« さまよう刃 東野 圭吾 | メイン | ミッドタウン ガーデンシアターカフェ »

2008年07月25日

テレビ進化論

テレビ進化論  (講談社現代新書 1938) (講談社現代新書 1938)テレビ進化論 (講談社現代新書 1938) (講談社現代新書 1938)
境 真良

講談社 2008-04-18
売り上げランキング : 1922
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「放送と通信の融合」について書かれた本やエッセイはいろいろあると思うが、わりとありきたりな意見だったり、予想の域を出ない根拠の薄いコメントが行われているものが多いように思う。
それに比べると、通産省であちらの世界からメディアやコンテンツについてその覇権のいくえをハンドルしていた筆者の意見は、わりと説得力がある。

前半は、まず日本における「コンテンツ業界」についての深い考察から始まる。目に見えない情報体験のデータであるコンテンツを扱うコンテンツメディア業界は、本来とてもシンプルなビジネスモデルであるはずが、関係者以外立ち入り禁止ともいえる特殊なギョーカイに守られていることで、14兆円ものお金の動きが見えずづらくなっている。そこに家電産業、広告業界、そして国の方針、というさまざまなステークホルダがそれぞれの思惑をはせるがゆえに、その変化の動きは遅く、さらに利用者の視点を無視しているとも思える動きがいろいろと起きてしまっている。

最近、NGNやアクトビラといったサービスも始まり、インターネットを超えようとするテレビが表れてきた。DVDやHDDの録画機は普及し、タイムシフトが当たり前となって番組編成の概念が崩れ始めてきた。それによって、広告業界は、年間540億近くの広告効果を失ってきているらしい。

そのような状況下でテレビはどのように進化していくのだろうか。筆者は「テレビの次」「次のテレビ」という表現で、彼なりの予想を示している。

リビングのテレビにふんぞり返って家族で見るというテレビが、YouTubeやニコニコ動画といったコンピュータ起因のサービスと融合することは難しいだろうけれど、映像コンテンツの「視聴の仕方の変化」が生む新しいてれびシステムを「次のテレビ」と呼んでいる。その実現に対して、編成、広告、インフラ、有料放送などの視点で、考察をした上で、今実際に行われているサービスを包含するようなものでなければ視聴者に受け入れられることはなく、テレビ局の仕事の仕方・編成の概念は変わらないというのが彼の予想である。

「テレビの次」については「番組の作り方の変化」と「テレビを飛び越えるコンテンツ」の方向性にわかれると説く。コンテンツそのものを提供するのがテレビ局だけではなく、ユーザ創発型にシフトしていくという、クリエーター覇権の時代が終わるというのが前者。テレビだけでなく、映画や書籍・イベントなどのメディアミックスによって情報の連鎖による相乗効果を期待するものが後者である。テレビという枠を超えるかもしれないが、もともとテレビを通じて伝えたかった娯楽を純粋化して伝える仕組みが再定義される、これが「テレビの次」と呼ばれるものである。

この本の中で筆者が述べていることのひとつひとつは、そんなに突飛なことではない。だが、その言葉には重みがあるのである。
そこには、これらの正常進化とも思える変化が起きそうでなかなか起きないという、業界のフットワークの悪さに対するイラダチのようなものが込められているようにも読めなくはない。
著作権をはじめとするさまざまな権利がらみになって身動きの取れず、利権の守りあいとなってしまった日本のしくみをよく知る筆者ならではの視点で、「放送と通信の融合」を再考してみるのも面白いかもしれない。

日本だけでなくヨーロッパやアジアといった海外の諸国のテレビ業界がどのような方向に向かっているのかというのも気になるところ。本書では触れられていないが、ぜひ良い本や文献があれば読んでみたい。


投稿者 orval : 2008年07月25日 23:01

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.orval-net.com/mt/mt-tb.cgi/798

このリストは、次のエントリーを参照しています: テレビ進化論:

» Discount tramadol. from Buy tramadol online from discount pharmacy store.
Buy tramadol online from discount pharmacy store. [続きを読む]

トラックバック時刻: 2009年04月25日 22:18

コメント

コメントしてください




保存しますか?