩んでいること、そのものズバリがここでは述べられている。

(最近は別の品質話題で賑わっていますが、)ハイブリッドカーを成功させたトヨタや、iPhoneを世に送り出したアップル。
少なからず、このジレンマを乗り越えた企業も存在する。

この本と、これらの企業の事例から学べることは多いはずだ。

ブリッジマンの技術 (講談社現代新書)ブリッジマンの技術 (講談社現代新書)

講談社 2008-12-17
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日本人同士で話をしていても、以外とコミュニケーションについての課題は多い。
実際、私たちのまわりでも、マーケティング部の人間とエンジニアとの会話がかみ合わなかったり、高齢者の方とはうまく表現に気を使わないと意思疎通が難しかったり、というケースが多い。

それらは、考え方の枠組み(フレームワーク)が違うからだと、火山学者である著者は述べる。
そして、それらのコミュニケーションを円滑に進める、「フレームワークの橋渡し」ができる人たちのことをブリッジマンと定義している。

たとえば、国会答弁の会話や、特許の請求項などに書かれた言葉は、常人には理解しがたいものがある。それは表現の枠組みが違うからだと考えれば納得できる。

この枠組みの違いを乗り越えるために、この本の中では、まず相手を知る方法、そして自分を変える方法が述べられている。

人間は自分の見たいものしか見ようとしないという、心理学でいう「認知のバイアス」がある。
それゆえに、コミュニケーションがうまくいかないのは自然なこと。

コミュニケーションがうまくいかない場合に、相手が少しでも考えを変えてくれれば、と思うのが普通である。
しかし、このバイアスを理解していない相手に対して、考え方を変えようとするのは解決策にはならないことがほとんど。
状況に応じて「少しだけ自分を変える」というのが、ブリッジマンとしてのコミュニケーションの鉄則らしい。

なるほど、「少しだけ」というのがポイント。
フレームワークの部分だけ、自分の性格や好みのことはおいておいて、一時的に相手に合わせておけば、あとは自分のスタイルでのコミュニケーションができるはず。

わかりやすくて、実践的なヒントがちりばめられた一冊。
相手に変わってほしいと悩んでいる人は、一度目を通してみては?

ソニー VS.サムスンソニー VS.サムスン

日本経済新聞出版社 2009-08-06
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家電業界の2強であるソニーとサムスンについて、韓国人の著者が鋭く分析をした書。
ひとことで、成功、失敗と語れるほど単純な話ではないが、ここ数年のソニーとサムスンの優劣を分けた理由が客観的かつ明晰に分析されている。

両社の違いは、3章のタイトルにもなっている「デジタルドリームキッズと刺身屋」ということばに象徴される。
時代を切り開くコンセプトメーカーとして、アナログ時代からいち早くデジタルエンターテインメントの世界へ移行しようとしたソニー。そして、半導体を刺身にたとえながら、徹底した生産管理と在庫削減で効率化を追求したサムスン。

21世紀の時代という舞台で、両者の戦略の結果は、明確な優劣となって現れた。
その理由の多くは技術力の差ではなく、人事・リーダーシップの問題であり、組織の問題であると。

アナログ時代に栄華を極めたソニーのビジネスが、デジタル化に伴って陰ってきたのにはいくつかの理由がある。
時期を逸したブラウン管工場への投資を、埋没費用として生産できず、PDPやLCDへの投資が遅れたこと。
森田氏、井深氏、大賀氏から先、適切な後継者を育てることが出来なかったこと。
グローバル企業を目指して現地化をすすめながらも、その運営は大賀氏をはじめとする一部の個人に依存し、日本的な企業活動全体がついていけなかったこと。
EVAの導入によって、カンパニーによる行投資へのインセンティブが失われてしまったこと。

一方のサムスンの特徴は明確である。
進化の流れが速い半導体の進化の中で、適切に投資を行い先行企業として、先行者利益をしっかりと価値とったこと。
イコンヒ会長と少数精鋭の秘書室の下す、軍隊的とも言える絶対的な「恐怖経営」による意思決定の速さ。
組織に忠誠心を誓い、組織文化に沿った人だけを選別する、徹底した採用人事。

上記に加えて、現在、サムスンがソニーに対して優位に立っている理由の一つは、明確な目標(ソニー)をもとに走り続けることができたからと著者は説く。
その目標を失ったサムスンが、これから先、ソニーと同じように迷走することは大いにありえる。
サムスンがソニーと同じ道を歩まないためにはどうすればよいのか、そのヒントはこの本の中にあるのかもしれない。

このレポートがまとめられた2008年以降も、驚くほどのスピードでサムスンの成長は続いている。
為替の影響を抜きにしても、サムスンはすでにトップメーカーのひとつとして、時代を切り開くことに挑戦し始めている。
この本の分析通りにサムスンが先頭を走ることができるのか、ソニーの巻き返しが始まるのか、2010年も両社の動向には注目である。

アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターンアドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン
伊豆原 弓

日経BP社 2009-10-22
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著者の定義するアドレナリンジャンキーとは、優先順位が絶えず変化し、納期まで時間が足りた試しがなく、プロジェクトはすべて急ぎ、次から次へと緊急のプロジェクトが押し寄せ、誰もが猛烈に忙しい、切迫感があることがよしとされる、そんなアドレナリン中毒の組織のこと。

仕事をする最良の方法は、計画を立てることではなく、可能な限り早く走ること。

うーん、相変わらず、デマルコの指摘は厳しい。

この本には、アドレナリンジャンキーにありがちなエピソードと、そんなジャンキーたちを少しでもよくするためのちょっとしたヒントが全部で86も、ぎっしりと詰め込まれている。

ちょっとだけ備忘録も兼ねてメモをしておこう。

「フェイスタイム」
分散プロジェクトでは、顔を合わせることが大事。確実に失敗させる方法は、コスト削減お圧力に屈して、出張を制限すること。

「永遠の議論」
多くのチームは、いかなる決定も最終的なものとは考えない。人々は賛成のときだけ、その決定に従えばよいと考えている。決定を受け入れるという倫理を確立するのはマネージャの責務である。

「かかし」
かかしは、クライアントの批判を得るために意図的に提供されるものだ。人々は白紙から答えを作ることは嫌がるが、すでにあるものは平気で批判する。

「残業に見る予兆」
残業は、いつも熱意とプロフェッショナルからくるものに見えるが、本当の原動力は恐怖であることが多い。

「まず話す、次に書く」
どれほど形式ばった組織でも、短時間で効果的に意思疎通を行うときは会話を使う。どれほど敏速な新興企業であっても、あとに残すべき決定を伝えるときは文書を使う。

「ダボハゼ」
チームが適切に処理できないほどの仕事を受けることは、マネージャとして卑劣な行為である。

Binary Hacks ―ハッカー秘伝のテクニック100選Binary Hacks ―ハッカー秘伝のテクニック100選

オライリー・ジャパン 2006-11-14
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ずーっと読みたかった本のひとつ。
「ソフトウェアの低レイヤの技術を駆使したプログラミングノウハウ」を集めたオライリー本。
ツールの使い方、プログラミングテクニック、OSのシステムコールを使った解析方法などが、幅広く列挙されています。

副題にはハッカーのためとの煽り文句がありますが、組み込みソフトウェア開発の現場ではどれも必要なものばかり。

世の中のソフトウェア開発のトレンドと同じベクトルの技術(たとえば、アプリケーションフレームワークとか)などは、書籍やWEBで目にすることも多く、技術を理解できるチャンスは多い。

一方で、この本の先にあるバイナリの世界は、ある種地味で、積極的に探さないと情報を得たり身につける機会の少ない分野。
しかし、すべてのソフトウェアに共通する根本技術でもあり、重宝される希少分野ともいえ、ある程度の規模のチームになれば、この技術を駆使できるエンジニアは重宝されることは間違いない。

この本で書かれているテクニックを、しっかりと自分のものするには、実際に手を動かしながら、じっくりと時間をかけて読み解く必要があるかもしれませんが、必要なときに参考にするリファレンスとしても十分活用できそう。

この本には、数年前に出会いたかったですね。

漂流する広告・メディア――12人のキーパーソンと語る「マス×ネット」の今漂流する広告・メディア――12人のキーパーソンと語る「マス×ネット」の今

日経BP企画 2009-12-01
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混沌としている業界のひとつ、「広告」の世界。

その広告の世界でいきる著名人が語るリアルな感覚。
TVプロデューサーおちまさと、ピンクリボンを広め中西氏、東京ガールズコレクションを成功させている永谷氏ら12名の広告マンが語る広告の世界。

そこには、テレビや雑誌のマスからネットへ、と簡単に語られるモデル転換の議論を超えた、広告の世界の奥深さが広がっています。
確かに、ネットビジネスの台頭によって、広告ビジネスのモデルは変化し始めていますが、必ずしもマス広告が終焉を迎えるわけではありません。

マスメディアに比べるとリーチが極端に短いネットは、本来の広告の意味である「広く告げる」すなわ多くの人へリーチすることが難しい。
ネット広告とマス広告は互いの特性をよく考慮して統合的に実施されるべきであり、マス広告の代替ソリューションとして語られることの多いネット広告ではあるが、決して二元論で考えるべきではない。

今後注目される、企業からの一方的な情報発信を超えた、次世代IMC(Integrated Marketing Communication)による、広告戦略とはどのようなものか、そのヒントが識者たちの会話から見えてきます。

まさに迷っているとも思える2010年の広告ビジネス。

ユーザのマス広告離れが進む現在、最適な効果を生む宣伝のビジネスモデルに生まれ変わろうとしてる、そんな大きな時代の変化を感じられる一冊です。


ミドルワールド 動き続ける物質と生命の起原ミドルワールド 動き続ける物質と生命の起原
三井恵津子

紀伊國屋書店 2009-12-03
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ブラウン運動という現象をご存知だろうか。
溶媒中に浮遊する微粒子が、ランダムに運動する現象である。

その現象を最初に発見し報告したロバートブラウンは、植物学の研究の中でその現象を発見した。
1827年のことである。

植物を通して、生命の原点と交配のなぞを追っていた中で発見された花粉の微粒子の運動(ブラウン運動)は、実は生命とは関係なく、特定の大きさの微粒子に発生する物理現象だった。
そのなぞは、それから1世紀近く後に、アインシュタインによって証明されることになる。

科学史にはブラウンの成果が「ブラウン運動」として記録が残っているが、当時のブラウン本人にとっては、きっと大きな混乱があったに違いない。
自分が信じ、研究を続けていた花粉から生じた粒子の挙動が、自分の想像をはるかに超えた現象であるとわかった瞬間、彼はいったい何を思ったのだろう。

この本では、その観測可能な粒子の運動をきっかけとして、微粒子の不確定性原理の話、原子の振る舞いの話、そしてそれが現代技術として生きている現代、さらには、粒子が生み出した生命の起源にいたるまで、とても壮大なストーリーが繰り広げられる。

ノンフィクションでありながら、まるで作られたストーリーのような科学史の世界を展開する一冊。
「ミドル」と定義された、観測可能な微小な世界をテーマに、科学に見せられた人々を描く物語は、真実だからこその面白さを秘めている。

オフショア開発に失敗する方法―中国オフショアのリスク管理オフショア開発に失敗する方法―中国オフショアのリスク管理

ソフト・リサーチ・センター 2008-10
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多くの欧米企業が中国やインドを使って、ソフトウェア開発のオフショア化を進めています。
そんな中、日本では、その一歩を踏み出すことができずに、自社や国内のソフトウェアハウスを使って、開発を進めている企業が多い。

十年以上前を振り返ると、あうんの呼吸が通じる日本人ならではの低コストなコミュニケーションは、日本ならではの強みでした。
だからこそ、経済資源が乏しいながらも、諸外国と比べても高度な経済成長を遂げることができたのです。
ところが、今はその「あうん」が足かせとなって、自分たちの仕事を、より低コストなオフショア先に移すことができなくなっています。この「成功者のジレンマ」と呼ばれる状況から、一刻も早く抜け出さなければいけません。

この背水の陣とも言える経済状況の中、いくつかの企業が中国にオフショアを進めてきています。
日本語を使えるブリッジエンジニアが多く、地理的に近い中国は、日本にとっては最適なオフショア対象国のひとつ。
しかし、実際には、オフショアに成功した企業もあれば、投資対効果の側面で失敗している企業もあります。
苦しい時期を何年もかけて乗り越えて、長い付き合いを経て初めてコストメリットが出てくるというのは、短期で収益を上げなければならない企業にとっては、やはり厳しいのかもしれません。

ではなぜオフショア開発は失敗してしまうのか、そのアンチパターンをうまくまとめたのがこの一冊。

仕様の出し方、文章の書き方などのテクニカルな側面だけでなく、中国の国民性に依存した異文化コミュニケーションのポイントや、中国の会社と付き合うことで生じやすいリスク(為替や天候などにいたるまで)など、多角的にまとめてあります。
さらに、実際にオフショアを体験した企業のマネージャやリーダーによるレポートなども引用されていて、とてもリアルな内容となっていてとても有益です。。

筆者が重ねて強調しているのは、オフショア開発は新規事業に相当し、既存事業の拡張と考えてはいけないということ。
オフショアが初めての企業であるなら、短期で収益を上げようとはせずに、3年先を見据えた企業活動をしなければならない。これを取り違えた企業は確実に失敗しているというのが筆者の見解のようだ。


新参者新参者

講談社 2009-09-18
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好きですねぇ、この作品。
実に斬新な構成で、1冊で9度美味しいともいえる長編小説。

東京の下町を舞台に繰り広げられる、人情味の溢れるショートストーリーが、これでもかとちりばめられています。

その独特とも言える下町の空気の中に、敏腕「新参」刑事が、上手く溶け込みながら、町の人と交流を交わし、小気味よく活躍してくれる様はとても爽快です。

疑心―隠蔽捜査〈3〉疑心―隠蔽捜査〈3〉

新潮社 2009-03
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今野敏の描く竜崎シリーズの第3作。

主人公竜崎のキャラクタも、シリーズを通して徐々に定着してきたこともあって、早い段階でストーリーに没頭できる。

過去に多くの難事件を解決してすっかりと有名人になったのにもかわらず、その名声におごることもなく、当の本人は相変わらずマイペースで自分の職務を愚直にこなしていく。

本作では、新たに発生するテロ事件の解決にむけた物語だけでなく、彼自身の新たな人間性発見にも多くのページが割かれている。

クールな主人公を期待している愛読者からは、否定的な意見もでそうな内容であるが、個人的にはまあありなかなと。
今回の構成が吉か凶か、それを見極めるのは次回作を読んでからでもよいかもしれない。

単体で読むよりも、1作目から通して読むむほうが、はるかに充実した内容になると思うので、もしこの本を手にした人は、シリーズを順に読むことを強く勧めます。

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

講談社 1997-05
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たった二人の登場人物が繰り広げる物語。
玄関に内側からカギのかかった古い家を訪れた男女が、その家にまつわる秘密と、自分たちとのかかわりを明らかにしていく。

その家の中でリアルタイムに事件が起きるわけではないのだけど、話が進むにつれて淡々明らかになっていく事実が実に怖い。

文中に登場するひとつの日記がある。
その日記の内容が、読むたびに新しい事実を生み出していく。
日本語の面白さをうまく利用し、読者の想像をはるかに超えた物語を展開させてくれる。

ほんとに東野圭吾という人の技術力には驚かさます。

ぜひ舞台化してほしい作品。

人を動かす

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人を動かす 新装版人を動かす 新装版

創元社 1999-10-31
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ビジネス誌などで、人気の自己啓発本ランキングを行うと、からなず上位に入るこの一冊。
アマゾンでも200を超えるレビューがつくほどの人気。

もともとの原題「友をつくり人を動かす法」にあるように、ひとりではできない大きな目標を実現するために、いかに周囲の人に影響を与え動かすのか。

人間の心理を利用したテクニックという表面的なものではなく、この本を読んだ人自身の行動指針が変わることで、結果として周囲の友に影響を与えていく、という実にすばらしい行動指針が語られている。

そして、それらが小難しい論理ではなく、柔らかい語り口で、多くの実例をもとに述べられている。自己啓発本というよりも、チームが機能した多くのケーススタディともいえなくない。

どれも当たり前で常套のことともいえますが、もし、ここに書かれていることが実現できていないマネージメントがいたとしたら、その人をはじめ、その人のいる組織は決して、一流の結果を出すことはできないでしょう。

人間関係には悩みが尽きません。
人を動かす3原則、人に好かれる6原則、人を説得する12原則、人を変える9原則。
きっとここにはヒントがあるはず。

人を動かす原則のひとつは、人の立場に身を置き、強い欲求を起こさせること。

「まず相手の心の中に強い欲求を起こさせること。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、やれない人は、ひとりの支持者を得ることにも失敗する。」

徹底抗戦徹底抗戦

集英社 2009-03-05
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世間を騒がせた元ライブドアの堀江貴文氏の逮捕劇の裏側をつづった物語。

物事には常に複数の側面がある。
この「徹底抗戦」では、ライブドア事件を堀江氏側の視点で語られている。

世間のいうように、堀江氏の拝金主義と思想が引き起こした「事件」なのか、それとも検察や司法をとりまく古い慣習が彼のぶっとんだ行動についていけなかったことによる検察権力振りかざしの犠牲なのか。

