![]() | ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) 楠木 建 東洋経済新報社 2010-04-23 売り上げランキング : 303 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
目標をきちんと立てていると、あたかも戦略を立てているような気になってくるということがよくあります。つまり、「目標を設定する」という仕事が「戦略を立てる」という仕事とすり替わってしまいがちなのです。
戦略という言葉は聞こえがいいだけに、いろんなところで耳にします。全社戦略、ソフトウェア戦略、営業戦略、プラットフォーム戦略・・・。
この本を読んでしまうと、それらの多くは、ただ目標や、組織的な手立て、分析結果を並べただけにすぎず、本質的な戦略に至っていないのではないかと思わされてしまいます。
著者によると、戦略とは「違いを作ってつなげる」こと。
こうすべき、という打ち手を並べたアクションリストではなく、コンサル会社やビジネス書が提供してくれるような既成のテンプレートでもなく、ベストプラクティスでも法則でもない。それが戦略。
一枚のチャートや静止画で示されるものではなく、それらがつながって、ひとつの動画としてのストーリーを構成していること。そして、そのストーリーが何よりも面白いこと、それが戦略ではないかと。
本書では、競争戦略の基本論理として、SP(ポジショニング)とOC(組織能力)などの基本的な要素を踏まえながら、多くの殿堂入りの戦略論(スタバ、ガリバー、サウスウエストなど)の実例をもとにストーリーとしての戦略論の理解を深めることができます。
さまざまなメディアでも良書として紹介されていますが、いい本に出会ったという気がします。業務で本書に触れる機会があったので、積んであった未読本から繰り上げて読んだのですが大正解。
商品設計にかかわる身としては、耳に痛い話ばかりなのですが、すっと腹に落ちる感じがして、納得感も大きい。
ボリュームも多いし濃いので、ちょっとした引用程度では、本質を表現できないと思うのですが、地方都市のコギャルのたとえが印象的だったので、紹介しておきます。
ちょっと前に、コギャルという文化が流行った時期がありました。
雑誌やメディアを通じて、「渋谷のコギャル」という完成された作品をみた地方都市のコギャルたち。不思議なことに、地方都市のコギャルの方が、渋谷のコギャルに比べて、明らかに「やりすぎ」で、メイクも制服もバランスがぐちゃぐちゃ。黒すぎる肌に、白すぎるアイシャドー、異常なまでに長いまつげ(マスカラ)、短すぎるスカートに、ルーズすぎるソックス。
一つ一つの要素は、渋谷のそれと大差はないのですが、全体を作品としてみるとそれはもうひどいものになってしまったようです・・・。
業界のトップ企業を追いかける企業が陥りがちな罠がまさにそれ。徹底的に表面的な要素をまねをして、まね要素を詰め込んだ結果、全体としてまったく機能しない幕の内弁当的なグレーな製品になってしまう。そんなことがよくあるのではないでしょうか。
簡単にまねできるものは戦略ではないですし、同様に簡単にまねされるものも戦略ではありません。まねをしようとしてもできないもの、ここでは、何年もかけて渋谷のセンター街の中で醸成されてきた、コーディネートや雰囲気、小物使い、そういった基礎的な部分が、他社のまねを難しくさせている秘訣のひとつです。この場合、むしろ、下手にまねすると余計に価値が下がってしまう。簡単にまねできそうだけど、実は難しい、商品設計においてもこんな打ち手を見つけることこそが求められている戦略なのだと思います。


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