どちらがホントかはわからないけれど、この本に書かれたことの8割が本当だとしても結構、衝撃的な内容。

実名を出すことを恐れないその大胆な告白と、勢いのある文章から、堀江氏の頭の良さと、すさまじい客観力がうかがえる。

他方、人は逮捕されると何が行われるのか、留置所ではなにが起きるのか、そして裁判を起こすとはどういうことなのか、など通常語られない事実もしっかりと語られていて、純粋に面白い。
最近世間を騒がせている芸能人・有名人の逮捕ネタともリンクして、芸能ニュースをより楽しむための素養にもなるかも。

赤い指

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赤い指赤い指

講談社 2006-07-25
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老人介護、そしてひきこもり少年という2つの時事テーマを主題としたサスペンス。

崩壊していく家族を描いた妙にリアルな展開と、リアルがゆえにちょっと切ないストーリー。

作品に描写された表面的な事象だけでなく、その裏にあるメッセージが心を揺さぶる作品。

おすすめの東野作品。

ソフトウェアアーキテクトが知るべき97のことソフトウェアアーキテクトが知るべき97のこと
Richard Monson-Haefel

オライリージャパン 2009-10-05
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自分の仕事との関連も深く、最近読んだ本の中では、ググッときた1冊。
ソフトウェア業界の著名なソフトウェアアーキテクト達による97のエッセイ。

エンジニア向けの本であるにもかかわらず、技術的な内容よりも、ビジネスドメインとのかかわり方や、仕事の仕方、精神論のような記述が多いのは、ソフトウェアアーキテクトという役割の特性なのでしょう。

97のエッセイのうち80%くらいは共感できるもの、そして残り20%くらいに新しい発見もちらほら。(いくつかは、自分とは異なる意見のものもありましたが・・・。)

その80%の共感できるもののうち、どれだけのものを自分が実際の職場で「実践」しているだろうか、できているだろうかと考えてみると、、、これが案外出来ていないんですよね。

わかっていても、実現できないことがこんなにもある、という自分のスキルマップの棚卸をすることもできて、とても有用な1冊。

アーキテクトとは、時には、エッセイで述べられているような方法論を、相手に合わせた様式に翻訳して、理解させ、説得させなくてはいけないことも多い仕事。
一見抽象的になりがちな精神論・方法論を、しっかりと文章として表現できているところも、作品をよせているアーキテクト達の表現力の高さを感じずにはいられません。

原書では読めていませんが、下記から同じものを原文で読むことができます。
http://97-things.near-time.net

以下、備忘録がわりにいくつか引用。

フレームワークとかベンダーの言う「ソリューション」といったものの多くは、往々にして付随的複雑病の兆候を示しています。個別の問題を解決してくれるフレームワークは役に立ちますが、やりすぎると解消してくれる以上に新しい複雑さを持ち込むことになります。(中略)まず、象牙の塔から紡ぎだされたフレームワークではなく、現場で生まれたフレームワークを選ぶことです。(02 本質的な複雑さは単純に、付随的な複雑さは取り除け)

なぜパフォーマンステストがそんなに大切なのでしょうか。最大の理由は、どのような変更を加えたときにパフォーマンスが急降下したかわかることです。これならパフォーマンス問題に直面したときに、アーキテクチャー全体を相手にえずに最近に加えた変更に焦点を絞り込んでいけるのです。(13 パフォーマンスの検討に早すぎるということはない)

設計の判断として2つの選択肢のどちらを選らんでもよさそうな感じがする時には、アーキテクトは1歩下がって考えなければなりません。選択肢AとBのどちらを選ぶかではなく、A,Bどちらを選んでも、それほど重大な意味を持たないようにするために、どう設計するかを考えるのです。(24 不確定性が潜むという感覚を磨け)

アーキテクチャの図表は、いわば1万メートルの上空からの目、飛行機から見た風景です。ふつうは、システムに対する視点はあとひとつ、すなわちソースコードしかありません。しかし、これら2つの視点はソフトウェアの品質について多くの情報をとりこぼしてしまいます。(中略)必要なのは、上空300mからの目です。(28 上空300mからの目)

再利用を行うために必要な人々。
1.再利用できるものがあることを知っている人
2.使い方を知っている人
3.自分で作るよりも再利用したほうがよいと思っている人
(26. 再利用はアーキテクチャだけではなく人と教育の問題と心得よ)

現実の世界はずっと前から同じ問題に取り組んできているのです。遅れた手紙、破られた約束、行き違いになったメッセージ、間違って口座への支払いなど。(中略)ですから、あなたの頭痛のために現実世界を打た非難するのではなく、解決方法を探す場所として現実世界を活用して下さい。(47 現実の世界にようこそ)

明確な原則を持つアーキテクチャは、何から何まで面倒をみることからアーキテクトを解放します。レバレッジや影響が大きくなるのです。(59 趣味や個人的な意見ではなく、原理原則に従え)

ソリューションがあまりに巧妙すぎて自意識過剰みたいだと感じたら、手を止めて考えましょう。そのソリューションは、問題にぴったりと合っているでしょうか。(62 単純なものは単純に)

よくできたアーキテクチャはごく普通のことの積み重ねです。有能なアーキテクトの多くは、知識としては知っているものの、習慣として実践できているわけではないことを思い出すために、毎日毎週のチェックリストを作り、それに従うようにしています。(78 勤勉さが必要)

優れたアーキテクトは、自分があまりよく知らないドメインについては、その道のエキスパートに譲るものです。(79 自分の判断に責任を持て)

いかに魅力的に感じたとしても、すでにわかっている要件やユーザーが希望している特性以上に大規模なシステムを設計するのは避けましょう。大きな設計ではなく、大きなビジョンを持つのです。(97 優れたソフトウェアは構築されるのではなく、成長する)

プレゼントの経済学―なぜ、あげた額よりもらう額は少なく感じるのか?プレゼントの経済学―なぜ、あげた額よりもらう額は少なく感じるのか?

プレジデント社 2009-11-12
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クリスマスプレゼントのシーズンを目前に、なかなか面白いタイトルに惹かれて。

著者である経済学者がこのテーマに取り組み調査したところ、クリスマスシーズンに全米で消費されるクリスマス費用は660億円にもなるらしい。
そしてさらに、彼の調査によると、プレゼントは、渡した瞬間に価値が18%減少する。つまりクリスマスの瞬間に100億ドル近い価値が消失することになる。

つまり、友人からもらった20ドルのCDに20ドルの価値を感じることもあれば、おばあちゃんからもらった100ドルの木製のおもちゃに10ドルの価値しか感じない孫もいる。
これらを平均すると18%分の価値が目減りするらしいのである。

ほしくないものをもらっても作り笑顔で「ありがとう」と答える孫の気遣いだったり、時間がない故に相手の望んでいないものを「とりあえず」社交辞令としておくる風習だったりが、この傾向を強めている。

そうはいっても、消費活動が続けば経済は潤うのだからいいではないかという意見に対して、著者は反対を唱える。
消費とは、価値以上の価値があるものを買うということを指すのであって、不適当な贈り物によって価値を下げることは、社会全体の財産を下げることに相当すると。

では、何をプレゼントすればよいのか。

最初に思いつくのは現金かもしれない。現金であれは、送る側ともらう側で価値の増減は発生しない。
しかし、現金を贈るのはあまりに品がないという意識を多くの人が持っているのも事実。

そこで重宝されているのがギフトカードだったりする。
たしかに商品券に形を変えると、現金ほどのいやらしさもないし、確実に相手にも喜んでもらえる。
しかし、現実は違う。
多くの商品券は、期日までに使われることはなく、その価値を失っていくのである。
これは、上記の社会全体の価値を下げていることと等価である。

そんな著者がお勧めしているのは、慈善活動につながる慈善ギフトカードという贈り物である。
もらった人は、慈善活動の中から自分の選んだ寄付先にそのカードを使うことができる。
もし期限内に使わなければ自動的に、どこかの団体に寄付されるという仕組みもある。

慈善活動へのギフトであれば、もしかしたら100ドルのカードの価値が、実質何倍もの価値となって活用されることもあるだろうし、本人の満足度も100ドルを超えるものになるかもしれない。
少なくとも価値の総計は100ドルの価値を下回ることはないはずである。

もし、これに賛同してくれる人が増えれば、毎年無駄になっている100億ドル分の価値が、形をかえてよみがえるというお話である。

さて、今年のクリスマスにあなたは何を贈りますか?

GPSのしくみと応用技術―測位原理、受信データの詳細から応用製作まで (レベルアップ・シリーズ)GPSのしくみと応用技術―測位原理、受信データの詳細から応用製作まで (レベルアップ・シリーズ)

CQ出版 2009-10-23
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最近では、携帯ほどの大きさのGPS受信機でもかなりの精度で現在位置を知ることができるようになりました。

現在、地球上には24のGPS衛星が配置されていて、そこに搭載されたルビジウムやセシウムといった発信機から、正確な時刻で基準信号が送信されてきています。

GPS受信機では、3次元の場所、そして基準からの時刻差という4つ不定パラメータを求める(4元方程式を解く)ために、4つの衛星からの電波が使われている、といった基本的な技術概要から、精度向上に貢献したデバイスの変化の歴史などを幅広く知ることができます。

本書の後半では、「応用技術」に力が入っていて、CQ出版らしく、自作でGPSモジュールをつくるときの手順などに多くのページが割かれています。
そこでは、GPSそのものの技術はもちろんのこと、デバイス同士で通信させるためのインターフェースや、小型の液晶デバイスを駆動させるための技術、そしてGoogleMapのAPIを使ってAjaxなアプリを開発するためのノウハウのようなものに至るまで、最近の小型組み込み機器を設計するときに必要な基礎知識のようなものが、バランス良く詰まっています。

知的好奇心をかき立てられる一冊です。

それにしてもGPSのすごいところは、全世界でそのプロトコルを共通にできたこと。

軍事用途をはじめとして、各国独自にその他の測位システムを開発しているとはいえ、世界中の多くの国がGPSの重要性に共感し、投資し、共通のプロトコルで衛星を共同運用できている。

優れた「技術」が優れた貢献をするためには、利害競争をいかにして乗り越えるかが一番のハードルだろうから。

協力のリーダーシップ―メンバーの個性を活かすチームワークの技術 (Harvard Business Review Anthology)協力のリーダーシップ―メンバーの個性を活かすチームワークの技術 (Harvard Business Review Anthology)

ダイヤモンド社 2009-07-31
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従来の日本型の企業では、当たり前に実現できていた、チームとしてメンバーが協力して成果をあげる仕事のスタイル。
しかし、個の尊重が重視された結果、最近の仕事の現場では、チームの協力が自然発生することはなくなり、協力は「意図的に醸成」しなくてはいけなくなってしまいました。
この本には、効果的なチームを率いて「協力」を作り出すための6つのレポートが掲載されています。

1. 協力するチームの秘訣
2. チームEQの強化法
3. チームの心理学
4. フェアなプロセスが協力を生み出す
5. コンフリクトの解決が協力を育む
6. ハイパフォーマーの力を引き出すレッスン

チームを成功に導くには、さまざまな意思決定を行う必要があります。
そして、その意思決定が、どれほど正しいものであっても、その方針に伴い行動するすべてのメンバーの考え方と同期していないと期待する成果を出すことはできません。

4章で触れられている「フェアプロセス」とは、意思決定するもの(経営者)が、それに追従するもの(従業員)に対して、判断の結果だけでなく、その決定に至るプロセスにおいて、いかに関係者たちの考えが考慮されたかを、重視するもので、両者の信頼関係を高めるうえで、重要なツール。

本書によると、「エンゲージメント」「説明」「期待の透明性」という3つの原則を徹底することで、フェアプロセスは初めて有効となる。

個々のメンバーの考えを吸い上げ、決定の根底にある考え方を説明し、メンバへの期待値を明示すること。
どれも当たり前のことのようですが、確実に実現するには結構なパワーが必要なはず。
どれかひとつでも欠けると、メンバーは正しい協力関係を築くことはできないでしょうから、ここには力を注ぐ必要がありそうです。

また、最近は国籍や背景の異なるメンバで構成されるチームで業務にあたることも増えてきました。
異なる専門性をもつメンバーがあつまると、そこには必ず軋轢が生じます。
5章では、その軋轢を避けるのではなく、コンフリクトは必ず起こるものとして受け止め、それらを当事者同士で解決させることで、より一層のチームパフォーマンスを引き出すためのテクニックに触れらています。
ここでも、やはりリーダーによる説明とメンバーに対するエンゲージメントの重要性が述べられています。

6章では、チームの構成について、スーパーマンをあつめたドリームチームと従来型のチームについて、それぞれの体制で、成果を出すために必要なチームマネジメントが語られています。
メンバが何を重視しているか、チームに対して何を期待しているか、会社に対してどのようなインセンティブを求めるか、それらが根本的に異なる両チームでは、マネジメントの仕方も全く異なります。

目的に応じて適切に両チームを使い分けることができればよいですが、実際には、意図せずしてチームが形成されることも現場では多いと思います。
どのようなチームであっても、的確に成果を出すためのヒントがここにはあります。

いずれのレポートも、質の高いものばかり。
実際の企業を題材にした多くの具体例が掲載されていますので、読み応えもあります。

5人以上の人を集めるリーダーにとっても、きっと500人の人を束ねる人にとっても、きっと有益な1冊だと思います。


そこでもやはり、コンフリクトの内容と

不機嫌な職場

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不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

講談社 2008-01-18
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私にとってはかなりの良書でした。

締め切りに追われ確かに忙しいんだけど、ただ忙しいということだけでなく、ギスギスした雰囲気を持った職場が増えているらしい。

なんだか仕事を頼みづらい(頼むと断られそう)。問題を発見したけど報告しづらい(報告すると自分の仕事に返ってきそう)。

* 自分じゃなくても上司や先輩がどうにかするはずだ、自分は目の前の仕事をやればよい
* みんな自分のことしか考えていない。ならば自分もそうしよう。
* 「その仕事は私のためになるんですか」

そんな雰囲気が蔓延した結果、本来のパフォーマンスを出すことができず、利益を生むことができない組織が増えてきているのは確からしい。

お互いに自分のせいではないというのを他の人に知ってほしいと主張している
非協力でいることで自分を守ろうとする感情や行動の連鎖が起きる

という、この行動の背景には、いったい何があるのだろう。

著者によると「協力の問題は個人の問題ではなく組織の問題」とのこと。

従来の日本では、「責任をあいまいにして、人の能力や実体にあわせて責任範囲を伸び縮みさせる方法で組織を運営」し、成功してきた。

しかし、それが一定のラインを超えると、競争力を保つために、ジェネラリストではなく、境界を儲けてその中の深さを求める意識を強めていくという方向に、人の指向が向き始める。
その結果として、自分と他者との間に落ちるような仕事に対し、手を差し出すということが減ってしまうのである。

では、どのようにして、対策をすればよいのか。
本書の後半では、具体的な対策(というかヒント)が述べられている。

1. 異動による知識や価値観の共有化、異動損しない異動の仕組み
2. 人間の内発的な感情に訴えかけるようなインセンティブのあり方

協力関係を阻害する要因には、役割構造、評価情報、インセンティブなどがあり、それらをどのように変革するかで協力に対する効果は違ってくる。もちろん、業種や組織の規模、文化的背景によっても異なるはず。

私の場合も、400人を超える規模でソフトウェア開発を行っていると、この本に書かれているような「不機嫌な」事態に、日常的に直面します。

自分の組織とそれを構成する人の未熟さもあるにせよ、このような悩みを経験している職場はたくさんあって、普遍的な問題なんだということがわかると、なんだかほっとしまう面もあるのだけど、なんとかこの本からヒントが得られればと思います。

組織力は「個人の力」と「個人間のちから」の掛け算
人が人らしく働けない職場は、常識的に見て長続きすることはできないのだから

世界トップクラス営業マンのモチベーションに左右されずに結果を出す仕事術世界トップクラス営業マンのモチベーションに左右されずに結果を出す仕事術

大和書房 2009-09-19
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さらっと読める自己啓発本。
書かれていることは、自ら宣言して困る状態を作れ、適切な目標をたてろ、など当たり前のことばかり。
なーーんだ、期待はずれ、と思ったのですが・・・。

モチベーションが下がっているときに、どうすべきかという普遍的な悩みには、これまでに多くの作家が啓発本で論じてきたはず。
ともすれば抽象的になりがちな方法論を、とっても具体的に、しかも著者自身の実践例を交えながら書いていることが、すごいことかもしれない。
その結果、書かれているひとつひとつの仕事術が実践可能に思わせる、わかりやすい表現になったのでしょうね。

著者が「先出しじゃんけん」と表現する、自分の目標を先に周囲に告知して自分を追い込む、というやり方は私もよくやります。芯が弱いからこそ、そうしないと途中で折れちゃうんですよね。
そんなちょっとしたテクニックがたくさん詰まっています。

大きなものを生み出したいなら「安全領域」を抜け出せ
簡単に困る一番の方法は「先出しじゃんけん」
ネガティブな評価はそのまま受け取らない
勝負は「勝てる」カテゴリーでしかしない
マネしてもできないことはあきらめる
失敗経験が恥ずかしいのは、まだ成功していないからだ
人間は、楽しいときのほうが能力を発揮する
自己投資には100年に一度の大不況はない
楽しいかどうかで判断する

35歳の教科書

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35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画

幻冬舎メディアコンサルティング 2009-09
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なんだか悩んでいるのだろうか、久々に本屋で自己啓発系の本に惹かれて、数冊まとめ買い。
その中でも、最もインパクトのあるタイトルだった本書。

多様化、複雑化、変化といった3つのキーワードで象徴されるこの成熟時代においては、みんなで同じ方向を向いてひたすら頑張った昭和の成長時代とは違って、ひとりひとりがいかに豊かな人生戦略を持っていきるかが大切。

そのためにはこの30際前半というのは、とても重要な時期なのかもしれない。
全体を通じて、吉越さんの書かれた『「残業ゼロ」の仕事力』と近いものはあるけれど、とにかく、会社には依存しない生き方をみつけましょう、という強いメッセージが伝わってくる。

クリティカルシンキングが大事、仲間を作れ、自分だけのキャリアを気づけ、と、人生を豊かに生きるために彼が提唱する方法論の部分は、それほど新しいことが書かれているわけでもなく、ちょっと退屈な部分もあったけれど、言っていることはとにかく正論。
これらがすべてしっかりと実現できるコンピテンシーを持っていれば、きっと著者のように豊かな大人になれるのかもしれないですね。

内容よりも、あ、もうすぐ35歳(あと2年くらいありますが)なんだ、と、自分の位置を再確認させてくれた本の存在に感謝。

それにしても、本の帯に書かれた文章が秀逸。こりゃ手に取るわな。

拝啓、終電帰りのビジネスパーソン様。35歳からはただ頑張っても報われません。(中略)そんな今こそ、あなたと家族がつくる人生が始まるのです。

復讐―孤拳伝〈1〉 (中公文庫)
復讐―孤拳伝〈1〉 (中公文庫)
中央公論新社 2008-11
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漆黒―孤拳伝〈2〉 (中公文庫) 群雄―孤拳伝〈3〉 (中公文庫) 覚醒―孤拳伝〈4〉 (中公文庫) 義闘―渋谷署強行犯係 (徳間文庫) 特殊防諜班 連続誘拐 (講談社文庫)

今野敏氏による格闘小説4部作。
不遇な環境に育った主人公が、さまざまな「戦い」を経て成長していく様を描く小説。

暴走族、任侠、裏社会などの世界を渡り歩き、東京、横浜、沖縄などのステージで、死闘を繰り広げていく。そこで多くの人に出会いながら、戦うことの意味、強さとは何か、人間の生きる意味とは何かを悟っていく。

2段組み4部作というボリュームながら、内容は軽いのでサクサク読める。
(そうは言っても、3週間くらいかかりましたが・・・)

今野氏といえば、刑事作品、という思い込みがありましたが、違う側面から彼のつづる作品を見る意味でも面白い。
後半になればなるほど、格闘シーンのダイナミクスさや動きは小さくなってしまうのが残念ですが、その分、共感できる普遍的な描写も多くなり、それはそれで面白い。

理系の企画力!-ヒット商品は「現場感覚」から (祥伝社新書167)理系の企画力!-ヒット商品は「現場感覚」から (祥伝社新書167)

祥伝社 2009-07-28
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消しゴムで消えるボールペン、などのようにこれまでの常識を変えるような商品がヒットしている。
これらの商品は、きっと技術を知らない人たちだけの企画会議で生まれることはなく、そして技術まっしぐらなエンジニアによって生み出されることもない商品でしょう。

お客様が何をもとめているのか、ビジネスのトレンドはどこに向かっているのか、というマクロなマーケット視点と、自社の技術ロードマップにある技術をしっかりと把握するミクロな知識との両方をしっかりと結びつけ、その接点が見えた時に商品化への可能性が見えてくる。

この本では、いくつかの成功事例をあげながら、全体からモノごとを考えられる企画力を持った技術屋の活躍する道を示唆してくれている。

「技術企画」みたいな組織をつくればいいじゃん、なんていう安易なアプローチではなく、エンジニアひとりひとりの考え方が重要という著者の主張のはうなづけるところ。
実際、技術企画という部署ができても、トップマネジメントからのプレッシャーの中で、ご機嫌をうかがう提案を続けていくうちに、結果的には現場のエンジニアとの距離はどんどん離れてしまい、従来からある企画部門とどこがちがうのよ、ということもよくあるのではないだろうか。

たしかに顧客分析をして、作るべきものを帰納的に導く商品企画的なアプローチも重要だとは思うけれど、それでは新しい顧客体験を生み出すのは難しいだろうし、イノベーティブな商品も作れない。
もしかしたら、技術屋が考える企画には面白いタネが埋まっているのかもしれません。(そのタネをしっかりと拾おうと、多くの企業のミドルマネジメントも苦労しているのだと思いますが・・・。)

あくまでも重要なのは「現場感覚」。
本質的に何が求められているのかを常に自問しながら、「あっ」と言わせる商品を技術屋自身で作れるように、技術を磨いきたいものです。

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)

幻冬舎 2009-07
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タイトルにつられて、出張前の空港売店で購入。
ドコモでiモード立ち上げに尽力された著者による、これからのウェブビジネスに対する提言などもろもろ。

グーグルやアマゾンについて直接のノウハウやその応用について触れられているわけではなく、今の日本企業がウェブビジネスを進めていく上で抱えている問題点を、顧客・技術・広告・規制など幅広い視点から整理している感じ。

日本のスコープを超えて、グローバルなマーケットでウェブビジネスが生き残っていくためのヒントがあればとの期待でページを進めましたが、論点はそこまで広がらずに、あくまでの今の日本のウェブビジネスの問題点指摘にとどまっている感じ。

全体的に、とくに新しいことが書かれているわけではないなぁという印象ですが、急にネットについて考えなくてはいけなくなった中小企業のちょっとエラい人が読むには、整理された内容なのかもしれない。

ただ、著者が最後の章で述べているように

ウェブビジネスというのは、組織的に何か新しいディレクションを出そうといった、会社全体のストラテジーの話なのだ。(略)現場だけがウェブに対応し、それだけで終わってしまっている。

というくだりには大いに共感できる。
企業全体として、どのようにウェブをつかったビジネスモデルを描くか。ここをしっかり押さえておかないと、道具に振りまわされて、余計なコストだけを支払うはめになる。
これまでリアルの世界ではできなかったことが実現可能になった、このボーダレスな時代に、何に企業価値を求めるのかを明確にして、ウェブを活かすことが重要である。

多くの企業では、その戦略を考えられる経営層が不足しているというのは事実かもしれません。

日常の疑問を経済学で考える日常の疑問を経済学で考える
Robert H. Frank

日本経済新聞出版社 2008-02
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難しい数式も、細かいお金の計算も、なーんにも出てこない経済学の本。
人は、生活をする中で、いろんな判断をする。

100円ショップで100円で買えるペットボトルのお茶を、なぜ自動販売機で140円で買う人がいるのか。

それは、無意識に機会費用を計算した結果、その方が便益が高いと考える人がいるからである。
人の行動は、「費用便益の原則」に基づいて決定される。
「ある行動によって生じる便益が費用を上回る場合のみ、その行動をする」という判断である。

そんな無意識の行動を、意識できるようになると世の中のいろんな仕組みが見えてくる。

本書では、そんな経済学的な原則に基づいたルールや仕組みの例がたくさん詰まっている。アメリカで書かれたものなので、文化的に日本人には???なものもあるけれど、わかりやすくてとても面白い。
多角的に物ゴトを判断したいと思っている人は、読んでみるとよいかも。

- ドライブスルーの操作盤に点字がマークされているのはなぜか(目の見えない人は車を運転しないのに・・・)
- ホテルのミニバーが法外に高いのはなぜか
- 株式のアナリストが「売り」を推奨しないのはなぜか
- 平均初婚年齢が高くなっているのはなぜか

そんな疑問に答えてくれる、面白い一冊です。

インドと中国―世界経済を激変させる超大国インドと中国―世界経済を激変させる超大国
Robyn Meredith

ウェッジ 2007-09
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劇的な変化を遂げている、2つの大国について書かれた2007年の書。
リーマンショックなど、この本がかかれてからも世界経済は大きく変わっているが、もともと劇的な変化で進化をつづけている中国とインドにとっては、それも多くの変化のうちのひとつなのかもしれない。

中国とインドの進化の歴史をひも解きながら、将来について考えさせられる面白い1冊。
そこには、先進国で働く私たちの価値観では計り知れない、ビジネスに対する評価基準がある。
あとがきにも書かれているが、アメリカ人の著者の視点で書かれていることも、日本人の私にとっては、余計な色眼鏡なしに第3者視点で読むことができるという点も面白い。

欧米諸国と肩を並べるほどのビジネス大国に成長した両国。
中国は、この20年で、シルクロード以来ビジネスの中心だった商品の輸出から、オフショアリングなど安いサービスを輸出するという新しいビジネスモデルで、雇用を創出し続けている。
インドでは、中国には10年ほどの遅れをとりながらも、ハイレベルな技術力を輸出することで、欧米のGEやシーメンス、IBMといった企業とともに成長を続けている。

インドのインフォシスや中国の浦東ソフトウェアパークなどのホワイトカラーエリアで働くチャンスを得た人たちは、故郷の賃金の何十倍という高い収入を得ながら、先進国と変わらない生活レベルを維持することができている。
そんな彼らでさえ、アメリカの企業から比べるとかなり割安の賃金しかもらえていないのは事実。その状況から脱しようとアメリカへ出ようとする優秀なビジネスマンが多かったらしい。
しかし、中国では、近年、アメリカに行けば10倍の賃金が貰える、そんなチャンスを手に入れながらも、中国にとどまるという新しい動きもあるようだ。
30年後に世界を動かしているのは、西側諸国ではなく、中国やインドであることは十分に考えらえる、と冷静に将来を見据えた結果なのかもしれない。

一方で順調に見える成長の裏には、まだまだわれわれの想像を絶する劣環境がのこされているのもインドと中国の姿である。
炭鉱と工場から出る煙による強烈な酸性の雨、整備されていない下水による強烈なにおい、まじかに迫っているエネルギー問題。
世界を代表するモデル国として次の一歩に踏み出すには、まだまだ解決することは多い。

そして、増え続ける人口に対する危惧。
インドでは 11億人の半分が25歳未満である。
彼らの将来のためには、多くの雇用創出が必要である。
海外からの雇用創出にたよるのか、新しく国内の整備を進めていくのか、岐路に立たされたインドでは、雇用について国民自身が真剣に悩んでおり、政治にも注目度が高い。

本書を通じて、著者が一貫して主張していることは、とにかく教育を重視しなくてはいけない、ということ。

教育に投資せずに高賃金の仕事がたくさん生まれると期待しているのであばそれは間違い

インドと中国の「それぞれ」が毎年労働人口に加える大卒者の数は、アメリカとヨーロッパすべてで毎年卒業する人数の合計より多い。
このデータは、先進国であるアメリカや日本の将来が、インドや中国の生み出すビジネスによって、大きな影響を受けるという想像をさせるには十分である。
彼らにできなくて、私たちにできないことをしっかりと取捨し、共存する仕組みを構築していかないと、私たち自身が雇用を失う日は近い。

これからさき、地球という限られた資源のなかでのゼロサムゲームで生き残っていくのは難しいのかもしれない。

プログラマの道具箱 (図解 ビジネスの現場)プログラマの道具箱 (図解 ビジネスの現場)
イノウ

技術評論社 2009-06-06
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世の中にはたくさんのプログラマがいる。
システム開発やっている人、組み込みのソフトやっている人、携帯やPCのアプリ開発やっている人・・・。

この本では、それらプログラマが使う多くのツール(道具)について述べられている。
分析用、設計用、開発用、そしてテスト用。

仕事を進める中で、ツールに助けられるケースも多いと思う。

いろんな人が考えたさまざまなの効率化アイデアの共通要素が集約されたものがツールといえるわけで、なにか壁にぶつかったときには、新しいツールを使うことで、突破口が見つかるというのもよくある話。
この本で、その選択肢が広がれば・・・と思います。
(しかし、この手のインターネットリテラシーの高い人をターゲットにした話は、ネット上で同様の話題が簡単に見つけられてしまうので、紙媒体として書籍化するのはだんだん難しくなってきているのでしょうね・・・。)

よい道具との出会いは、仕事の効率を格段に向上させます。
決して道具に使われることのないように。

と強く感じた一冊でした。

ヤバい経済学

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ヤバい経済学 [増補改訂版]ヤバい経済学 [増補改訂版]
望月衛

東洋経済新報社 2007-04-27
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経済学とタイトルにあるが、まったくコムズカシイことはかかれていない。
日常にある、とってもありふれた事象を経済学的な視点で読み解くうちに、経済学の本質を垣間見ることができるという内容。

「道徳」と「インセンティブ」に基づいて人は行動する。その結果、世の中にはどのような「事象」おこるのか。
人が起こす消費行動によって、物価や経済がどのように動くのか、なんてことを研究している人はたくさんいるが、この著者たちはちょっと違った視点で人の行動を読み解く。

不正に生徒の点数をつりあげて、自分の評価を高めようとする学校の先生がどれくらいいるのか?
相撲の世界に八百長はあるのか?
ヤクの売人の生活がリッチではないのはなぜか?
ニューヨークの犯罪はなぜ減ったのか?
良い子育てをするために、親たちはどんな名前をつけるのか?

あらゆる事象がデータをもとに分析されていて、説得力は十分。
一般のメディアでは語られない、人種や格差を意識した心理によって人は少なからず行動してしまい、多くの人が犯罪すれすれのラインで目先のインセンティブに飛びついてしまうことが、データからよーくわかります。

経済を読み解くこととは、人間心理を理解することなんですね、きっと。

「残業ゼロ」の人生力「残業ゼロ」の人生力
吉越 浩一郎

日本能率協会マネジメントセンター 2008-08-03
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『「残業ゼロ」の仕事力』の続編ともいえる本書。

仕事はできて当然。でも、本当に幸せな人生を送るためには、それだけではダメ。
という視点で、人生力を強化するためのポイントが述べられています。
そして、やはりそこは「残業ゼロ」に帰着する、というストーリー。

前作と比べると、どちらかというと定年後の過ごし方に焦点があてられています。
仕事時間は人生の中の一部でしかないんだよ、という当たり前だけど若い時代には認識忘れがちなポイントをつきつけ、長期的な視点でもって人生を満喫するTipsにあふれています。

仕事というのは、人生の一時期だけ参加が許されたゲーム

であって、仕事以外の時間も含めた人生全体をゲームとして楽しむには、仕事に依存しないスキルと属性とネットワークも身につけておかないとね。

深紅

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深紅 (講談社文庫)深紅 (講談社文庫)
野沢 尚

講談社 2003-12
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とても重くて辛い事件から始まる。

被害者家族と加害者家族の間にある悔いと恨み。
被害者の家族はいつまでも、忘れることはできない光景に悩まされ続け、
加害者の家族はいつまでも、自分に責任のない誹謗と悔いに悩まされ続ける。

そして、どんなことが過去にあっても、人は時間とともに、感情の形を変えつつ生きていかなければならない。

とっても重い人間ドラマを、二人の少女を通じて、読者に投げかける。
決して、明るい気持ちになれる作品ではないが、名作のひとつ。

次元とは何か―「0次元の世界」から「高次元宇宙」まで (ニュートンムック Newton別冊サイエンステキストシリーズ)

ニュートンプレス 2008-04
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ムックのNewtonシリーズの別冊。
理系の人なら、一度は手に取ったことがあるシリーズだと思うけど、このシリーズは写真や画がとても多く、世界トップレベルのコムズカシイ話をわかりやすく説明してくれている、というのが特徴。

端が0次元になるものを1次元(線)と呼ぶ。
端が1次元になるものを2次元(面)と呼ぶ。
端が2次元になるものを3次元(立体)と呼ぶ。
端が3次元になるものを4次元(超立体)と呼ぶ。

数学者アンリ・ポワンカレによる次元の定義である。

私たちの住むと思われている4次元時空では、3次元の空間に1つの時間が存在する。
この世界に住む私たちからは、4次元時空で起こる事象は1次元下の観測系で、容易に観察することができる。
ある時間のスナップショットをとらえればそれは3次元の世界であり、3次元の世界を面に投射すればそこには2次元の世界を観察することもできる。

では、この4次元の世界を観察している、もっと高次元の世界はないだろうか。
多くの数学者が頭を悩ませた結果、5次元の世界は存在するという説が有力らしい。
そして、「電磁力」、陽子や中性子を結ぶ「強い力」、中性子を陽子に変身させる「弱い力」、「重力」といった4つの力のうち、5次元の世界を伝搬できるのは「重力」だけなのだそうだ。
これらの世界は、私たちの目からは見えない、とても微小な世界で起きていることと説明されている。

どうやら、このジャンルでも数学による机上理論の世界と、実験による実観測結果の世界の隔たりは大きいらしい。
数学では超ひも理論によって11次元の安定性が確認されているが、実観測でこれから明らかにしていくのは5次元目の世界だ。

なんだか難しい話ですが、近い将来、相対性理論の時のように、世界を変えるような新しい物理法則が生まれ、私たちがこれまで学んできたことをすべてひっくり返してしまう可能性があると思うと、ちょっとわくわくしたりします。

まだまだ勉強することはたくさんあるのに、人間とは、次から次へと新しい課題を見つけてしまう生き物なのですね

学ぶことを止めないように、この本からは、そんなメッセージを受けとった気がしました。

眠りの森

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眠りの森 (講談社文庫)眠りの森 (講談社文庫)
東野 圭吾

講談社 1992-04
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バレエ団で起こる、殺人と切ない恋の物語。
東野作品の中では、サスペンスの中身や詳細よりも、小説としての全体の流れを重視したリアル重視の作品だったように思う。

読み終わったあと、心に残るものはなく、なんだかあっさりとした印象に終わってしまったのは、彼の作品に濃厚な表現を期待しすぎているからだろうか。
世間の評判はよい作品のようだが、個人的には△評価かなぁ。

それでも、バレエ団というまったく知識のない世界が描かれているので、展開が想像できず、ぐいぐい読み進められたのは確か。

アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)
堂目 卓生

中央公論新社 2008-03
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アダムスミスといえば、「見えざる手」による価格調整メカニズムを「国富論」の中で説いた経済学者、というのがこの本を読む前の知識。

本書では、彼のもうひとつの功績である著書「道徳感情論」についても多くページを割いており、「国富論」との関連性を説明することで、彼が生涯をかけて築いた、人間の本性に深く根付いた経済活動についての壮大な研究成果を垣間見ることができる。

市場の機能を支える、市場参加者の行動を左右するのは、彼らの自愛心であり、利己心であり、そしてフェアプレイの精神である。
その結果として資本が生成され、蓄積され、そして分配・消費されることで経済が回る。

市場参加者である私たち一人ひとりの行動規範の裏には、自分の行動を称賛されたい、非難されたくないという、道徳原理があるはずで、「道徳感情論」では、そういった人間の本性の定義に試みており、これが結構面白い。

アダムスミスの視野の広さと考察の深さを感じるとともに、特定の分野にしばられず、分野を超えた検証の中に、新しい真実が見つかるという、よい例だと感じさせられた一冊。

経済学には明るくないけれども、わかりやすい説明で理解は可能。
評判がよいのもうなづける本でした。

ビールの科学

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ビールの科学 (ブルーバックス)ビールの科学 (ブルーバックス)
サッポロビール価値創造フロンティア研究所 渡 淳二

講談社 2009-03-20
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もうかれこれ15冊目くらいになるだろうか、ビール関連の書籍を読んだのは。
この本は、中級者向けといったところでしょうか。
ビールに関する薀蓄だけでなく、製法や原材料の特徴についての科学的な分析が多いのが特徴。
そして、おいしい飲み方や、料理とのコンビネーションにいたるまで、幅広く述べられており、ボリューム満点の一冊。

ビールの歴史を振り返ると、それぞれの時代の最新の科学に基づいた醸造を行い、ときにはビール製造で得られた現象が、科学自体の進展に貢献したりと、その奥深さには感服です。

毎日飲んでいるビールには、メーカをはじめとする多くの技術者たちの英知が詰まっているのですね。
今夜もありがたくいただきましょう。

サイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリルサイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリル
山下 優子 生田 りえ子

日経BP社 2008-10-23
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アメリカでは年間どれくらいの重さの家庭ゴミが出されているか。
赤道上にゴルフボールを並べるといくつ必要か。
日本にはピアノの調律師が何人いるか。

わずかな基本事実から得られる数字だけを元に、大まかな推定をおこなう技術をフェルミ推定といいます。
常識力と適切な判断能力そして、数字を現実世界に活かす視点を求められる技術のひとつ。
マイクロソフトなどが入社試験に取り入れていることで、一時、話題になったような気もします。

上のゴミの例の場合、自分の家の毎週のゴミの量をもとに、自分の家と平均的な家との差分を考え、アメリカ全土のボリュームをみつもる、といった非常にロジカルなステップで答えに近づくことができます。

正確な解をだすことは不可能ですが、少なくとも1/10倍~10倍の範囲に収まる答えは導けるはずです。

実際に、仕事においてもこのスキルはとても重要。
会議の場で発言を求められ、長期的なプロジェクトの工数などの数字を見積もる場合、100人のプロジェクトの日々のコストを計算する場合、この考え方は、漠然とした感覚を数値化する上でもとても有益。

時間と品質は相反するもの。
投げかけられる質問、仕事でぶつかる課題、それらは時間をかければ、より精度の高い正解に近づくかもしれないけれど、限られた時間で答えを出すことも重要。
あいまいな答えを出すことに違和感を感じるという人も多く、多くのエンジニアは特にその傾向があるかもしれません。

この本には、そんな例題とそれぞれの解説がてんこ盛りです。
さくさく読むというよりも、出勤時の電車の時間などを利用して、1問5分くらいかけて頭をフル回転させてみると面白いかも。

イコン (講談社文庫)イコン (講談社文庫)
今野 敏

講談社 1998-08
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先日読んだ、同氏の「蓬莱」の続編ともいえる作品。

ネットの世界で作り上げられる偶像。
その偶像の周りで次々に引き起こされる殺人劇。
その偶像を現実視するネット世界の住人達と、彼らに翻弄される現実世界の刑事達のドラマ。

既存の常識では図りえないネットに憑かれた彼らの意図と価値観を、なんとか理解しようとする主人公たちの姿が面白く描かれている。

98年ころに書かれたものというだけあって、インターネットというよりもパソコン通信という色あいが強いが、ネットとリアルのはざまで翻弄される警察たちドラマは、現代に書かれたものにも引けを取らない内容だと思う。

他の今野敏作品同様に、本作品でも人間ドラマに多くのページがさかれている点も印象的。
主人公の刑事が、この事件をきっかけに、ほとんど口もきかなくなっていた息子と少しずつうちとけていくといったサイドストーリーが、主人公の人間性をより鮮明に描き、本編の助けとなっていて、実に巧妙。

朱夏

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朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
今野 敏

新潮社 2007-09-28
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同氏の作品「ビート」の続編。
仕事人間で家庭を顧みない真面目な刑事が、ある日、妻を誘拐されてしまう。
彼は犯人を探し始めるが、それは事件を追う刑事としてなのか、それとも妻を愛する夫としてなのか・・・。

犯人探しなどミステリーな部分は単調なため、ストーリーとしてはそこそこであるが、彼らの人間描写がなんともリアルである。30歳すぎた読者には、考えるものがあるはず。

青春の次にくるのは、情熱と熱意で社会をドライブする「朱夏」の時代。

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版
矢羽野 薫

ランダムハウス講談社 2008-06-19
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2007年9月18日、ペンシルベニア州ピッツバーグにあるカーネギーメロン大学の講堂で、1人の教授が「最後の授業」を行った。
教授の名前はランディ・パウシュ。46歳。最後の授業をするにはまだ若すぎるパウシュだが、彼にはこのとき、長年親しんだ大学に別れを告げざるをえない事情があった。膵臓から肝臓へと転移したガン細胞。医師から告げられた命の刻限は――「あと3カ月から半年」。
こうしてパウシュの最後の授業は始まった。スクリーンに映し出された演題は『子供のころからの夢を本当に実現するために』。それは、「最後の授業」であると同時に、幼い3人のわが子に遺すためのメッセージだった。

技術者である彼が最後の授業で選んだメッセージは、自分のアイデンティティであるコンピュータ工学の知識を共有するものではなく、子供への愛情表現という万人共通のテーマだった。

夢をかなえるにはこうすればいい、という抽象的なハウツーはたくさんあるかもしれないが、この本に描かれているのは、自分の子供たちにむけた最後のメッセージである分、具体的かつ明確である。

不満を口にしない、何を言ったかではなく何をやったかに注目する、「ありがとう」を伝える、誠実であれ、楽観的であれ、相手の視点に立って発想する・・・

世界中には著者と同じように、がんによって命を失っていく人がたくさんいる。その誰もがそれぞれ大切な人に対して、感謝や願いといった自分の思いを伝えようと、最後の時間を過ごしている。誰もが著者のように強い意志をもって、明確な形で表現できるわけではないと思うが、何らかの形でがんに関わったことがある人もそうでない人も、そのメッセージには共感できるに違いない。

親が子を思う深い気持ちが、この本には描かれている。

最後に著者の好きだったという言葉のひとつを記しておこうと思う。それこそが夢をかなえるためのヒントだと思うから。

Luck is a matter of preparation meeting opportunity.
幸運とは準備が機会に出会うことである。

のぼうの城

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のぼうの城のぼうの城
和田 竜

小学館 2007-11-28
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2万を超える兵を率いる石田三成による北条勢制圧の一場面。
わずか2000の兵で守るのは忍城。
その城主が「のぼう様」こと成田長親である。

誰よりも城下の農民からの熱い信頼をもつ「のぼう」は、城を守る戦にてその才を発揮する。

歴史にはあまり詳しくない私でも軽く読めるような、程よいボリュームの小説。
歴史物語が好きな人には物足りないのかもしれませんが・・。

有能でありつつも爛漫な武将たちを、力ではなく、頭脳でもなく、そのおおらかな雰囲気と温かさでもってまとめてしまう様は、時代背景は違えど、リーダーシップ論に通ずるものもあって、読み終わった後の気持ちよさは格別。

合衆国再生―大いなる希望を抱いて合衆国再生―大いなる希望を抱いて
棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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年初以来、少しづつ読み進めていた、オマバ新大統領による書。
かなりのボリュームかつ私にとっては内容も難しかったので、とても時間がかかってしまいましたが、訳も良くて、オバマ氏の思想や国を愛する気持ち、そしてなによる彼のもつ聡明さが、深く伝わってくる一冊だった。

運のいいことに、私はいまの社会に生まれた。この社会は私の才能を認めてくれ、その才能を伸ばすことができる良質な教育を与えてくれ、存分にこの仕事ができるような法律と金融制度を定めている。そんな時間と場所に私は生まれてきた。わたしにできるせめてものことは、そういういろんなことに代価を支払わせてもらうことだ。

宗教、軍事思想、外交、人種、歴史、各社の是正、教育問題、医療整備、銃規制など、どれをとっても一言では表現できない多様性をもち、それを許容するアメリカという国をまとめる難しさは想像を絶するだろう。

正しいことが必ずしも真実にはならないアメリカの政治の世界で、自分の思想や信念を実現できないもどかしさや、政治家としてのオマバ氏の心情や思想が丁寧かつ、自信たっぷりに描かれていて、アメリカ事情に疎い私にとってはとても勉強になったし、なにより読み物として面白かった。

そして、個人的に感銘を受けたのは、この本の最後の章にあった。
最後の章では、愛する妻ミシェルと子どもたちのためにあてられている。
弁護士時代に出会った妻との出会いに始まり、多くの夫婦と同じように家庭で起こる多くすれ違いと多くの会話。
その節々から、深い愛をもって家族を包み込むことのできる人間であることが描かれていて、身近に感じられるとともに、人として尊敬できる点を見出さずにはいられない。

ニュースをにぎわしている日本の政治家からは伝わってこないような、政治家としてではなく人間としての誇り高さが、この本には述べられているように思えた。

そういった人物であるからこそ、就任式にあれだけの人数が集まるほど国民から愛され、大切な自分の国とその未来を託そうという気持ちにさせるのかもしれない。

蓬莱

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蓬莱 (講談社文庫)蓬莱 (講談社文庫)
今野 敏

講談社 1997-07
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最近はまり中の今野 敏の小説。
私自身も学生時代にはまっていたAOEのようなゲームがテーマの作品です。

シミュレーションゲームを発売しようとするゲームプロデューサーが主人公。
渾身のその作品は、順調に発売日を迎えるはずだった。
ところが、それを阻止しようとする組織の力によって、身の回りに多くの事件がおきていく。

いったいゲームにどんな秘密が隠されているのか・・・。
それはただのゲームではなく、壮大な意味をもっていて・・・。

ゲームとサスペンスを結び付けた、なんとも斬新な発想に驚かされた作品。
警察中心の今野作品もいいけれど、こういう創作もイケてます。

レイクサイド

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レイクサイド (文春文庫)レイクサイド (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2006-02
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受験合宿のために湖畔にあつまった数組の家族の中でおきた殺人事件。

序盤は淡々と主人公視点で物事が進んでいくのですが、読み進めるに従って多くの登場人物の個性が明らかになっていく。読者も一緒に犯人探しをするタイプの作品。

消去法で少しずつ犯人候補が消えていき、最後に残ったのは・・・。

多少の中弛みはあるものの、結末が気になり始める後半は一気に読みたくなってしまう内容。
ボリュームも多くないので、さくっと読める、よい小説。
個人的には、東野作品としては中の上といったところでしょうか。

最強の戦略は「図」で立てる!―アイデアを一気に実現に近づける、図解発想の技術 (PHPビジネス選書)最強の戦略は「図」で立てる!―アイデアを一気に実現に近づける、図解発想の技術 (PHPビジネス選書)
村山 涼一

PHP研究所 2003-04
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仕事のなかでパワーポイントをつかって資料を書くことが多いのだけど、自分の考えていることや主題・パンチラインを効果的に図に表現するのは難しくて、苦戦することが多々。

なにかしら仕事のヒントになればと、以前買っていたこの本を久々に読み返してみる。

その内容は、図解やパワーポイントのテクニックというよりも、マーケティングや企画戦略立案といった、プレゼンによる意思伝達で仕事を進めていく人たちのための、思考プロセスを支援する内容。

チャートをつかって何を伝えるのかという図の出口よりも、チャートをつかってどのように考えるかというプロセスに主眼が置かれている。

紹介されるいずれのチャートも単純なボックスと矢印の組み合わせであり、そこには新しさがあるわけではないけれど、解決すべき課題に対して、「要素」と「論理」をどのパターンを使って思考するかによって、導き出される結論はきっと異なるものになるに違いない。
事象を並列で考えるのか、展開して考えるのか、それとも帰納的に考えるのか。本書に示された多くのパターンがヒントになるケースもありそう。

取り上げられているサンプルが商品企画向けのものが多いため、畑違いの私にとっては、わりとハイコンテキストな内容。
エンジニアとして、「おっ、これは使える!」という速効性の高いポイントは多くないかもしれませんが、思考の幅をひろげてくれるちょっとしたスパイスにはなってくれそうな一冊です。

貧困の光景

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貧困の光景貧困の光景
曽野 綾子

新潮社 2007-01-17
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曽野 綾子氏による、アフリカ諸国における貧困の真実を描いたノンフィクションレポート。
著者が自身の慈善活動を通してみた真実の光景がそこにはある。

「ルポ 貧困大国アメリカ」もそうであったが、飾ることのない真実は、ときにフィクションよりも重いテーマを私たちに突きつける。

本書に描かれているのは、日々の食事に困っている家族、教育を受けられない子供たち、満足に治療を受けることができない幼児といった、私たち日本人の多くが、抽象的に理解しているようなものではない。

慈善団体から恵まれたお粥を家族のために自分で食さずに汚れたポケットに入れて持ち帰る子供たち、着るものがないために寄付された毛布を明日の糧のために安値で売らなければいけない家族、屋根のないレベルの住環境における大人の性生活に影響されて増え続ける非成人のエイズ感染と人口問題に直面する集落。

お金や形のあるものは盗まれて失うリスクが常につきまとい、手に入れた糧や資産は家族だけではなく親族全員で分け合うべきもの。そういった私たちの想像を超える貧困国の常識のもとでは、少しばかりの形のあるモノの援助や、全体の一部の人数に対する支援といったものは、ほとんど効果を奏しない。

その結果、お金の向かう先は、私たちが意図しない方向に向かうことになる。

アフリカの貧困国の援助の最大のネックはこうした汚職と公的な金の私物化の習慣にある。ヨーロッパ諸国やアメリカや日本が、アフリカの貧しい国の援助をする、と決定することは、その国の国家元首とその一族の私財を増やすことを意味する

学校の規模を大きくし給食を与えるために行った金銭の支援をその校長が持ち逃げするといったエピソードが語るように、北の諸国から支援された金銭は、その多くがそれらの国の上層部に私物化されたり、汚職によって消えていくということが日常であるという。その校長のモラルの低さををどうこう批判するものではなく、それが常識であるという環境自体に問題があるのであろう。

寄付された貴重な金は、間違いない仕事に使わねばならない。しかし間違いない仕事というものが果たしてでてくるだろうか、という心配が、私の不眠の元だったのである。

著者自身、支援した場合には、その援助が確実にアフリカの末端の人々にまでいきわたっていることを自分の足で確認するといっているのには、そのような理由がある。

私自身も、大手の寄付団体を通じて定期的に金銭支援を行っているのだが、果たしてそのお金が、どのような使途で用いられているのかとても気になるところである。
そういった「正しい」と思われる行いが、きちんとその役目を果たせるような仕組みがないと、この問題は解決の方向に向かうことは難しいのかもしれない。

この地球上には、常に劇的な貧困と慢性的な貧困とがある。そして慢性的な貧困は、援助の対象としては目立たないから困難な状況は長く潜行して続くのである。

突発的な自然災害に対する支援ももちろんであるが、こういった慢性的な貧困に対する支援活動の重要性は高い。

この国際化時代を生きていく上で、日本に生まれた私たちができることはいったい何なのか、この本によって与えられたテーマは実に大きい。
この世界的な経済不況のなかで日本のODA予算も縮小している状況ではあるが、中間コストを削ったり、組織による不当な搾取を撲滅するなどして、適切な支援が実行されることを願うばかりである。

任侠学園

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任侠学園任侠学園
今野 敏

実業之日本社 2007-09-19
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「とせい」が面白かったので、続編である「任侠学園」も、さくっと完読。
前作で活躍したヤクザたちが、今度は学園を立ち直らせる。

腐った生徒たちと、モンスターペアレントたちを相手に華麗な立ち回りを見せる仁義に熱い男たち。
最後や親分が現れて・・・というストーリー構成はほとんど同じなんだけど、途中で結末まで予測出来ちゃうんだけど、それでも面白いから一気に読めてしまいます。

通勤中に読むには、こういった軽めの小説が気分転換になって良し。

とせい

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とせい (中公文庫)とせい (中公文庫)
今野 敏

中央公論新社 2007-11
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今野敏の任侠小説。

私が今野敏に出会ったのは警察小説だったのですが、これはまさにその対極。
おまり知られていない裏の世界を舞台としたものがたり。

その道を極めたヤクザたちが出版社を立ち直らせるという、なんとも痛快な設定。

あんまり、ドロドロしてなくて、登場人物はとっても愛らしくて、実に面白い仕上がり。
日本人の忘れてしまった、人と人とのつながりの大切さ、仁義、といったものが根底にあって、読んでいて心地よい1冊。

私が彼を殺した

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私が彼を殺した (講談社文庫)私が彼を殺した (講談社文庫)
東野 圭吾

講談社 2002-03
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東野 圭吾のサスペンス小説。
これは、ある意味新しい作品。
なにが新鮮って、犯人探しのストーリーだから。

他の多くの東野作品は、読者に先に犯人を見せておいて、犯人と被害者の両方の心理を描き分けたものが多く、謎解き小説というよりも心理小説的なものだったりする。

それと比べると、この作品は正統派の推理小説。
しかも結構複雑で難しくて面白い。

結局最後まで犯人は明らかにされないのだが、webとかでヒントを集めるうちに、納得のいく犯人像にたどりつくことができた。

読み終わった後のモヤっと感は相当なものですが、面白い作品であることには間違いないですね。

ビジネスの「コトバ学」 (日経プレミアシリーズ 14)ビジネスの「コトバ学」 (日経プレミアシリーズ 14)
則定 隆男

日本経済新聞出版社 2008-08
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当たるブランディング、売れないネーミング・・・大衆の心をつかむ”ヒット”は・・・
という本の帯に書かれたキーワードを見て、マーケティングにけるネームブランディングに関する本かと思って購入。

心理学も含めたネーミングの考察ももちろんだが、実際は、もっと広義に”ビジネスのコトバ”について書かれた一冊。
内容はというと、ブランディングで訴えるための”コトバ”の使い方、電子メールという器に盛り付ける”コトバ”の使い方、グローバル企業が必要とする共通の”コトバ”としての英語コミュニケーションに関する考察にいたるまで、とても幅j広い。

商品を考える上でも、企業活動を進めていくうえでも、言葉や、言葉の裏に存在する文化を知って使いこなすことはとても重要ということである。

あとがきで著者自身も述べているが、”コトバ”をこのように使えばよいという答えを与えるのではなく、コトバと人とビジネスとの関係に着目した、研究的な視点の読み物。「役に立たないが面白い」というところを狙ったらしい。

グローバル企業における英語の使い方などは、私自身のおかれている環境にも直接的に関係する内容だったので、とても興味深かった。

はたして、共通言語として英語を使うということは、多国籍企業としての唯一の正解だろうか?という問いに対して、さまざまな視点でその利点や欠点を述べている。

そしてビジネスで英語を使うにしても、「知」を共有するためのコトバの使われ方の形態はさまざま。すべての情報を英語で共有するケースもあれば、現地と本社組織をつなぐピンの役割の人だけが英語でのコミュニケーションをすればよいケースもある・・・。
それらは、マルチナショナル型、インターナショナル型、グローバル型等に分類される多国籍企業の、規模や組織形態、統治方針によってその最適解は異なってくるはずだと。

といったようにコトバとビジネスのかかわりを真面目に示してくれる「役に立たないかもしれないが面白い」本である。

すぐに役立つゴルフルール 2008年度版 (2008)すぐに役立つゴルフルール 2008年度版 (2008)

池田書店 2008-02
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ゴルフのルールのサマリー本。

ゴルフのルールはかなり詳細で、きちんと理解するのは実はとても難しい。
小学生時代に読んだ「プロゴルファー猿」から得た知識と、一緒にラウンドする方々から教えていただいたルールで、だいたいは理解しているつもりだったのだが・・・読んでみると知らないルールも実に多いことに気づかさます。

バンカー内にある枯れ葉は拾ってはダメ、人のスイングについてのアドバイスをしてもダメ、素振りで木の枝を折ってしまうとダメ、グリーン上の人のパットにあわせてあわてて旗を抜いてはダメ、スイングするときに傘をさしていてはダメ、、、、といった感じで知らなかったペナルティも多い。

個々のルールを完全に把握するのは難しいのだけれど、200近い事例を読み終わってみると、「ゴルフ」というスポーツの、自然とプレイヤーとの関係や、紳士のスポーツとしてタブーとされているところ、といったコンテキストがぼんやりと見えてきて、とても勉強になる。

もっと早く読んでみればよかったなぁと。

人間関係力~困った時の33のヒント~ (小学館101新書) (小学館101新書 7)人間関係力~困った時の33のヒント~ (小学館101新書) (小学館101新書 7)
齋藤 孝

小学館 2008-10-01
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「声に出して読みたい日本語」で有名な 斎藤氏による 人間関係に関する指南書。

良い人間関係は、ときに人を動かし、ときに生活の質を上げていく。一方、悪い人間関係は、現代社会においては大きなストレスになることも多い。
その人間関係力の向上のためのヒントを、歴史上の著名人の言葉を借りて、メッセージとして読み手に伝えてくれる。
ビジネス、プライベートといったそれぞれの場面で33人の著名人が、人間関係に関する的確な助言をしてくれるのである。

年下の部下との付き合い方の悩みに対して、劉備玄徳が孔明を迎えた「三顧の礼」を例に、年下であってもよいものは良いと認める信頼の姿勢を薦める。

周囲の評判を気にして思うように行動できないという悩みに対しては、「ケチ」だと言われ続けても、体裁を気にせずに、結果的に国の資産と国民の領分を守り通した君主について述べた ルネッサンスの思想家マキャベリの言葉を借りて、その方向性を示す。
「悪徳の評判など構わず受けるがよい。」とは、なんとも潔いメッセージである。
見事なV字開発を遂げたカルロスゴーンもコストカッターとしてのいち時期の悪評は高かったことを思い出す。「何事につけてもよい行いをすると公言する人は、よからぬ多数の人々の中にあって、破滅せざるをえない。したがって、身を守ろうとする君主は、よくない人間にもなれることを習い覚える必要がある。」なんとも身にしみるメッセージである。

さまざまな名言を引き合いに、なにかと説得させられてしまう一冊。
そして、著者の引出しの多さに感嘆させられる一冊でもある。

ST警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル (講談社文庫)ST警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル (講談社文庫)
今野 敏

講談社 2006-08-12
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Myブームのひとつ 今野 敏。
代表作のひとつSTシリーズに挑戦。これ、面白いですねぇ。
個人的に興味のある医療モノだったせいか、さくさく読めて好感触。

7つの習慣

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7つの習慣―成功には原則があった!7つの習慣―成功には原則があった!
Stephen R. Covey 川西 茂

キングベアー出版 1996-12
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多方面で絶賛されている自己啓発本のひとつ。
そんなに、目新しいことが書いてあるわけではないけれど、ひとつひとつのメッセージは、じわっと心に響くものばかり。

1. 主体性を発揮する
2. 目的を持ってはじめる
3. 重要事項を優先する
4. Win-Winを考える
5. 理解してから理解される
6. 相乗効果を発揮する
7. 刃を研ぐ

豊かな生活の中心におくべきものは、仕事ではなく、お金でもなく、所有物でもなく、そして家族や友達中心だけでもない、ましてや自己や敵などでもなく、常に自己の信じる「原則」であるべき。
原則こそが、唯一永続的な価値を持っていて、自分の行動に正しい方向を示してくれるガイドラインだから。
あの人がこうしているから、会社がどうだから、あれを手に入れたいかr・・・そんなマインドが働いてしまうことがあるけれど、これからは自分の信じるべき信念をもって主体的に生きていこう。

そーんなことを色々考えされられる一冊。ちょっとボリュームはあるけれども、一度は読んでおきたい。
習慣化するかどうかは読む人のモチベーション次第だけれど、長い人生をこれから生きていく上で、この本に費やす3,4時間は無駄にはならないはず。

先日のバケーション中に一気に読み切って、身も心も一新されたような、そんな出会いでした。

容疑者Xの献身

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容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)
東野 圭吾

文藝春秋 2008-08-05
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映画も好評公開中の東野圭吾作品。

かなり面白いです。

最初に殺人事件が起きて、犯人も状況も読者に明かした状態から、湯川教授と警察が徐々に核心にせまっていく、という東野作品ではよくあるギミック。
相変わらず、絶妙の犯罪心理描写です。

読み終わったときにグサッと心を突き抜ける、タイトルにある「献身」ということば。
なんとも切なく苦しい気持ちにさせてくれました。

まだ読んでいない方はぜひ。

BRICsの底力

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BRICsの底力 (ちくま新書 735)BRICsの底力 (ちくま新書 735)
小林 英夫

筑摩書房 2008-08
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BRICsという言葉をニュースで耳にしない日が少なくなってきた。

個人的にも、仕事や投資の場面で、BRICsと触れ合うことは多い。
実際に仕事で出会ったインドや中国の人たちは、とてもパワフルで、新興市場としての圧倒的な存在感を感じさせる。
そんなBRICsの実情を、豊富なデータをもとに多角的に分析した一冊。

BRICs経済の状況や展望だけでなく、BRICsがなぜ生まれて、今日に至ったパワーの源泉は何なのか、という視点の分析も面白い。 これを読むと、20世紀に高度成長を遂げた日本などとは、まったく異なる成長の仕方をしていくことがよくわかる。

BRICsの強さの要因のひとつは、グローバルな視野を持つ政治家や経済リーダの存在があると説く。中国の国家主席胡錦濤やブラジル大統領ルーラがその例だという。BRICsでは、生まれながらに言語・習慣・文化・思考においてグローバルな環境が与えらえるという状況がある。この環境が、国際感覚に優れた人間を育て、各方面で頭角を現すことになるのである。

日本という島国でも、最近は国際感覚を身につけるべく、さまざまな教育や取組みが行われているが、中国やインドの大学の教育レベルをみると、日本ではとてもかなわないような層の厚い教育があるように見える。10年後には、産業構造は大きく異なっているはずだ。

日本にとってBRICsの各国は、ライバルという位置づけではないはず。高度な成長を短期間で進めた実績をもち、現在は地球環境問題へ積極的に取り組むリーダとしての日本は、BRICsと先進国をつなぐ橋渡しとして、国際的な位置づけを明確にしていなかければならないというのが、著者のメッセージである。

経営革命の構造 (岩波新書)経営革命の構造 (岩波新書)
米倉 誠一郎

岩波書店 1999-11
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イギリスの産業革命、アメリカの経営革命、そしてビッグビジネスの創出。
これらの歴史とともにあった経営史を紐解きながら、革命の構成要素に迫る。

市場が変化し、技術が生まれ、その両者をつなぐ経営者がいて、ビジネスが成立する。そしてそれらの流れが組み合わさって、大きな時代の潮流となり、歴史的な革命や名の残る企業が生まれていく。

20世紀のアメリカが、激しい競争社会のなかで、企業買収と多角化経営に舵をきるなか、日本は技術を蓄積するという異なるアプローチで戦後の危機的状況を乗り切って、経済大国へと成長した。

歴史を振り返ると、どの時代、どの場所における経営革命においても、背景には新しい技術やプロセスの誕生が存在したことがわかる。

21世紀のいま、モノ以外の産業が主流になるという新しい産業構造が定着しつつある。この変化にたいして、どのような新しいイノベーションがこれから起きていくのだろうか。
新しい変化の中に身を置くものとして、過去に起こった革命を振り返っておくのも悪くないかもしれない。

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書 (1948))理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書 (1948))
高橋 昌一郎

講談社 2008-06-17
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ただいまから「理性の限界」に関するシンポジウムを開催したいと思います。

という司会者の言葉から物語は始まる。

「アロウの不可能性定理」「ハイゼンベルグの不確定性原理」「ゲーデルの不完全性定理」といった難解なテーマをわかりやすく展開するために、司会者を中心とした対話形式で進んでいくというギミックが面白い。

1章では投票のパラドクスや囚人のジレンマなどを例に、完全なる「選択」というものは存在しえないことを議論し、2章ではニュートン物理学から特殊相対性原理が導かれた背景を示しながら「科学」がもたらすものは必ずしも完全なものではないことを論じている。
そして3章では、ぬきうちテストのパラドクスをひきあいにゲーデルの不完全性定理の説明を通じて、知っていることとは何を指すのか、「知識」についての限界に迫る。

なんとなく知っているかも、というレベルのさまざまな定理や論理を、わかりやすい事例を使いながら多角的な視点で書き下された説明に、なんだか知的好奇心がくすぐられてしまう。

「科学」とはなになのか、「選ぶ」ということはなになのか・・・「理性」とは測れるものなのか。科学的見地だけでなく哲学的な視点も混ぜながら、学問を楽しむ、そんな一冊。

鳥人計画 (角川文庫)鳥人計画 (角川文庫)
東野 圭吾

角川書店 2003-08
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東野圭吾としては・・・な作品か。
殺人事件とスポーツ倫理をうまく絡めたあたり、とっても面白いんだけど、すべてを読み終わったところで、ちょっと納得できていないというか・・・。

スキージャンプという、ふだん馴染みのないテーマなので、新鮮なんですけどね。

それでも、先がきになって、一気に読まされてしまうあたりはさすがです。

ビート (新潮文庫 こ 42-4 警視庁強行犯係・樋口顕)ビート (新潮文庫 こ 42-4 警視庁強行犯係・樋口顕)
今野 敏

新潮社 2008-04
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知人に紹介されてからハマりつつある 今野敏。
警察ドラマなんだけど、シナリオというよりも、主人公を中心とした人間ドラマに主眼が置かれていて、ビジネスマンとして、男として、共感できる部分が多く、その世界に引き込まれてしまう。

この「ビート」は、仕事一筋の不器用な刑事と、会話も疎遠になりがちな息子ふたりとの関係を中心に、事件が進んでいく。

読み終わると、なんだかホッとする、そんな物語です。

日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書 ふ 2-1)日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書 ふ 2-1)
古田 隆彦

幻冬舎 2008-05
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2004年を折り返し地点として、日本の人口は減少に転じた。
さて、この先、日本の人口はどうなっていくのだろうか。 このままどんどん減少していくと、現在の経済規模を維持するためには、海外からの移民に頼ることになるのか・・・・。
そういった問いに対して、多角的な見解を占めす本書。かなり幅広い見地から、人口変動の歴史、経済活動への影響、そして22世紀の日本について触れている。

「少子高齢化で人口が減る」という短期的な考えは間違っているという主張に始まり、人類の人口の変動には、2つの人口抑制効果によるもっとマクロな効果が働いているという展開に至る。

人口が適正な数に抑制される要因には、文化的な抑制と、生理的な抑制の2つがあり、それらは両者とも遺伝子に組み込まれた本能的活動であるらしい。
人口が増えすぎると、経済活動が飽和し、都市環境の悪化や生活圧迫がおこり、伝染病が増加する。ときには、宗教的な出産抑制や一人っ子政策のような政治的抑制が行われたという歴史的事実もある。そのような環境下で、本能的に生命力が低下していくことも研究結果として表れているらしい。
これらはすべて、最適な人口数を維持するための本能的な活動ということである。

本書によると、これらの本能的な人口抑制の結果として、これまでの人類の人口は長期的な周期変動を繰り返してきた。そして、21世紀初頭に迎えた12500万人の日本人口の頭打ちも、ひとつの周期のヤマであらしい。

この先、どんどん減少が進む日本の人口を、増加に転じさせるには、文化的・経済的に日本という国が受け入れることのできる人口の容量を増やす必要がある。そのためには、新しい産業分野を創出し、これまでの文化と経済活動を凝縮していくというパラダイムシフトが必要であると著者は説く。
これらの準備が整ってはじめて、日本の人口は再び増加に転じると。

「人口論」という、とっても身近でありながら、あまり知らなかった新しい学問に触れられたことにとても満足できた一冊。ひとつの問題を捉えるには短期的な視点ではなく、マクロなものの見方をすることで新しい視野が広がる、ということを改めて認識できた一冊でもある。

経済活動を見通すためのパラメータとして、人口は欠かせない。
22世紀の日本が、今以上に活発な経済活動を続けていけるように、今日から出来ることがきっとあるはず。本書には、そのヒントが隠されているのかもしれない。

スティーブ・ジョブズ神の交渉力―この「やり口」には逆らえない! (リュウ・ブックスアステ新書 48)スティーブ・ジョブズ神の交渉力―この「やり口」には逆らえない! (リュウ・ブックスアステ新書 48)
竹内 一正

経済界 2008-05
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スティーブ・ジョブス。家電業界に生きる私も、最近は彼の名前を耳にすることが多い。それは、別世界で生きるとある会社の一モデルという位置づけではなく、ライバルとして、ときには研究すべき相手として。

そんな彼のもつ、絶大な求心力、独創性、君臨性、成功までのストーリーをつづった物語。数多くある、いわゆる「ジョブス本」のひとつである。

アップルでジョブスとともに働いていた著者による、アップルの内側、外側の両者から描いたジョブスの生きざまがそこにはある。
ガレージから立ち上げたアップルの創業、そのアップルを追い出されてネクストを創業、ピクサーの買収、ディズニーの取締役、iPhoneの発売・・・。
知っている話・エピソードも多く書かれているし、知らない話もある。全体として何かのメッセージを伝えるというよりも、客観的にジョブスの「すごさ」「超人っぷり」を述べことに終始されているが、それはそれで読み物として面白い。

iPod,iPhoneに示される成功の裏には、自分の興味のあることを徹底的に追及する技術者としての姿勢があり、相手がどんな大物であろうと気に入らないものを徹底的に排除する非情なまでの冷酷さと交渉力があり、時代の流れの最先端に立ち続ける洞察力の深さとスピードのある判断力があり、そして、プレゼンの場では、自分の言葉でオーディエンスを圧倒する天才的パフォーマーとしての素質がある。

まさに天才である。

タイトルにある「交渉力」について、天才のもつ交渉力というのは、必ずしも凡人にとって有益なものであるとは限らないことを思い知らされる1冊。そこから学ぶものは少ないかもしれないが、まだジョブス本を読んでいない人にとっては、彼を知るよい本と言えるかもしれない。

実際にジョブスを知る人の話を聞くと、昼夜、クリスマスを問わず、家族とのバケーション中であろうとお構いなしに、電話で必要な人を呼びつける、その図々しさと強引さは、本書にあるとおりのようです。
彼とともに仕事をすることは、時には苦痛なこともあるかもしれないが、それを超える求心力と魅力がそこにはあるのかもしれません。

ビルゲイツも最前線を退いた今、53歳のジョブスはこの後どうなるのであろうか。そこに待つのは「本能寺の変」なのか、それとも刃を失い、丸く穏やかになっていくのか。彼の1世代下の一エンジニアとしては、今後の彼の動向からも目が離せない。

テレビ進化論

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テレビ進化論  (講談社現代新書 1938) (講談社現代新書 1938)テレビ進化論 (講談社現代新書 1938) (講談社現代新書 1938)
境 真良

講談社 2008-04-18
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「放送と通信の融合」について書かれた本やエッセイはいろいろあると思うが、わりとありきたりな意見だったり、予想の域を出ない根拠の薄いコメントが行われているものが多いように思う。
それに比べると、通産省であちらの世界からメディアやコンテンツについてその覇権のいくえをハンドルしていた筆者の意見は、わりと説得力がある。

前半は、まず日本における「コンテンツ業界」についての深い考察から始まる。目に見えない情報体験のデータであるコンテンツを扱うコンテンツメディア業界は、本来とてもシンプルなビジネスモデルであるはずが、関係者以外立ち入り禁止ともいえる特殊なギョーカイに守られていることで、14兆円ものお金の動きが見えずづらくなっている。そこに家電産業、広告業界、そして国の方針、というさまざまなステークホルダがそれぞれの思惑をはせるがゆえに、その変化の動きは遅く、さらに利用者の視点を無視しているとも思える動きがいろいろと起きてしまっている。

最近、NGNやアクトビラといったサービスも始まり、インターネットを超えようとするテレビが表れてきた。DVDやHDDの録画機は普及し、タイムシフトが当たり前となって番組編成の概念が崩れ始めてきた。それによって、広告業界は、年間540億近くの広告効果を失ってきているらしい。

そのような状況下でテレビはどのように進化していくのだろうか。筆者は「テレビの次」「次のテレビ」という表現で、彼なりの予想を示している。

リビングのテレビにふんぞり返って家族で見るというテレビが、YouTubeやニコニコ動画といったコンピュータ起因のサービスと融合することは難しいだろうけれど、映像コンテンツの「視聴の仕方の変化」が生む新しいてれびシステムを「次のテレビ」と呼んでいる。その実現に対して、編成、広告、インフラ、有料放送などの視点で、考察をした上で、今実際に行われているサービスを包含するようなものでなければ視聴者に受け入れられることはなく、テレビ局の仕事の仕方・編成の概念は変わらないというのが彼の予想である。

「テレビの次」については「番組の作り方の変化」と「テレビを飛び越えるコンテンツ」の方向性にわかれると説く。コンテンツそのものを提供するのがテレビ局だけではなく、ユーザ創発型にシフトしていくという、クリエーター覇権の時代が終わるというのが前者。テレビだけでなく、映画や書籍・イベントなどのメディアミックスによって情報の連鎖による相乗効果を期待するものが後者である。テレビという枠を超えるかもしれないが、もともとテレビを通じて伝えたかった娯楽を純粋化して伝える仕組みが再定義される、これが「テレビの次」と呼ばれるものである。

この本の中で筆者が述べていることのひとつひとつは、そんなに突飛なことではない。だが、その言葉には重みがあるのである。
そこには、これらの正常進化とも思える変化が起きそうでなかなか起きないという、業界のフットワークの悪さに対するイラダチのようなものが込められているようにも読めなくはない。
著作権をはじめとするさまざまな権利がらみになって身動きの取れず、利権の守りあいとなってしまった日本のしくみをよく知る筆者ならではの視点で、「放送と通信の融合」を再考してみるのも面白いかもしれない。

日本だけでなくヨーロッパやアジアといった海外の諸国のテレビ業界がどのような方向に向かっているのかというのも気になるところ。本書では触れられていないが、ぜひ良い本や文献があれば読んでみたい。


さまよう刃 (角川文庫 ひ 16-6)さまよう刃 (角川文庫 ひ 16-6)
東野 圭吾

角川グループパブリッシング 2008-05-24
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少年犯罪をテーマにした、加害者と被害者の家族、そして警察をとりまくサスペンス的ストーリー。

遊び感覚で残虐な犯罪を起こしてしまった少年と被害にあった少女。
被害者の父親の無念の気持ちが、徐々に、怒りやさまざまな形へと変えながら、加害者を追い詰めていく。その裏で、警察の捜査も進んでいくのだが・・・。

反省の様子をみせることもなく逃げ続ける被害者。彼が警察に捕まることが物語のゴールなのだろうか、少年法のもとに彼ら少年加害者を更生させることにどれだけの意味があるのだろうか、はたしてそれで被害者の家族の気持ち・怒りはどこに収まるべきだのだろうか。もしその家族が復讐を果たしたら、その罪はどれほどの重みを持つのだろうか。

少年法と少年犯罪、その罪の重さ、いろいろと考えさせられる作品。

小説としては、十分に面白い。
しかし、主人公である父親の気持ちに重ねながらこの本を読み進めた結果、最後にのこるのは、もやっとした気持ち悪さであって、決して気持ちのよいものではないかもしれない。

社長が求める課長の仕事力社長が求める課長の仕事力
長谷川 和廣

かんき出版 2008-06-03
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ふとタイトルに惹かれて本屋で手にとってしまった。
最近は業務上、課長というタイトルをもった人たちと仕事をすることも多くなってきた。
それぞれ仕事のスタイルは個性的で、成果を出すまでのアプローチも、私たち後進への接し方もさまざま。

見習わなければと、勉強になる部分も多いのだが、必ずしもスマートとは言えない面白いコンピテンシーを持った課長さんもいたりと。じゃぁ、世間でいうできる課長とはどんな人なんだろう、と思い読み始めてみました。
上司からは、「自分の一段上のタイトルの視点で仕事をしなければいけない」とも常にいわれているし、なにか役に立てばよいなぁと。

リーダーシップのとりかた、人間関係の気づき方、利益の上げ方、改善の方法、スキルの身につけ方、発想の方法、などなどさまざまな視点でのノウハウがまとめられている。

企画・営業系の内容が多く、エンジニア課長にピンポイントにはハマらないメッセージもいくつかあったように思えたけれど、大半は組織をリードする人に共通に求められているものに違いない。

いくつか心に響いたメッセージを。

判断(ジャッジメント)と決断(ディシジョン)の違いを意識しなければいけない。
判断とは、複数の選択肢の中から最良な方法を論理的に導くこと。決断とは、検討結果をもとにして、物事のよしあしを選択する行為。
ビジネスに求められるのは的確なジャッジメントと迅速なディシジョン。

コップに入った半分の水をみて「まだ半分残っている」とプラス思考に考えることは決して悪くない。ただし、「もう半分しか残っていない」と悪いことを思い描くことは本当に悪いことだろうか?
最近はプラス思考を優と説くシナリオが多いけれども、本当は心配事があるのにプラス思考への思い込みから、無理にリスクから目をそらしてしまうことに注意しなければならない。
リスクが見つかった場合に、目を背けるのではなく「事前にわかってよかった」と考えて対策をとるのが、ビジネスにおけるプラス思考である。

かなり読みやすいので肩書きにかかわらず、すべてのビジネスマンが対象といえるかも知れません。
著者の説く、課長の心構え7箇条は、即効性ありそうです。

プロ論。プロ論。
B-ing編集部

徳間書店 2004-12-19
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カルロスゴーン、松本大、石橋貴明、香山リカ、秋元康、野口健、高橋がなり、宮内義彦、佐藤可士和などなど、とりあげられている「プロ」の活躍する業界はさまざま。

総勢50名の、その道のプロたちへのインタビュー記事をまとめた一冊。インタビュー自体は、2001年前後に行われているものも多いので、2008年に読むには、ちょっとした時代背景のずれや、時事状況の不一致はあるものの成功者のメッセージは、そんなことには左右されない力強いものが多い。

会社で困っているときにどうすべきか、転職を考える場合にどうすべきか、と「仕事」についてのプロたちの哲学が述べられている。
もちろん人によって言っていることはさまざま(わりと矛盾する意見などもあってそれはそれで面白いの)だが、大きく分類すると「自分の道を信じて目標設定することが大切!」と自己をコントロールすることが大切と説くプロと、「とにかく動くべき」と行動を起こすことによって引き起こされる効果を大切にしようとするプロが多いように思う。

この本に登場している成功者たちの意見は、その言葉だけをみると、勇気付けや激励の一面をもつ。でも、それと同時に、その行間には「努力しないやつは、そりゃプロにはなれないさ」的な世の中の厳しさをそれぞれの言葉で語っているとも思える。
ま、いろいろあるけど、明日からもがんばろう、そんな気になるかどうかは、読み手しだいかも。

ちなみに、この本、古本屋で105円で入手したもの。105円でこれだけの記事が読めるというのは、やはり得した気分ですね。続編もあるようなので、そのうち読んでみたいところ。

最後に、心に響いたプロたちの言葉を適当に引用。

危機的な状況のときにこそ、人は最も成長します。そして、その人の本質が見えるものなんです。
企業の栄枯盛衰は、数十年もかからない
転職に踏み出せないなら、仕事から目をそらせ
今が面白くない人からは、運もお金も逃げていく
みんなが危ないと言うことこそ、実は危なくなかったりする
必ず自分の頭で考えてみる。それがオリジナリティーを生む
とにかく勉強せよ。40代で気づいても手遅れになる
10年後がイメージできれば、いまやるべきことが見えてくる
国際人である前に日本人でなければならない
この世は自分の意識がつくる。だから深い物語をつくること
何かを犠牲にしないで夢を見てはいけない
過去は自ら破壊する。転機は自ら作る
パニック時の特効薬は笑いである
何がほしいかではなく、何を捨てられるか
失敗は人生の免疫である。味わいつくし分析せよ
やりたいことはとにかくやる。そのほうが、人生は楽しい
いい企画は生み出すのが本当に難しい。それを肝に銘じておくこと
努力したことを自分からアピールしてどうする
報われる努力もあるけど、報われない努力もある
時間はつくるもの。「忙しいから」は言い訳にはならない
何よりやってはいけないのは、つまらないと思いながら仕事をすること
日本人は、いったい何を守ろうとしているのだろう

暗号と認証 (基礎から身につくネットワーク技術シリーズ)暗号と認証 (基礎から身につくネットワーク技術シリーズ)
日経NET WORK

日経BP社 2004-11
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日経NETWORKのまとめた 基礎技術の解説本。 学生時代になーんとなく学んでいた暗号や認証の技術について、なーんとなく理解はしているつもりだけど、キチンと本でも読めば身になるかもと思い購入。

前半は、共通鍵や暗号鍵といった暗号の基本的な考え方と技術の解説に始まり、チャレンジレスポンスやワンタイムパスワードといった認証のアーキテクチャなどがとても丁寧に説明されている。
後半ではそれらの基礎をもとに、WEBやメール、IPsecではどのような方法で情報を守っているのかという視点での解説が続く。

それぞれは、とっても判りやすくてよいのだが、全体を通じて、話の流れや用語のニュアンスに一貫性がないようにおもえるのが残念。説明する内容が、重複する節もあったり。
雑誌で連載されていた記事をアレンジしたもののようなので、仕方はないのかもしれませんが、技術書籍としてはもう一歩物足りないか・・・。


絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク データベースはこう使っている (DB Selection)絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク データベースはこう使っている (DB Selection)
小田 圭二

翔泳社 2008-04-22
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本屋でふらっと五目買いしたDBに関する書籍。
特にデータベースに興味があったわけではないのですが、なんとなくタイトルに惹かれて。

データベースをシステムの1アプリケー書んととらえた場合、アプリケーションがOS、メモリやストレージ、ネットワークをどのように使っているのかという仕組みは、一般的なWindowsやLinuxのアプリでも組み込みソフトウェアでも同じといえる。

アプリケーションといた上位概念から、OSやストレージの制御といった下位までを網羅したシステム全体のふるまいを理解するのは、単一の視点でかかれた書籍だけの利用では難しくて、それなりに経験を積んで自分で身につけていくことを要求されることが多い。

この本は、はじめからマクロな視点で描かれているし、絵が多様されているので、結構わかりやすい。
構成も、雑誌の特集を集めた記事のようなので、はじめから順に読んでいかなくても、ページを斜め読みして興味のある部分だけを読んでいく、ということも可能なのもうれしい。

個人的には、メモリ/OSは、比較的普段から接することが多いけれど、ストレージまわりが弱かったので、部分的に参考になるページも多かった。
特に、ミドルウェアありきでアプリケーションにフォーカスした仕事をしている人には、有用な本のひとつかもしれない。

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)
東野 圭吾

講談社 1998-03
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最近は出張などで本を読む機会が多かったので、まとめて簡単にブックレビューをしていこうと思います。

やっぱり気楽に読めるのは東野圭吾。このパラレルワールドラブストーリーは、そのタイトルのとおり、恋愛に主眼がおかれた物語。

東野氏らしい十分な研究と事前準備によって、パラレルワールドをキーワードに、脳科学をとりまく男女の恋愛劇がミステリータッチで描かれています。

同時にお2つのストーリーが並行して進んでいくという構成は、同氏の「分身」と同じような流れ。異なるのは、この「パラレルストーリー」では、同じ登場人物、同じ背景で描かれるということ。それぞれの世界では、登場人物たちの相互関係が大きく異なっているのです。

同時に2つの進んでい物語は、過去と未来のを描いたものなのか、それともへ仮想世界を描いたものなのか、読み進めるにつれて、作者から出されるヒントを手がかりに、その全体像が徐々に明らかになっていく。そのヒントの出し加減は、相変わらず絶妙・・・。

次々と先が読みたくなる、楽しくてちょっと切ない、そんな恋愛小説です。


学生街の殺人 (講談社文庫)学生街の殺人 (講談社文庫)
東野 圭吾

講談社 1990-07
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東野圭吾の4作目の作品。
さびれた学生街でおきる連続殺人事件、はたしてその密室のトリックは・・・?

読み応えのある一冊。
なんだけど、ちょーっと物足りない。

なぜだろうと考えてみると、他の東野作品にあるような、深ーい研究と考察が見えないからだと気付きました。

最近読んだ作品も、性同一性障害やクローンといった社会的に注目されているトピックをヒントに書かれた作品だったりして、十分に読み応えのある密室トリックもなんだか物足りなく思えてしまったわけですね。

東野圭吾、読者にとってのハードル高いなぁ。

分身

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分身 (集英社文庫)分身 (集英社文庫)
東野 圭吾

集英社 1996-09
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またまた東野 圭吾です。
札幌で育った女子大生と、東京で育った女子大生、なぜかそっくりな二人。
別の世界で生きるふたりの周囲でおこる不可思議な事件、運命的な出会い、そして出生の秘密は・・・。

まったく異なる地点でくりひろげられる2つのストーリーが並行に進んでいく。
少しづつ、それぞれの世界が交わる過程で、著者から提示されるちょっとしたヒント。
そのヒントをもとに、物語の先を想像しながら読み進めていくことができるワクワク感がそこにはあります。
そして、二人が出会ったところで答え合わせ。「やっぱりね」と思わずニヤッとしてしまうかんじ。

二つの世界が並行に進むという技法はよくあるけれども、そういうベーシックな技法も、東野ワールドでは、また新鮮に感じてしまいますね。

大きな社会テーマを題材とすることの多い彼の作品ですが、今回もただの小説という枠をこえて、医療哲学の問題を説いてくれています。これも名作のひとつだと思います。

果断―隠蔽捜査2果断―隠蔽捜査2
今野 敏

新潮社 2007-04
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今野 敏による隠蔽捜査の続編。
前作で、事件の責任をとらされ、警察署長へと左遷になったキャリア竜崎伸也の活躍を描く。

今回の事件は、所轄で起こった発砲立てこもり事件。
SIT、SAT、警察庁、警視庁という、外部からは「警察」とひとくくりにされそうな、警察内部組織の確執を背景に、事件は進んでいく。

前作と比べると、竜崎の扱う事件のスケールは小さくなっていますが、2作目ということもあり、1ページ目から彼の人間性に共感しながら読み進めていくことができ、全体の満足度は前作を上回りました。

常に合理的な考えのもと、自らの主張を通しつづける主人公。当然、反発にあいながらも、少しずつ周囲の人間によい影響を与えていく様子は、とても爽快です。

構成もまとまっているし、登場人物のキャラクタも明確だし、ドラマ化、映画化への期待も高まる作品。
さらなる続編に期待です。

隠蔽捜査 (新潮文庫)隠蔽捜査 (新潮文庫)
今野 敏

新潮社 2008-01-29
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警察官僚の主人公が、不祥事に巻き込まれながら、自分の信念と、家族への思い、そして国家への忠誠心にはさまれてもがく様を描いた小説。
警察だけでなく、食品業界など、現実の世界でも不祥事が続いているご時勢なので、なんだかとてもリアルにも見えてしまう。

危機管理に関するキャリアの話ということで、テーマはわりと重いのですが、語り口が軽いのでさくさく読めるのがいいですね。
一見堅物の主人公が、家族との対話などを通じてときどき垣間見せる人間味が、とてもうまく描かれていて面白いです。

そうえいば、警察庁ではないけれど、官僚になった知人がいたなぁ・・・いまごろ何をしているだろう・・・。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
堤 未果

岩波書店 2008-01
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週末のブックストアで、五目買いした本の中に埋まっていた1冊。
このタイトルを選んだことに強い意図はなかったのですが、読み終えた感想は、「この本に出会えてよかった。」

そこに書かれているのは、アメリカンドリームなどのきれいごととはほど遠い、アメリカという大国にはびこる「格差」そして「民営化による悲劇」というなの驚愕の事実。
普段、メディアを通じて私たちが得ているアメリカの情報や、日本人がアメリカ旅行で体験するアメリカの雰囲気は、その大国の側面にすぎなくて、真実のアメリカはそこにはない。

- 6000万人の人が一日7ドル以下で生活をしているという現実
- 国と民営化のはざまで、まったく復興のすすまないニューオーリンズ
- 医療保険制度の民営化にともなう過度の競争化で異常に高額化してしまった治療費(盲腸の手術で2万ドル超、出産費用が1万5000ドル超)
- 中流のひとが病院に行けない国
- 先進国における乳児死亡率1位の国
- 一番安い食べ物はファーストフード。貧困と肥満が同義になりつつある国
- 貧しい少年時代を過ごした結果、人間として最低限の生活を送るための唯一の選択肢は、軍に入隊すること
- アーミーゲームに洗脳され、個人情報を抑えられ、入隊、そしてイラクへと送られる若者たち

サブプライムの問題をきっかけに、少しづつ綻びが見えつつあるアメリカであるが、いま、アメリカに起きていることは、私の想像を超えるものであった。

これは、アメリカが目指した「自由」の結果なのだろうか、日本はどのような立場でアメリカと接していくべきなのだろうか、そして日本の将来は・・・。
いろんなことを考えさせられる1冊。
新書という位置づけなので、すべてが真実かどうかは読者が選別する必要はあると思いますが、良書だと思います。

アマゾンのカスタマレビューでも好評のようです。
ビジネスや生活において、アメリカと少しでも関係する方は、知っておきたいひとつの情報だと思います。

最後に、著者があとがきにのせたコメントを引用

無知や無関心は「変えられないのでは」という恐怖を生み、いつしか無力感となって私たちから力を奪う。だが目をふせて口をつぐんだとき、私たちは初めて負けるのだ。そして大人が自ら舞台から降りた時が、子供たちにとって絶望の始まりになる。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
山田 真哉

光文社 2005-02-16
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本棚を整理していたら、ずいぶん前に買ったまま読んでいなかった本書を発見。
わかりやすい会計本が好調の山田氏のブームのきっかけになった一冊である。

内容はというと、「掛」などの専門用語を使わずして、会計の本質を理解させようという、実に明快かつ分かりやすい一冊。
住宅街にひっそりとたたずむ高級フランス料理店はどのように利益を上げているのか、なぜ飲み会ではワリカンをまとめる人が得なのか、など徹底した消費者視点で書かれています。
会計を学んだことのある人には、当り前のことが書かれているだけとも思えますが、本当にわかりやすく、会計の入門にはおすすめです。

私も、以前簿記の勉強をしたときに、わかりにくい参考書を通じて、あぁ会計ってこいいうことだったのね、見えないお金の動きはこうやって数字化すれば見えるのね、みたいなこと苦労して学んだことを思い出しました。
勉強する前に、こういった本に出会って会計感覚を先に身につけておけば、もうちょっと楽だったかなぁと、そんなことを思わせる1冊です。

片想い (文春文庫)片想い (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2004-08-04
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性同一性障害をテーマにした東野 圭吾のサスペンス小説。
今回も、専門家ばりの入念な研究がうかがえる、濃い作品。

ネタバレになるので、多くを書けませんが、面白かったですね。
男とは、女とは、いったい何なんでしょう。
タイトル「片想い」に示される、登場人物たちの多くの思いが、サスペンスを超えた深みを醸し出しています。

問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座 (Best solution)問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座 (Best solution)
堀 公俊

東洋経済新報社 2003-02
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なにかと注目されているビジネススキル ファシリテーションについての解説本。
うまく体系だてて説明されているので、とてもわかりやすい気がします。

強烈なトップダウンの意思でもない限り、ファシリテーション能力の高いリーダーやPMOがいるのといないのとでは、プロジェクトの推進効率は大きく異なる。
そのためのヒントが多くつまっている一冊。
実際のプロジェクトで起こりうる色んな問題や状況を想像しながら読むと、より効果的。

企業における改革について

改革にもいくつか種類があるが、戦略の改革、業務の改革、風土の改革の順で改革は難しい。

組織を変えるための基本ステップは
- 解凍1 危機意識を高める
- 解凍2 変革推進のための連帯チームを築く
- 解凍3 ビジョンと戦略を生み出す
- 解凍4 変革のためのビジョンを周知徹底する
- 移行5 従業員の自発を促す
- 移行6 短期的成果を実現する
- 定着7 成果を活かして、さらなる変革を推進する
- 定着8 新しい方法を企業文化に定着させる

とにかく重要なのは、解凍フェーズ。
ここであらゆる知恵と努力をおしむことなく、トップの意思表明・コミットメントをしっかりと咀嚼することに全力を使うこと。

選択的知覚(現状に満足していると自分に都合よく状況を解釈してしまう心情)をもつ人や、改革に必要なエネルギーや心理的なコストを払えない人に対して、改革を促すには
1.現状への不安をあおり、このままでは通じない事を気づかせる
2.改革へのメリットを理解させ、改革への安心感を与える
3.チームの力で選択的知覚を打破する
4.内なる改革心を目覚めさせる

改革案を現場に理解させるには、とにかくオーバーコミュニケーション。対象者の平方根くらいの回数のコミュニケーションが必要になる。

推進10%、中間60%、反対30%という反対勢力が優勢な状況であっても、改革が成功に向かっている様子が見えると、中間層は一気に推進派になり多勢となる。そのために、初期成果をしっかりとアピールして、成功を実感体験させて、流れを作る事が大事。

人のタイプ別のコミュニケーション術

何かを変えようと活動すると、いろんなタイプの人にであう。

-責任感は強いが、自分たちにまかせろといって、他の意見を聞かない人
-とても丁寧に説明してくれるけど、自分自身の意見が明確で無い人
-社内事情には明るいが、周囲からの悲観情報だけをフォーカスして議論に水を指す人
-上司の顔を常に気にして、意思決定から逃げ回る人
-過去の失敗を持ち出し、完全にあきらめムードな人

このような人たちを、改革への意識に向かわせるにはどうすればよいか?
これがスムーズにできればファシリテーション能力が備わっているといえるのかもしれない。
そのヒントは、本書の中に。

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)
勝間 和代

光文社 2007-11-16
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休日出勤の帰り道。電車の中で完読。
なかなかボディに効いた一冊です。

めちゃめちゃ難しいことが書いてあるわけではなく、金融という視点で、当たり前のことが書いてあるだけなのですが、しっかりと実践できていない自分のことを言われているようで・・・。

個人的には、数年前から、ある程度資産を分散させた上で、組みなおしの頻度を下げながら、外貨、インデックス連動投資信託、新興国ファンド、国内株式、生命保険などで、分散させて運用しているつもり。

とはいっても、ついつい目先の相場の変動であわてて売買してしまったり。
長期の分散投資、債券のおいしさ、など基本姿勢をもう一度見つめ直そうと思わせる一冊でした。

よくある、株や投資信託で儲かる本の類ではなく、理論に基づいて、日本国内の少子化の背景や、住宅ローンと住宅資産のバランスの悪さ、リスク回避の行動の基本原則などを、金融リテラシーの重要さという観点で、ばちっとまとめ上げた本です。

しっかりと、金融商品別のポイントも述べられていますし、良本だと思います。
全体を通じて、より人間らしく生きるためにお金への理解を深めよう、という思いがしっかりと伝わって来る感じ。

著者の、金融を通じた社会責任遂行のメッセージは、金融リテラシーの教育が十分にされていない日本に育った私の心にも響きました。

「金融には、政治と同じように社会を変えうる力がある」ということです。
ただ、自分のみを守るためだけの運用や蓄財という視点だけではなく、自分の意思を積極的に表していくことが可能なものである。

その例として、積極的に社会責任投資(SRI)を選択することで、投資先が道徳的に間違った事をしていないか、社会が良い良い方向へ進むためにどのようなことに貢献しているのか、という視点も大切だと著者はいっています。

最後に、金融商品は長期的には必ず値上がりしていくという著者のことばを。

「世界中のすべての国々では、多くの人がよりよい生活をおくるため、あるいはより安定した社会を作るため、毎日、勤勉に働いています。
そして、その活動をささえるためには、誰かがリスクを取って資金的なサポート(=金融)をしなければなりません。そして、そのリスクを取ったことの見返りは、株・債券、投資信託などを通じ、その価値が上がる事によってリターンとして必ず報われるようにできているのです。
つまり、資金的にサポートを行なう人がいて、初めて、私達の社会は安定した発展が望めるのです。

文章表現400字からのレッスン (ちくま学芸文庫)文章表現400字からのレッスン (ちくま学芸文庫)
梅田 卓夫

筑摩書房 2001-02
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よい文章を書くために必要なエッセンスが詰まった1冊。
文章構成などについての堅苦しい指南ではなく、筆者が教壇で教えた学生たちの作品を教材にして良
い文章・悪い文章のポイントを伝えていくという、とても実戦的な内容。

筆者にとっての「良い文章」とは「自分にしかかけないことを、誰にもわかるように書く」ということ。
ブログ、携帯メールなどで個人が表現者の一人となった現在、しっかりと押さえておきたい内容。

良い文章は、断片であるメモから全体を形象化していくというプロセスを経て作られる。

偶然・混沌・創造・遊びなどの断片にすぎないメモの段階では、その断片の持つ寓意性を大切にしながら、確実な抽出を心がける。その断片から光るものを見つけ、類型化の誘惑に負けないように、全体構成を考えていくのだという。

確かに、誰もの目にとまる表面的な言葉をひろって、当たり障りなくまとめていくだけでは、読みやすいかもしれないが「誰にでもかけることをわかりやすく書いた」文章に落ち着いてしまう。

文章を叙述する過程で、いかにことばを発酵させるかがポイントなわけである。

本書で書かれているように 、原稿用紙に相当する400文字で、文章を構成する訓練を繰り返すことが、とてもよいらしい。

私のブログは、あいかわらず思いつきのままに、書きなぐっているだけ。
(ひとつのエントリーに5~10分程度)
本書に書かれているような、高尚な文章構築には程遠いけれども、多少なりとも良くなることを願いたいものです。

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)
海堂 尊

宝島社 2007-11-10
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医者として活躍中の著者による、本格的な医療ミステリー。
バチスタの手術中に起こる連続術死。果たして、それは殺人なのか事故なのか。
その結末の裏には、医療の現場の抱える、数多くの真実が見え隠れしている・・・。

かなり面白い作品。
医療についての無機質な用語と論理的なストーリー展開と、作者独特のやわらかい語り口が絶妙なバランス。
そして、とにかく、登場人物がめちゃめちゃ魅力的。人物表現がとても丁寧にされているせいか、脳裏にとても具体的な人物が浮かんだ状態で、物語が進んでいくのです。

映画化が決まっているようなので、個性派の白鳥はだれが演じるんだろうと完読後に調べてみたら、安部寛。うーん、ちょっと渋すぎる気もしますが・・・。
しかし、周囲のキャストもなかなか魅力的なチーム。
主演も、ドラマ「ガリレオ」と同じように男女スワップが行われるようなので、映画版はちょっと違った面白さが期待できそうで、必見です。

スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
吉本 佳生

ダイヤモンド社 2007-09-14
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話題の経済本。
経済の基本である、規模の経済、範囲の経済、取引コスト、サンクコスト、比較優位といった概念を、身近な例を用いて丁寧に解説。
なぜか複雑な設定の携帯電話の料金プラン、100円ショップが儲かる理由、値下がりを続ける薄型テレビでも採算がとれている電機メーカ、容量が倍なのに100円差で店も客もうれしいスタバのグランデ、これらの価格の裏側をわかりやすく説明してくれます。

感覚的にはわかっていることが多いけれども、改めてなるほど、と再認識させられることも多い。
とくに「比較優位」の考え方は、自分の業務スタイル改善にも使えそうとの感触あり。

世の中は、マクロにみれば、人々は合理的に動くという前提のもとに、金融・経済システムは作られているけれども、すべての人が、この本に書かれていることを理解して行動すれば、経済はより見通しのよいものになるのかもしれない。それがいいか悪いかは別として。

Joel on Software

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Joel on SoftwareJoel on Software
青木 靖

オーム社 2005-12
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最近は、ソフトウェアのアーキテクチャを考える仕事がメイン。
ビジネスの視点、既存のアーキテクチャ、組織、ハードウェア仕様などなど様々な制約を乗り越えて、要求を満たすアーキテクチャを考えければいけないわけですが、これがなかなか難しい。

アーキテクチャの議論は楽しいので、ついつい盛り上がって、手段と目的が前後しがちで危険な側面も。
アーキテクチャを設計する事は目的ではなくあくまでも手段、ときには暴走しないように自制するチカラも働かせる事が必要。

そんなとき、この本の1節は大変興味深い。
名著といわれているにもかかわらず、なかなか読めていなかったのですが、ようやく完読。
好みは分かれそうですが、企業経験豊富なジョエルによる、とってもpracticalな考え方・スタンスは、共感できる点も多く、惹かれます。

『アーキテクチャ宇宙飛行士たちに脅かされるな』
抽象化に向かってあまりに高くあがると、酸素を切らしてしまう。ときどき頭の良い思想家達は、どこでとまればいいのかわからなくなって、この手のばかげた「すべてを包含するハイレベルな宇宙像」を作り出す。それはそれで結構なことだけど、実際には何の意味もない。

なにごとも抽象化・理想化はほどほどに。

変身 東野 圭吾

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変身変身
東野 圭吾

講談社 1994-06
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やっぱ、東野圭吾、面白いですね。
この「変身」は、いくつか読んだ彼の作品の中でも、お気に入りの作品になりました。

他の東野作品に負けじと、ダークな内容ですし、比較的結末を想像しやすいストーリーかもしれません。
しかし、犯罪心理の描写がなんだかリアルで、惹きこまれてしまいます。

そのリアルさは、濃縮な取材と、膨大な資料を分析した結果に裏付けられるものだということを思うと、作家という職業のすごさを再認識させられます。

電車の中で、さくっと読むにはお勧めの作品です。

この世で一番の奇跡 (PHP文庫)この世で一番の奇跡 (PHP文庫)
Og Mandino 菅 靖彦

PHP研究所 2003-03
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全世界で700万部以上売れたといわれる、自己啓発系の本。

心が廃品となってしまった人間をよみがえらせる、不思議な力をもつ老人との出会いを通じて、自分自身の持つ力と、その素晴らしさを気づかされる主人公の物語。

よくできた小説としてもサラっと読めるし、じっくり読むとその構成の洗練さもなかなかのものです。うまくポイントを抑えているので、人生の価値を高めるためのツールとしての出来の良さが評価されているのだと思います。

ただ、個人的にはそんなにハマりすぎることもなかったのは、自分が啓発を必要としていないからか、信仰的要素が欠けているからか、それとも単に読み込みが足りないのか・・・。

なんだが、疲れているときに、もう一度読んでみようと思わせる一冊。

思考の整理学

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思考の整理学 (ちくま文庫)思考の整理学 (ちくま文庫)
外山 滋比古

筑摩書房 1986-04
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学校で学ぶ知識は、先生と教科書によって植えつけられるもので、いわばグライダーのようなもの。社会という広い空に飛び立つために必要なアイデア・思考というものはそこにはなく、グライダー人間は、自力で飛び立つことはできない。
自ら飛び立てる飛行機人間になるためには、どうすればよいか、その創造の方法について、多角的に述べた1冊。

1986年に書かれた本ですが、コンピュータの登場について、「コンピュータという極めて優秀なグライダーが現れた今、自らの力で飛ぶことのできない人間グライダーは職を失う」と断言し、思考の重要性を説く、着眼点は素晴らしいものがある。

本を読んだり生活の中でであう、思考のネタ、キーワードを、まずはすぐにメモしておく。次にこれらの1次情報を分類し、整理し、要約し、利用可能な2次情報へと変化させていく。
著者は、1980年代における思考の整理手法として、1次情報をメモしたノートを2次情報のノートへと書き写す作業を行いながら、思考を整理していくという方法を提案している。この過程で頭のなかで行われるメタ思考が重要である。

あふれる情報を自分のものにするには整理することが重要で、そのためには「吸収するために必要ないものを捨てる」ことが大切というわけである。

それから20年以上たって、インターネットの登場やWeb2.0への変化のなかで、情報の流れは大きく変わってきている。ディレクトリ、ブックマーク、タグクラウド、ラベル、ウィキなど、ここ数年で広く認められている情報技術要素は、この本で20年前に示唆されている思考の整理方法を、今の時代の形式で具現化しているものといえるかもしれない。

80年代と大きく異なるのは、その思考の結果を、第3者と容易に共有できるようになったこと。
だけれども、熟成された第2次、第3次情報を集めることはできても、第1次情報を自ら整理していく技術、必要なツールを使いこなす技術というのは、今の時代も、変わらず求められているものではないだろうか。

運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術
中村 義作 柴田 裕之

早川書房 2007-07-20
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人はときどき「運がよかった・悪かった」などという。
たまたま傘を持っていない日に雨に降られて運が悪かったとか、ディズニーランドで偶然にも運よく友人にばったりあったとか。
はたして、それらは本当に「運」などという非科学的な要素による現象なのだろうか?

世の中に溢れかえっている確率に基づいた事象を、とてもわかりやすく説明している一冊。
理系の私としては、驚きというより、比較的論理的な説明手法に感心することのほうが多かった気もする。毎日の占いで、「これ当たっている」と一喜一憂している人にはぜひ読んでほしいかも。

雨に濡れて運が悪かったと思うのは、傘を持っていないことによって濡れてしまったという、ネガティブな事象だけを覚えているからではないだろうか?
傘を持っている日と持っていない日のデータを取って、雨に振られる統計を取ってみると、その地域の一般的な降水確率に比例したデータになるのではないだろうか。

偶然出会ったのかもしれないが、計算してみるとどうだろう。
日本の人口1億人、自分の知り合いが500人いたとする。そうであれば、そうすればディズニーランドで見かけた2000人の中に、知り合いが含まれる確率は、1%もある。ディズニーランドに限らず、100回くらい大きなショッピングモールやテーマパークにいけば、一生のうちに何度かは、知り合いに偶然あうのは必然とはいえないだろうか?

最近ぶっそうなニュースが多い。
近所で殺人事件が起きたというニュースを聞いて、不審者をみてビクビクするかも知れない。でも、統計データを見ると、殺人事件というのは、知らない人が犯人であることよりも、知り合いや身内が犯人であることが圧倒的に多いらしい。マスコミの情報に流されずに冷静に考えると、夜道の不審者におびえるよりも、すぐ近くの知人を怪しむほうが、身は安全なのかもしれない。

ルーレットやブラックジャック、カジノが必ずもうかるのはなぜなのだろうか?ルーレットの「0」と「00」がもたらす確率操作と「大数の法則」を知っている人は、それでもカジノに足を運ぶのだろうか?

などなど、「ポアソン・クランピング」をはじめとする、さまざまな確率論をベースにした、私たちの勘違いを指摘してくれる面白い一冊。

多少の思い込みや、運に頼る機会があるから、生活は面白いのかもしれない。さらに、人は合理的に判断し行動するという前提の株式市場などのマクロ経済ベースの世界では、すべての人がこの確率のマジックに引っ掛からなくなると、分散が減ってより予測しやすい世界になってしまうのかもしれない。

予知夢

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予知夢 (文春文庫)予知夢 (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2003-08
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久しぶりの東野 圭吾。
相変わらずの、球数の多さというか、多彩さには驚かされます。

予知夢、幽霊などオカルト現象が捜査を惑わせる難事件を解き明かす短編集。

主人公の刑事の友人、湯川という科学者の推理が実に巧妙で面白い。
学生時代に多読していた、シャーロックホームズのワトソンを思わせるようで、なんだか懐かしいとともに、その計算しつくされたトリックと種明かしが気持ち良い。

さくさくと一気に読めてしまう作品。

もうすぐ始まるドラマ「ガリレオ」も楽しみですね。

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
野島 久雄

新曜社 1990-02
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評判どおりの名著。
エンジニア系・デザイン系の多くの書評サイトでもお勧めされている一冊。

どうやって保留にしてよいかわからない電話、どうやって開ければよいのかわからないドア、どこを回せばどのコンロの火がつくのかわからないガステーブル、どんな操作をすれば次の画面が表示されるのかわからないパソコンの表示画面、などなど具体的な失敗デザインを例に挙げながら、認知科学をベースにデザインのあるべき姿を紹介する。

機能が増えていく中で、扱いが複雑になり、使用者がエラーをするようになってしまった多くの道具。それらの多くはデザインの失敗によるものである。
エラーに対して、「マニュアルに書いてある通りにやればうまくいくよ」なんてのは、デザイナの独りよがりに過ぎないことを理解しなければならない。むしろ、デザイナは、いかなる状況であっても、できるだけエラーが起きないように配慮すべきであり、エラーに備えたデザインにすべきであると本書は説く。
そして、使用者はもしエラーを犯したら、自分を責めるのではなく、デザイナに使いにくいと訴えるべきだと。

人が行動を認知するまでの思考過程、エラーの種類、すばらしく考慮されたデザインなどが系統立てて紹介されていて、読みごたえは十分。
特に、行動を決定するための「知識は頭の中だけでなく、他社やものといった外界にも存在する」という一説はとても印象的。

後半は、やや時代錯誤な事例も多くなってしまっている感もあるが、時代を超えても変わらないメッセージは、とくに前半部分を中心に、しっかりと書き込まれている。

本書の最後に書かれている、著者ノーマンからのメッセージを引用しておこう。


もしあなたがデザイナーならば、使いやすさを目指す戦いに加わってほしい。もしあなたがユーザーならば、使いやすい製品を求める声に加わって、声を上げてほしい。(snip)よいデザインをもたらしてくれた人には、心の中で賞を贈ろう。よいデザインをしてくれなかった人には、きびしい批判をしよう。

デザインはユーザ中心に設計されなければならない。しかし残念なことに、デザイナは典型的なユーザではないことを認識しなくてはいけない。

ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫 (日経ビジネス人文庫)ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫 (日経ビジネス人文庫)
嶋津 祐一

日本経済新聞社 2003-12-02
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ビジネスは「戦争と平和」である。
パイを作り出すときには協調(cooperation)し、パイを奪い合うときには競争(competision)するものである。つまり、ビジネスを考えるときには、「競争すると同時に協調しなければらなない」。それぞれが絡み合って、よりダイナミックに形成された環境を、著者はコーペティションと呼んでいる。

この本では、ゲーム理論に基づいて、このコーペティションの考え方を説明し、協調で成功したビジネスケースや、またバランスを崩したために失敗したビジネスケースを多く紹介している。

すべてのプレイヤーを、自分を脅かす競争相手として見る偏った見方がある。しかし、多くのプレイヤーは、競争相手であると同時に補完的生産者である。

ゲーム理論の基本要素である プレイヤー、付加価値、ルール、戦術、スコープのそれぞれについて説明し、後半では多くのケーススタディを紹介する。

最大の利益を得るにはゲームの転換が必要だ。

という見解のもと、プレイヤーの変更で利益を得たアメリカンエクスプレスの例、付加価値を重視した任天堂の例、ルールの変更で成功したGMの例などを、ゲーム理論の視点で丁寧に紹介している。

取り上げられている事例は、80年代以前のものが多く、必ずし現在の状況に当てはまるものではないかもしれないが、得られるものは多い。

ゲーム理論は、組織内部の人間が共有できる重要なツールである。明確でわかりやすいゲーム理論の原理を用いれば、提案した戦略の根拠をわかりやすく説明することができる。

ゲーム理論に触れてみるには、本書でも取り上げられている例が面白い。大学教授のアダムと26人の学生との間のゲームである。アダムの持つ26枚の黒のカードと、26人の学生がそれぞれもつ赤のカード。黒と赤のペアをつくれば、大学から100ドルが提供されるというゲームである。

学生同士の交渉はなし、というルールのもとでは、学生の取り分は50ドルに収束するはずである。

では、アダムの持っているカードが3枚減って23枚の場合には、それぞれの取り分はどうなるであろうか・・・。ここにゲーム理論の面白さがある。

「薬」って何

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薬は体に何をするか (知りたい★サイエンス)薬は体に何をするか (知りたい★サイエンス)
矢沢サイエンスオフィス

技術評論社 2006-08-05
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本屋での五目買いの一冊。
風邪ひいたりすると、何げなく服用してる薬だけど、いったい体に何をしてるの?なって素朴な疑問に答えてくれないかと期待して購入。

インフルエンザ薬やアレルギー薬、頭痛薬、糖尿病治療薬など、さまざまなタイプの薬が、発見された経緯や、それならがなぜ人体に効くのかを紹介。

専門用語が多くて難しいけれど、薬のすごさをしると同時に、人体のすごさも知ることができる。
「かぜ薬は風邪を治す薬ではない」、など身近なネタも多いので、話題を増やすにもありの一冊かもしれません。

ロストジェネレーション―さまよう2000万人ロストジェネレーション―さまよう2000万人
朝日新聞「ロストジェネレーション」取材班

朝日新聞社 2007-07-06
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バブル崩壊後の「失われた10年」に大人になった、今年25歳から35歳の世代をロストジェネレーションと著者は定義している。

バブル崩壊で負債を抱えた多くの企業は、場当たり的な対策として雇用を絞っていった。そのあおりをうけて、この世代は、フリーターや非労働者がとても多い世代である。

会社員であることが必ずしも幸せの人生とは限らないけれど、住宅事情・物価・教育費用・年金などを考えると、ある程度自立した生活を送るには、一定の金銭的豊かさが必要な社会が、目の前には現実としてある。
私たちは、その社会で生き抜くための、いくつかの機会をロストしてしまった世代というわけである。

「こんな時代に誰がした?」なんてことにも客観的に触れられているが、著者のリサーチによると、当事者にはそういう意識がない世代でもあるという。

戻りつつある高い就職率の中で順調に就職をしていく後輩を横目に見ながらも、当事者としては人を責めて、羨ましがってももしょうがないし、「なんとかしなくては。」という意識も弱いそうだ。

一方で、この世代にはホリエモンらをはじめとするトンガったリーダーたちも多く存在する。
もしかしたら彼らの実績は、将来的な不安などを覚えざるを得ない世代だったからこそ、自分のもつ付加価値を生かす別の道を選択した結果なのかもしれない。

「僕らは損をしてきた世代。でも穴のあいた世代に生きるからこそ、乗り越えた時は強いはず」とは、なんとも勇気づけられるコメントだと思う。

著者の主観に対しては賛否両論あるとは思うが、さまざまなデータをもとに、この世代の生きざまをリアルに紹介している視点は刺激的。

25歳から35歳というと、子供ができる世代でもある。
ロストしてしまった自分たちの境遇を変えることにまで意識が回らないまでも、次の世代のために何ができるのか、彼らを受け入れる社会・日本をどうしなくてはいけないかなどを、ちょっと考えさせられた気がする、そんな一冊。

ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
井口 耕二

日経BP社 2007-06-07
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よくかけた1冊。

報告書という位置づけかもしれないが、企業活動のベースが企業中心からマスコラボレーションへと確実にパラダイムシフトが起こりつつあることを実例をもとに記した証明でもあり、考えさせられることは多い。
AmazonやYoutubeなどの成功体験も興味深い。

オープン性、ピアリング、共有、グローバルな行動、この4つがウィキノミクスの基本原理と言われている。そして、ここから利益を享受できるのはIT企業に限った話ではなく、製造業にもあてはまること。

いま、世界で起こりつつある変化を理解して整理したい人にはおすすめ。

ただ、紙に記された情報はすでに過去のある一点の古い情報であることに注意しなければならない。本書の最終章が白紙であるように、いままさに起きている最新の変化は、私たち自身がピアプロダクションして記していかなければならないのかもしれない。

ネットはテレビをどう呑みこむのか? (アスキー新書 016) (アスキー新書)ネットはテレビをどう呑みこむのか? (アスキー新書 016) (アスキー新書)
歌田 明弘

アスキー 2007-06-09
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とても興味のあるタイトルだったので、書店で即購入。

テレビといってもその内容の中心は、受信機側ではなく、コンテンツ制作とその通信媒体といった送り側のビジネスモデルについての考察が中心。

録画機普及のタイムシフトによるCM広告収入も出るの破たんや、これまでネットとテレビが一見融合したように見えた既存の放送局の失敗例、これからの市場でYouTube,Google陣営がどのようなビジネスモデルを築いていくのか、ブログや動画配信で損しているのは誰か?といった話題を著者の主観で述べている。

その多くは、すでにこれまで議論されてきたことなので、これらの話題に注目してきた人にとっては、あまり目新しいものはないかなぁという印象。
全体といて話題も離散的な感じがするのも新書ならではといったところでしょうか。

ただし、上述したCMモデルの破たんや、USのテレビ事情、日本のデジタル放送の事情などを数値デーダとともに分析してあるあたりは、わかりやすくて使えそう。

半導体って。

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やさしくわかる半導体やさしくわかる半導体
菊地 正典

日本実業出版社 2000-06
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工学系の大学出身なので、半導体が何かってことは、授業等で、一応学んできたつもり。
でも、結構わすれてしまってることも多い。

導体と絶縁体の中間の性質をもっていて、周囲の電場や温度、物質によって電気の流れやすさが異なるという貴重な材質。

業務で、CE機器とソフトウェアを扱うにおいては、半導体の物理性質はそんなに気にする機会すらなく、どんどん縁遠いものになってる気が。

そこで、いろんなことを思い出そうと、復習がてら購入。
P型やらN型やら懐かしい言葉満載です。

内容はというと、淡々と教科書的に描かれているので、あまり印象には残らなかったのは残念だが、基礎を思い出すには使えるレベル。
「やさしくわかる」という冠をつけるなら、もっと分かり易くてもよいかもしれない。

幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))
東野 圭吾

集英社 2007-03
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白夜行の続編ともいわれる、悲しい男女の物語。
実に悲しい話なのだが、ついつい先を読みたくなってしまうのは、さすが東野 圭吾といったところ。

男女それぞれのはっきりとした生き方が交差しているようで、平行線のようで。
あまり書くとネタバレになってしまいますが、男としては辛い物語かもしれない。

2時間の映画ではおさまらないかもしれませんが、映像化も期待したい作品。
美冬の強烈な個性は誰が演じきれるだろうか、と考えるのも面白いかも。

海辺のカフカ

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海辺のカフカ (上) (新潮文庫)海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
村上 春樹

新潮社 2005-02-28
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久々に読んだ村上春樹作品。
学生時代に「ノルウェイの森」でハマって以来、彼の作品は結構読んでます。

この「海辺のカフカ」も、かなり惹きつけられる作品ですが、村上春樹作品のなかでも、わりと難解な部類に入る作品でしょうか。

15歳の家出少年の物語。
世界一タフな少年にならなければいけないという啓示を受けた少年が抱いたのは、冒険心、理想追求、そしてまだ見ぬ女性への憧れ。

彼は一体どんな体験をし、そして何を学ぶのか。

「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」のように、二つの世界を並行して描写するテクニックや、描きこまれた世界観は、春樹ワールド満載です。

最初にも書いたように、わりと難解な物語。
「メタファー」で満ち溢れた一冊だけに、もう一度読むと違う見解がありそうだが・・・
謎解きのつもりで、じっくりと読みこむのもありかもしれない。

とはいえ、軽く読み流しても十分に楽しめるあたりが、さすがといったところ。

素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)
金出 武雄

PHP研究所 2004-11
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カーネギーメロン大学のロボティクス研究の第一人者 金出先生の書。

技術者とはかくあるべき